スマホが精神病を引き起こすってホント?

毒になるテクノロジー iDisorder
『毒になるテクノロジー iDisorder』
ラリー D.ローゼン,ナンシー チーバー,マーク キャリアー
東洋経済新報社
2,592円(税込)
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 米アップルが、iPhone5(仮称)の発表会を9月12日に開催するということが話題になっています。すっかり私たちの生活に定着したスマートフォンや携帯電話ですが、書籍『毒になるテクノロジー』は、その依存性に警鐘を鳴らします。たとえば、次のような光景を見かけたことはないでしょうか。

・レストランや自宅で食事をする際、どのテーブルの上にも携帯電話がのっている
・映画館で上映後、場内が明るくなる前から観客が一斉に携帯電話を取り出す
・電車に乗ってまわりを見渡すと、誰もが携帯電話の画面を覗き込んでいる

 もしも、携帯電話やスマートフォンが普及する前の人たちがこの光景を見たら、現代人を皆、異常だと思うかもしれません。こんな実験結果があります。

 ある2つのキャンパスで、一方は1週間SNSの禁止をし、もう一方は1週間一切のテクノロジー(携帯やパソコン、テレビなど)の使用を禁止したそうです。どちらの実験でも、禁止の指示を守れた学生はごくわずかで、SNSを使わないことに成功した学生は、たった10%~15%だったそうです。ある学生の感想がその体験をよく表しています。

 「大切な情報を逃しているかもしれないと思って、不安でたまらなかった」

 同書によれば、テクノロジーに依存しすぎた人には、精神病に似た兆候が見られると言います。

・フェイスブックで嫌味をいわれた若者が、侮辱的表現でやり返す。相手も応酬し、互いを激しく罵倒するやりとりが何日も続く
・会社員の夫が、夕食の席でも携帯電話から目を離さず、妻や子どもから話しかけられても反応しない
・試験勉強をしている学生が、無自覚のうちに様々な対象に気を散らせている。教科書を数秒読んだかと思えば、フェイスブックを覗き、チャットをし、iPodの音楽を聞き、テレビのリアリティ番組に見入る。これらの動作を延々と繰り返す

 このようなテクノロジーやメディアの過剰な利用によって生じる、様々な精神疾患の症状や兆候を「iDisorder(iと障害を意味するdisorderをつなげた造語)」と呼びます。ただ、メールやインターネットが日常に当たり前に浸透した今、テクノロジーの使用を止めるのは現実的ではありません。最善策は、バランスよく、テクノロジーの適度な使用をすること。

 たとえば、「テクノロジー休憩」。仕事に15分集中したら、1分間はメールやSNSをチェックすることで集中力を高める方法や、自然に触れる、簡単な運動をするなどしてストレスを減らすことで、情報処理能力を高めることを推奨しています。

 現代人のほぼ全てが対象といわれる「テクノロジー中毒」。その処方箋として、読んでみてはいかがでしょうか?

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