地方の若者はなぜ「イオンモール」を目指す?

地方にこもる若者たち 都会と田舎の間に出現した新しい社会 (朝日新書)
『地方にこもる若者たち 都会と田舎の間に出現した新しい社会 (朝日新書)』
阿部真大
朝日新聞出版
821円(税込)
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「ブックオフ、ハードオフ、モードオフ、TSUTAYAとワンセットになった書店、東京靴流通センター、洋服の青山、紳士服はるやま、ユニクロ、しまむら、西松屋、スタジオアリス、ゲオ、ダイソー、ニトリ、コメリ、コジマ、ココス、ガスト、ビッグボーイ、ドン・キホーテ、マクドナルド、スターバックス、マックスバリュ、パチンコ屋、スーパー銭湯、アピタ、そしてジャスコ。」

 これは山内マリコ氏の小説『ここは退屈迎えに来て』に書かれた、「ファスト風土」と呼ばれる地方風景を描写した一節です。

 社会学者として活躍している阿部真大氏による著書、『地方にこもる若者たち 都会と田舎の間に出現した新しい社会』では、このファスト風土に注目しています。そして、現在のこうした地方風景の中心となっているのが、小売・流通大手「イオングループ」の存在だと指摘しています。

 いま地方の若者の間では、かつて広告宣伝で「シブヤもハラジュクもうらやましくない」と謳ったイオングループが、重要な位置を占めているのだと言うのです。

「ドライブを楽しみショッピングを楽しみ映画を楽しみ食事を楽しむ。こうした余暇のあり方を生み出したという点で、イオンモールは地方の若者の余暇を大きく変えた」

「大都市のような刺激的で未知の楽しみがあるわけではないが、家のまわりほど退屈なわけではない、安心してほどほどに楽しめる場所」

 地方の若者たちは、イオンモールが象徴するような「ほどほどに楽しめる」地方生活に、居心地の良さを感じているのだそうです。そして、彼らは都会へ向かうことなく、そのような生活を自ら「選択」しているのだというのです。

 本書では、著者が岡山県において行ったフィールドワークの詳細なデータの元、人間関係や仕事を通しての考察をはじめ、Jポップの歌詞に見られる社会や他人との関わり方の変遷を通して「地方にこもる若者たち」の生態を探ろうとしています。

 現代の日本の郊外=ファスト風土における生活から、見えてくる日本の新たな可能性とは何なのでしょうか?

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