MF遠藤の後継者は兵藤・小椋? 統計学から遠藤超えの選手を読み解く

遠藤保仁がいればチームの勝ち点は117%になる データが見せるサッカーの新しい魅力 (ソフトバンク新書)
『遠藤保仁がいればチームの勝ち点は117%になる データが見せるサッカーの新しい魅力 (ソフトバンク新書)』
西内 啓
ソフトバンククリエイティブ
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 W杯予選でグループ首位の日本代表が、ジーコ率いるイラクと対戦します。注目すべきはジーコも警戒しているというMF遠藤のプレー。ジーコ監督が日本を率いた06年のドイツW杯では、遠藤はフィールドプレーヤーでは唯一、 出場機会がありませんでした。今や誰もが認める日本の中心選手。当時の悔しさを、ピッチで晴らしてくれるでしょう。

 そんな遠藤はすでに32歳。ブラジルW杯の頃には34歳になります。日本代表としては、遠藤の後継者探しが急務となっています。そのなかで、高橋秀人、柏木陽介、柴崎岳、扇原貴宏、山田直輝、細貝萌ら、数名の候補が上がっていますが、未だポジションを奪った選手はいません。

 Jリーグでは、J1リーグの全試合で、データスタジアムというものが導入されており、1試合あたり約2000項目、10時間以上の時間と人手をかけて、ありとあらゆる情報を電子的に記録しています。2011年シーズンのパフォーマンスを見たとき、データ分析のうえでも、遠藤は唯一無二の選手だということが証明されました。

 2011年シーズン、遠藤は敵陣において1007本のパスを成功させていますが、これは群を抜いて高い数字。2位の野沢拓也は880本なので、その差は120本にもなります。また、アタッキングサード(ピッチを3分割したうちの相手ゴールに最も近い領域)からのパス成功率は79.1%で、上位20名の選手のなかで1位。遠藤は攻撃的な位置からのパスの正確性という点で優れていることがわかります。

 パスの種類に目を向けると、全パス2314本のうち、1415本がショートパス。遠藤の基本スタイルがショートパスであることがわかります。パスを受けるためのトラップの成功率は、リーグ3位にランクイン。さらには、アタッキングサードにおけるタックル数がシーズン中に17回(2位)あり、インターセプトも15回(6位)と、ディフェンス面でも高い数字を残しているのです。

 「多くの守備のスペシャリストたちがいる中で、こちらのディフェンス面でのスタッツの上位にランクインしたことこそが、遠藤が凡百のパサーと一線を画した存在であると言える」と、書籍『遠藤保仁がいればチームの勝ち点が117%になる』ではまとめています。

 Jリーグでも突出した存在感のあるといえる遠藤。そんな遠藤の後継者にすえる選手はいるのでしょうか。同書では、遠藤同様に数字で分析してみました。すると意外な選手が浮上してきたのです。

 それが横浜F・マリノスの兵藤慎剛。兵藤は、ショートパス成功率でリーグ4位の893本を記録し、アタッキングサードからのパス成功数では遠藤よりも多い346本、成功率は73.8%(遠藤は79.1%)と、リーグ5位の値を示しています。また、アタッキングサードでのタックル数が9位(12本)と、遠藤同様に前線からの守備に積極的なのです。

 そして同じマリノスのなかからもう一人、注目の選手が導き出されました。小椋祥平です。パス成功数はリーグ4位、ショートパス成功数は、兵頭に次いで5位、自陣からのパス成功数は11位、敵陣からのパス成功数で22位、ミドルサードからのパス成功数では4位と、中盤でのパス展開が多い。そして特筆すべきは、全プレーヤーのなかでダントツでタックル数および成功数が多く(128回中101回成功、78.9%)、なかでもミドルサードでのタックル数が多い(70回、1位)。そのほかにもブロック数が75回で4位、インターセプト数が21回で1位と、ディフェンス選手並みに高い数字をたたき出しています。そのうえパスの成功数が高いのは、見過ごすことのできないポイントです。

 遠藤と匹敵するほど、兵頭と小椋のスタッツは優れています。この2人の数字は、ザック監督の耳に入っているのでしょうか。戦術理解やチームワークなど、様々な視点から日本代表選手は選出されていますが、データスタジアムの数字からみると、この両選手は、遠藤の後継者として有力な選手といえるでしょう。

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