向かいの家で殺人事件!? ドラマでも話題沸騰の原作の文庫判が80万部突破

夜行観覧車 (双葉文庫)
『夜行観覧車 (双葉文庫)』
湊 かなえ
双葉社
700円(税込)
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 学生が卒業を意識し始めるこの季節は、4月からの新生活に向けて準備が行われる時期。ライフスタイルや消費活動について研究している「トレンド総研(東京都渋谷区)」が"働くママ"500人を対象に行った『理想の住まい』調査によれば、住まい選びに重要視されるポイント1位は家賃。2位が住居内の満足度、そのあとは立地、周辺施設と続いていきます。

 金銭面や設備面を重要視する人が多く、「近所との関係」をまず考慮する人は少なくなっているとのこと。ひとむかし前は引っ越しといえばご近所へのあいさつ回りでしたが、マンションをはじめとする集合住宅に住む人が増えるにつれ、そういった習慣も徐々になくなってきているのかもしれません。

 それでもやはり、ご近所との人付き合いは避けては通れないもの。小説『告白』が映画とともに大ヒットし、ミステリー界に衝撃を走らせた湊かなえさんの小説『夜行観覧車』も"ご近所づきあい"がテーマ。しかしそれは、和気あいあいとした隣人関係ではなく、高級住宅街に住む家族たちがそれぞれ抱えている問題に焦点があてられた人間の持つ陰の部分に迫った作品となっています。

 遠藤家は高級住宅街ひばりヶ丘に一戸建ての家を建て、明るい希望を持って引っ越してきた家族。しかし、この街は古参の婦人会が、しきたりや近所づきあいなど全てを仕切り新参者には肩身の狭い環境でした。ことあるごとに嫌がらせを受ける遠藤家でしたが、向かいの高橋家の妻・淳子は友好的で、遠藤家の妻・真弓はそれが唯一の救いとなります。真弓と淳子は親友のように関係を深めていきますが、4年後のある日、高橋家の夫・弘幸が自宅で何者かに襲われ死亡。高級住宅街に起きたセンセーショナルな事件を発端に、運命に翻弄される家族たちの人間模様が描かれています。

 本作品は今年1月からTBSでドラマ化されており、主人公・遠藤真弓役に鈴木京香さん、向かいの豪邸に住む高橋淳子役に石田ゆり子さん、真弓に対して陰湿な態度をとる自治会婦人部の部長・小島さと子役に夏木マリさんと豪華な面々が名を連ねました。2010年に単行本化。文庫判は2013年1月刊行で現在早くも80万部突破。近年まれに見る数字を記録しています。近所、お隣、もしかしたら自分の家でも起きるかもしれないサスペンスストーリーを、ドラマと併せて体感してみてはいかがでしょうか。

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