原発は「NO」、映画監督・岩井俊二氏が映画&書籍で原発を表現

番犬は庭を守る
『番犬は庭を守る』
岩井 俊二
幻冬舎
1,512円(税込)
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 宮城県仙台市出身の映画監督・岩井俊二氏がナビゲーターとなって、「東日本大震災」についてゲストと対談するドキュメンタリー「朝日ニュースター presents 岩井俊二監督ドキュメンタリー『friends after 3.11』」が3月5日(月)にBSスカパーで再放送されます。また、3月10日には、これに新たな映像を加えて、劇場版として再編集した映画作品が公開をひかえています。

 3月11日の東日本大震災から1年。あの日から、私たちを取り巻く環境は大きく変わってしまいました。いま、どれだけ本来の姿まで復興をとげているのでしょうか。そして、なかなか見た目ではわからない、心の復興はどこまでおいついているのでしょうか。同番組では、岩井監督が、震災後に再会した友人やツイッターなどを通じて知り合った人々と語りあい、そこから浮かび上がる日本の今と未来、そして問題と課題を描き出しています。

 そんな岩井監督と、原発には密接な関係が。岩井監督は、原子力発電所が爆発した後の世界を舞台にしたプロジェクトを、なんと10年前から立ち上げていたのです。そんな10年分の思いをこめた新作の書き下ろし小説が『番犬は庭を守る』です。

 同作の舞台は、原発爆発後の世界。放射能汚染により、精子の減少・劣悪化が深刻な問題となっていました。そんななかで優良精子を保有するものは、精子バンクが高額で買い取ってくれるので、一生遊んで暮らせるほどの大金持ちに。逆に、第二次性徴期を迎えても生殖器が大きくならず、性交のできない子供は「小便小僧」と呼ばれ、思い通りの人生を過ごせずにいました。高校卒業後に警備保障会社に就職をした小便小僧のウマソーは、市長の娘に恋をした罰として、使用済みの核燃料や放射性廃棄物で溢れる、廃炉になった原発を警備することになります。そんなウマソーの未来とは......。

 『番犬は庭を守る』は、原発に対してはっきり「NO」という岩井監督が、自らの美学を曲げずに取り組んだ渾身の一作です。

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