世界の報道写真家が撮った「東日本大震災」~『3/11 Tsunami Photo Project』

 講談社から、東日本大震災を取材したフォトグラファーの電子版写真集(アプリ)が世界に配信された。

 世界の人々に日本の惨状を伝え、その収益を被災者への救済にあてるという、世界でも初めての「発信と寄付」を兼ねたこのプロジェクトに写真を提供したのは、写真家集団マグナム所属の最年少メンバーで、国際的に権威のある「オスカー・バルナック新人賞」を受賞したドミニク・ナールや、今年度のピクチャーズ・オブ・ザ・イヤー(POYi賞)を受賞したアダム・ディーン、またNYタイムズで活躍する深田志穂など、東日本大震災を取材した8カ国14人のフォトグラファーたち。

 体調不良に悩まされながらも避難所に泊まり込み、被災者と一緒に寝食をともにしながら現地の生活を切り撮り、痛々しい震災の傷跡を克明に記録する彼らの写真からは、東北地方で起きた出来事を伝える大切な責任を引き受けた覚悟が伝わってくる。

 アプリ『3/11 Tsunami Photo Project』には、それぞれの写真家本人がセレクトした写真とともに、被災者へのメッセージ(肉声)も添えられている。例えば、幼少期を仙台で過ごした写真家・深田志穂のメッセージは次の通り。

 「遠くからわざわざどうもありがとうございます。チョコレートでも食べませんか?」避難所で取材をしていると、被災者の方からそんなふうにやさしく声をかけて頂いたことが何度もあります。かけがえのない人、家、職場、すべて津波にのみこまれてしまったというお話ばかりです。それなのに、他人を気遣う温かさ、「頑張ります」といえる強さに、胸が熱くなりました。仙台は私が幼少を過ごしたふるさとでもあります。1978年に起きた宮城県沖地震のとき、赤ん坊だった私と乳幼児だった姉を一晩中暗闇の中で抱きしめて震えていた、と後から母に聞きました。父は家におらず、とても怖かったそうです。避難所で若い母親と赤ちゃんを見ると、あのときの私と母の姿が重なって見えます。被災者の方がたには、この暗闇の先には必ず光があり、明日があるということを信じて頑張って頂きたいです。心から応援しています。                   
                                                        深田志穂

 版元の講談社は、販売価格115円の全収益を日本赤十字社に寄付する。

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