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わたしたちが孤児だったころ
【ハヤカワepi文庫】
カズオ・イシグロ (著)
定価987円(税込)
ISBN-4151200347
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
久々湊 恵美
評価:★★
今回初めてカズオ・イシグロ氏の作品を読んだのですが、不思議な文章だったりストーリーのもっていき方だったので、読み進めるのに少し時間がかかりました。
上海に暮らしていた主人公クリストファーの両親が次々と失踪してしまう。ロンドンに帰されたクリストファーは探偵になり、両親を探すため上海へと渡るが…。
少年時代の主人公と友人アキラの上海生活を描いた部分が、とっても好きだったなあ。街の生活感が、とても生き生きとしていて空気が感じられるようでした。
ちょっと幻想的で生きていく事への執念というか力強さもあって。
後半、アキラがほとんど登場しなかったのが残念。ちょっと後ろ暗い感じが好きだっただけに。
それにしても、途中から穏やかな主人公がいきなり紳士的でなくなってしまったのがどうしても不思議。
それまであった暖かなものがドカーンと破壊された感じで。
もちろん物語の中で複雑な事情が絡んでいるので、その部分からくる感情も大いにあるとは思うのですが…。
そこのところが最後まで納得できなくて、ちょっと評価を下げてしまいました。
松井 ゆかり
評価:★★★★
カズオ・イシグロ本人についてならいくらでもしゃべっていられるのだが(かっこいいとか、でもこの文庫の著者近影はにやけた西郷輝彦みたいでいただけないとか、もともとは日本人でありながら英国紳士の趣があるとか)、この小説について書くのは難しい。作者は予定調和なオチを書こうなどとはみじんも思っていない様子だ。
物語の終わり近くになってやや唐突な感じで謎解きらしき場面が現れるが、それによっていったい何が解決しただろう?父母の消息はわかったといっても、ではアキラは?彼はクリストファーの人生から失われてしまった。
古川日出男氏の解説がまた「アンチ解説」っぽく、われわれ読者は放り出されたような、まるで孤児のような心もとない気分になる。
西谷 昌子
評価:★★★★★
読後、本から目を上げると世界が違って見える――そんな本に、一生のうちどれだけ出会えるのだろうか。この本は私にとって、そのうちの一冊となった。
最後の一ページを読み終えたとき、胸に広がる言いようのない寂寥感。サスペンスだと思って読んでいたらふいに足元をすくわれ、読者はたった一人で取り残される。永遠に追いつけないものを、それと知りながらおいかけねばならない主人公とともに。解説で古川日出男が「あなたは孤児になるために、この本を読むんだよ」と書いているが、この言葉がすべてを物語っていると言っていいだろう。私たちは世界にたったひとり、よるべなく放り出された孤児なのだという気持ちが、読後胸を満たす。
ディティールを細かく描写してあるので物語の世界にすっと入ることができる。翻訳もよい。
島村 真理
評価:★★
今月の課題本でこれが一番?な難解作品でした。
かつて上海の租界で両親を失い(失踪する)、単身、イギリスへと帰国したクリストファー。長じて探偵家業をはじめ、難事件を解決するほどの名探偵となり、ついに戦争の臭いが濃くなる上海に舞い戻り、両親の探索をはじめるのです。
…とこう聞くととても面白そうな話ですが、いかんせん、クリストファーのぼやかし口調に惑わされるのです。「あのころの…」、「(みんなは知っているよね)あの事件の結果のせいで…」という、「皆さんご存知のとおり節」で、頭の悪い読者である私には、現実を話しているのか、妄想を話しているのかよくわからなくなってしまったのでした。いえ、そこのところが話のミソなのかもしれません。それ以前に、そもそも私が読み方を誤っているのかもしれない。(ラストを読んでそう確信しつつはありますが)
果たして両親はみつかるのでしょうか?この話はクリストファーの作り話なのでしょうか?興味をもたれたらぜひ御一読を。
浅谷 佳秀
評価:★★★★
タイトルにまず心惹かれた。
前半は回想を中心にして物語が語られてゆくが、正直ちょっとまだるっこしい。後半、行方不明の両親の消息をたどって主人公が上海に渡ってからは、やや展開が速くなる。一方で、あれこれすっ飛ばして話が先に進むかと思うと、古い記憶を辿って足踏みしたりで、現実と記憶が交錯し、夢幻的な様相を見せはじめる。仕事を放擲し、心惹かれる女性とマカオに向かおうとしていた主人公が、いつの間にか戦場を彷徨うことになるあたりはなんだか凄い。このあたり、状況にもお構いなしにずいぶん無茶な行動をする主人公の意識も行動も混沌としてきて先が読めない。主人公の両親の発見を大々的に祝う式典が計画されているくだりなど、ほとんど夢か現かといった感じ。
これは一種の「母をたずねて三千里」かもしれない。アニメでは、マルコ少年が約2年の旅の果てに母親と再会を果たしてハッピーエンドだったが、こちらは、ほぼ半世紀かかって、しかも何という結末だろう。切なさに胸を締め付けられる。
荒木 一人
評価:★★★
キーワードは「記憶」。ただ淡々と、主人公により語られる探偵物語。起伏は乏しい……なのに記憶には残る。時間軸の使い方が一定では無く、非常に興味深い。日本とイギリス、二つの文化を併せ持つ著者による、不思議な作品。
ケンブリッジ大学卒業、クリストファー・バンクス。彼には探偵を目指す明確な理由があった。世界中から悪を葬り去ると言う理由が。前半では、誕生日に二人の友人から貰ったチューリッヒで製造された拡大鏡を武器に、探偵を志す。後半は、社交界で名声を得て一人前になったクリストファーが活躍する。日中戦争まっただ中、魔都上海に舞い戻り、自分が孤児になってしまった謎を探る。
人は、他人から悪意を向けられても、存在しないかの様に無視されるより、少しはましなのかも知れない。最後は、消え入る様に…… 「わたしたちが孤児だったころ」この題名を繰り返し考えずには居られない。
水野 裕明
評価:★★★
本の帯に「探偵は両親失踪の謎を解くために魔都・上海へ戻った」とあるが、一般的な探偵小説とか魔都の探検小説を期待して読むと、ちょっと肩すかしをくってしまうだろう。現在形で書かれているのは最後の章だけで、ほとんどの章が過去を振り返り、子ども時代を思い出して書かれていて、時には過去にいるクリストファーがその時点からさらに過去を振り返るという、複雑な時系列で構成されている。全体に静かで冷静な記述は何となくプルーストの「失われた時を求めて」を思わせ、探偵小説という読みやすい形態なのだが、読み進んでいくと作者の意図が掴みきれず、引きずり回されているうちに両親失踪の謎は簡単に解明され、記憶を無くした母と再会を果たし、クリストファーはロンドンに戻る。それでもなんとなくすっきりとしない読後感だけが残る、難解な物語であった。