神秘的な吟遊詩人が奏でる無形文化遺産 「バウルの歌」

バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌
『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』
川内 有緒
幻冬舎
1,620円(税込)
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 小笠原諸島、平泉に続き、富士山の世界遺産登録が注目されています。現在、日本には、平泉などの文化遺産が12件、小笠原諸島などの自然遺産が4件、登録されています。その他にも芸能や伝承、儀礼などが該当する無形文化遺産というものがあります。歌舞伎や能、文楽がそれにあたります。

 その無形文化遺産ですが、世界には「バウルの歌」というものが登録されています。「NHK世界遺産」の説明によると、バウルは、バングラデシュとインドの西ベンガルの農村部に暮らしている神秘的な吟遊詩人のこと。1弦琴のエクタラとドゥブキと呼ばれる太鼓を奏でながら歌い、人々の喜捨によって生計を立てているのです。そんなバウルが歌う詩は哲学的なのが特徴です。どうやって生きる苦しみから逃れるか......といった、生きていくうえでの悩みを癒すための歌なのです。その歴史は600年以上ともいわれ、多くの人から愛され、国境・宗教の壁を越えて大切にされてきました。

 書籍『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』は、国際機関で働いていた著者の川内有緒氏が、退職を機にバングラデシュを訪れた時の物語です。在職中にバングラデシュを訪れたことのある川内氏は、そこで初めて「バウルの歌」の存在を知りました。情報提供者は、神秘的な「バウルの歌」をこう説明しました。

 「おそらく聴くことは難しいでしょうな。バウルたちはいつも移動しているから、どこにいるのかぜんぜん分からない」

 「バウルとは......。何と言ったらよいかな。昔から祭や路上で歌を披露して生活しています。何のカーストにも属さない人々です。いわゆる"アンタッチャブル"とでも言えばいいのかな」

 「つまり、貧しい人々で、歌うことで生計をたてているということ」

 所在が不明にも関わらず、保護すべき貴重な文化と国際指定されている「バウルの歌」。川内さんはこの歌を実際に聞くためにバングラデシュを再度訪れる決心をしたのです。同書は、アジア最貧国・バングラデッシュを駆け抜けた12日間の旅物語。

 神と自分以外の何者にも縛られないという独特の世界観を持つと言われる「バウルの歌」、あなたも聞いてみたくはありませんか?

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