日本経済の瀬戸際は2020年 生き残るために必要なイノベーションとは?

2022―これから10年、活躍できる人の条件 (PHPビジネス新書)
『2022―これから10年、活躍できる人の条件 (PHPビジネス新書)』
神田 昌典
PHP研究所
907円(税込)
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 少子高齢化が日本経済に深刻な悪影響を及ぼしていると言われて久しい。しかし、経営コンサルタントの神田昌典氏によれば、この状況はまだ「序の口」で、2020年以降にいよいよ「本格的な下落が始まる」そうです。

 その鍵を握るのは「団塊ジュニア世代」。現在、日本でもっとも人数が多い世代は1971年~1979年生まれの人々です。今後、彼らは40代になり、養育費・住宅ローン・医療費など、大量に「消費する世代」となっていきます。そのため、確かに現在の日本は不況に見舞われていますが、こうした団塊ジュニア世代が現役の内(あと10年ほど)はまだまだ回復の可能性が残されています。

 しかし、団塊ジュニア世代が退き始める2020年以降はどうでしょうか。若者は減り続け、労働人口が足りなくなっていきます。しかも、若手が育たない国では、新たなイノベーションも生まれにくい。こうした状況を指し、アメリカのエコノミスト、ハリー・S・デント氏は2020年以降の日本経済について「人も国もやがては死んでしまう」と余命宣告をしているほど。理屈の上でも、データから見る限り「日本は落ちていく一方」なのです。

 ですが、神田氏は著書『2022――これから10年、活躍できる人の条件』(PHP研究所)の中で、「人口減社会だからこそ、起こるイノベーションがある」と語り、2020年以降の日本経済が生き残る可能性を示唆しています。

 これまで、イノベーションが生まれるかどうかは、新技術に飛びつく十分な若手の市場があるかどうかにかかっていたとされていました。しかし、日本以外の先進国が一斉に高齢化社会に入ると、状況が変わってきます。

 「確かに、人口が増えていく社会においては、新技術は車やコンピューター通信機器のように、30代、40代が欲しがる商品を中心に導入されてきた。しかし、人口減少社会になると、新技術を支えるのは、若手市場じゃなくて、高齢者市場になるはずだ」(神田氏)

 自身が癌になった経験から、「人間は死に直面すると、少しでも先延ばしにするために、お金をどんどん注ぎ込む」と神田氏。つまり、お金が集まる市場が「高齢者」にシフトしていきます。

 「とくに健康医療産業にとっては、とにかく日本は急成長市場であり、今後、国際的に大きな影響力を持つ産業を創れる素地は極めて大きい。おそらく黙っていても、技術、サービス分野では、世界レベルの技術、サービスを生み出せるだろう」(神田氏)

 そのとき、日本経済の救世主となるのが、経済バブルの頂点にある中国。中国では2025年に高齢者が約3億人になると言われており、その中の富裕層が、ブランド物を買うように、日本の医療産業に駆け込んでくると神田氏は予測しているのです。

 「結果、日本はアジアにおいて常に先頭を走る、クリエイティブかつ、慈悲にあふれた国になる」(神田氏)

 日本経済の先行きに関しては、悲観的なことばかりが囁かれています。しかし、本書によれば、それらは想像力の乏しいシナリオに過ぎず、視点を変えることで、生き残りの道が見えてくるそうです。

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