子どもの甲状腺ガンは原発事故後5年目に急増する?

放射能汚染食品、これが専門家8人の食べ方、選び方
『放射能汚染食品、これが専門家8人の食べ方、選び方』
野口 邦和,伊藤 伸彦,石丸 隆,白石 久二雄,三好 弘一,菅谷 昭,山口 英昌,河岸 宏和
東洋経済新報社
1,512円(税込)
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 今年も流行語大賞のノミネートが行われ、60もの言葉が候補として挙げられました。ノミネートはされませんでしたが、枝野官房長官(当時)が福島第一原発事故直後に言った言葉を思い浮かべた人もいるのではないでしょうか。そう、「ただちに健康に影響がない」。今年最も印象深かった言葉の一つと感じている人も多いでしょう。

 『放射能汚染食品、これが専門家8人の食べ方、選び方』は、放射化学、放射線生物学の教授から、食安全科学、食品衛生の専門家、チェルノブイリ事故で支援活動を行なった医師まで、少しずつ立場の違う人たちが書いた共著。そのため、著者によって一部意見が異なる箇所があり、「『いろいろな見方がある』ということで、無理に統一を図らず、そのままにしています」というのが、本書の特徴となっています。

 著者の一人、菅谷昭氏は先述したチェルノブイリで活躍した甲状腺の専門医。現在は長野県松本市市長として、自治体のトップに立つ人物です。

 チェルノブイリでは、事故後5年目に子どもの甲状腺ガンが急増したことを指摘。政府が繰り返し言った「ただちに健康被害はない」は当然のことで、外部被曝より内部被曝のほうが重大な問題だと主張します。さらに「『低線量だから大丈夫』ということはない」と菅谷氏。「チェルノブイリの子ども達と同じ思いは絶対させてはいけない」という強い思いがひしひしと伝わってきます。

 巻末には放射能の基本用語を解説したページもあり。むずかしい言葉をクリアにすることで、わかりにくい放射能問題を見続けていくことが多少は容易になるのではないでしょうか。こういった著書にはめずらしい編集部からの前書きには「これ一冊で大丈夫」との言葉も載っています。

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