70歳の誕生日から30日以内に死ななければならない法案が可決? 「家族」の本音を描く『七十歳死亡法案、可決 』

七十歳死亡法案、可決
『七十歳死亡法案、可決』
垣谷 美雨
幻冬舎
1,620円(税込)
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 「七十歳死亡法案が可決されました」と、『週刊新報』2月25日号にショッキングなニュースが掲載されました。

 同誌によると、日本国籍を有する者は誰しも七十歳の誕生日から30日以内に死ななければなりません。例外は皇族だけ。政府は安楽死の方法を数種類用意する方針で、対象者がその中から自由に選べるように配慮するといいます。政府の試算によると、この法律が施行されれば、高齢化による国家財政の行き詰まりがたちまち解消されるとしています。

 日本の少子高齢化は予想を上回るペースで進み、それに伴い、年金制度は崩壊し、医療費はパンク寸前。さらに介護保険制度に至っては、認定条件をどんどん厳しくしてきたにも関わらず、財源が追いついていないのです。

 当然予想されたことですが、同法は世界中から非難を浴びており、人権侵害の最たるものだとして、宗教団体はもちろんのこと、各国の議会においても、法律の廃止を求める声明が相次いで発表されました。しかし、少子化に悩むイタリアや韓国などは静観のかまえ。少子高齢化のスピードが速い中国も、注視しているようです。


 ──もちろんこれは物語上の法律です。2020年、高齢者が国民の3割を超え、社会保障費は過去最高を更新。破綻寸前の日本政府は、とうとう「七十歳死亡法案」を強行採決したのです。

 2年後に法律の施行を控えたある日、ごくありふれた家庭の宝田家にも変化が。宝田家はみな勝手な人ばかり。家のことはすべて妻に任せきりの能天気な夫(58歳)をはじめ、超一流大学を卒業しながら就職に失敗し引きこもっている息子(29歳)、実家に寄り付かない娘(30歳)、寝たきりでわがまま放題の祖母(85歳)。法案可決により、義母の介護から解放される妻・東洋子(55歳)は、喜びを感じていました。

 わがままな宝田家を支えていた東洋子は、「家族なんてろくなもんじゃない」と思っていました。しかし、そんな時に決まったこの究極の法律が、本来あるべき家族の姿を浮かび上がらせるのです。

 書籍『七十歳死亡法案、可決 』は、「家族」の本音を、生々しく描いた新・家族小説です。

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