地方の閉塞感を描く直木賞作家・辻村深月さんが挑む「眩しい故郷」の物語

島はぼくらと
『島はぼくらと』
辻村 深月
講談社
1,620円(税込)
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 『鍵のない夢を見る』(文藝春秋)で直木賞を受賞した辻村深月さん。受賞後第一作は、瀬戸内海に浮かぶ小さな島・冴島に暮らす17歳の高校生4人の物語『島はぼくらと』です。

 地方や故郷をテーマにすることが多かった深月さん。それも、ゆとりある暮らしにスポットを当てるのではなく、地方の生活が持つ閉塞感や残酷さなど、田舎のもつ悪い面を描いてきました。
 
 そんな深月さんですが、以前、瀬戸内海の島を訪れた時に、自身が戦ってきた田舎とは異なる環境を目の当たりにしたと言います。そこで芽生えたのが、「いつか、地方のしがらみや故郷に対して肯定的に捉えられるような読み物を書きたい」という感情。それが本作の執筆のきっかけになっているのです。

 登場する4人の高校生は、それぞれ魅力的たっぷりに描かれています。母と祖母の女三代で暮らす、伸びやかな少女・朱里。おしゃれで美人なのに、気が強く口が悪い、どこか醒めた網元の一人娘・衣花。「親父のエゴまみれロハスに巻き込まれた」と言い捨てる源樹。部活に30分しか参加出来ないのが、新。島には高校がなく、冴島で育った子どもたちは、高校に通うためには、フェリーで通うことになります。最終便の直通フェリーは午後四時十分。そのため、部活動に精一杯注力することができないのです。

 同作は、彼ら4人が『「幻の脚本」の謎』『未婚の母の涙』『Iターン青年の後悔』『 島を背負う大人たちの覚悟』などの青春時代らしい様々な問題に直面する物語。淡い恋のストーリーも描かれます。

 今回、本書の装画を担当したのは、『魔女』『海獣の子供』『SARU』などの作品で有名な漫画家・五十嵐大介さん。作品が持つ雰囲気や登場人物の姿を、五十嵐さんが描くビジュアルを通して楽しむことができます。瀬戸内海の眩しい景色のなかに立つ4人の姿は、まさしく本編に登場する彼らそのものです。深月さんが描いた「眩しい故郷の物語」を、さらに身近に感じることができる装画となっています。

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