「原子力発電所はなくなっていい......」福島の高校生が綴った言葉

はやく、家にかえりたい。: 福島の子どもたちが思う いのち・かぞく・みらい
『はやく、家にかえりたい。: 福島の子どもたちが思う いのち・かぞく・みらい』
合同出版
1,404円(税込)
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 関西電力では7月1日夜に、定期検査のために停止していた、大飯原子力発電所3号機の原子炉を起動しました。その結果、今年5月から続いていた「稼働原発ゼロ」の状態は、約2か月で終わることとなってしまいました。

 当日、大飯原発のゲート付近では、約400人もの人が再稼働への抗議活動を行ったもよう。彼らと警官隊らがぶつかり合う場面もみられたそうです。現地だけではなく、東京都内でも同様の抗議活動が行われました。

 とうとう再稼働してしまった原発ですが、国民の思いは複雑。しかし、福島県で原発被害にあった子どもたちには、特別な思いがあります。書籍『はやく、家にかえりたい。』のなかで、福島の子どもたちは、「未曾有の天災と人災をどう受け止めているのか」を、自分たちの言葉で綴っています。ある高校生は、原発事故をこのように考えているようです。

 「私は原発を憎んでいません。今も原発で一生懸命働いている人に感謝しています。けれど、どうして事故を防ぐことができなかったのか、起こってしまったことはしょうがないけれど残念に思います。この世に原発というものが存在しなかったら......そう考えたこともありました。」

 今も東北地方を脅かす地震が、原発に刺激を与えるのではないかと心配し、また、どこかへ移り住まなければならないか、と考えてしまうことがあると言います。

 一時帰宅の時に見た故郷は、人がおらず、動物が野放しにされ、とても不思議で寂しい景色だったそうです。もう、同じ被害をうけてほしくない。それが彼女の正直な気持ちではないでしょうか。

 同書のなかで彼女は、「私は、平和な毎日を壊した原子力発電所はなくなっていいと思います」そう、自分の意見をはっきり示しています。

 この意見は、一つの小さな意見なのか、それとも大きなものなのか。その判断だけは間違えたくありません。

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