雑誌の魅力は「時代との調和」。冬の時代を迎えた雑誌の本来の姿

再起動せよと雑誌はいう
『再起動せよと雑誌はいう』
仲俣 暁生
京阪神Lマガジン
1,404円(税込)
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 出版科学研究所の調べによると、昨年の雑誌市場が、27年ぶりに1兆円を割り込むようです。年間の推定販売金額は、前年比6~7%減となり、減少幅は過去最大。雑誌『小学三・四年生』(小学館)や『旅』(新潮社)など、数多くの雑誌が休刊してタイトル数が減ったことに加え、スマートフォン普及の影響により、若年層の雑誌離れが加速したことが原因だと考えられます。

 雑誌は、まさしく「冬の時代」を迎えているといえます。しかし、書店やコンビニ、駅の売店などでは、いまでも多くの書籍が並んでいます。「冬の時代」と言うほど、何かが変わったという印象はあまりありません。では、なぜいま雑誌は「冬の時代」と言われているのでしょうか。

 「ここ数年に、いくつもの歴史ある雑誌が休刊したことが大きな理由」

 こう分析するのは、武蔵野美術大学非常勤講師であり、書籍『再起動せよと雑誌はいう』の著者・仲俣暁生氏。

 また、雑誌が抱える問題について仲俣氏は、古い雑誌が消えることではなくて、新しい雑誌が生まれてくるかにあると言います。若い世代が新しい読者として、そしてつくり手として育つかどうかが問題なのです。

 「ネットやケータイで育った世代は、紙の雑誌を読まないという。大学などで教えている学生に話を聞いてみると、それは事実の半分しかいい当てていないことがわかる。たしかに、昔の若者のように、誰もが同じ雑誌を読んでいるというようなことは、もはやない。でも、よく聞いてみると、それぞれが自分にとって大事な雑誌を持っており、彼や彼女らと雑誌との関係性は、じつに自然でしっくりくるものなのだ。流行っているから読まなくちゃ、とか、これを読まないとかっこわるい、といった強迫観念から自由な、雑誌との関係が生まれているように思える」(仲俣氏)

 雑誌とは本来、人間と同様なのかもしれません。時代とともに変化する必要があるのです。

 雑誌を同窓会に例えるとわかりやすいかもしれません。何十年ぶりに同窓会で友人に会ったら、美少女がオバサンになっていたり、少年が疲れた中年男になっていたりするものです。歳をとると、あの頃と違って多様な生き方が存在します。いつまでも同じままでいる方がおかしいのです。

 「その時代、その時代でどう変わっていくか、ということ自体のなかに、雑誌の面白さや魅力がある」(仲俣氏)

 ネットやケータイ、電子書籍などの電子メディアと共存を図る雑誌もあれば、それを敬遠する雑誌もあります。豪華な付録付きの雑誌もあれば、広告を全く掲載しない雑誌もあります。2012年、多様化が進む雑誌業界がどのように進むのか、また、新たな雑誌は登場するのか。人間同様に、急成長する姿を見たいものです。

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