大阪人の学歴は東京人より低い? データで読み解く教育の地域格差

データでわかる2030年の日本
『データでわかる2030年の日本』
三浦 展
洋泉社
1,728円(税込)
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先月、静岡県の川勝平太知事が、全国学力テストで成績の悪かった小学校100校の校長名を、一般公表しようとしたことで話題を集めました。これは、静岡県の国語Aの平均正答率が、全国最下位だったことを受けての措置。各方面での反発を受け、全国平均を超えた小学校の校長名を公表するに留まったものの、教育の地域差を浮き彫りにする事例となりました。

書籍『データでわかる 2030年の日本』では、教育をはじめ、人口、高齢化、少子化、未婚化、雇用、地域格差などに関するデータを通して、将来の日本のあるべき姿を分析しています。

"教育の高さ"を示す指標の1つといえるのが、高等教育の有無。本書では、2010年に行われた国勢調査をもとに、都道府県別にみる「人口に占める大卒以上(4年制大学、大学院)の割合」をランキング形式で紹介します。

全国平均は、17.3%。大卒以上が多いのは、1位の東京都(25.1%)、2位の神奈川県(24.8%)、3位の千葉県(22.3%)などの東京圏、関西圏、中京圏といった大都市圏が中心。秋田県(9.0)、青森県(9.1%)、岩手県(9.7%)、あるいは宮崎県(9.1%)、鹿児島県(10.6%)、長崎県(11.0%)など、大都市圏から遠いほど学歴は低くなっています。前述の静岡県は15.3%で、富山県と並ぶ第15位でした。

「大学は大都市圏に多く、大卒者が働く場所も大都市圏に多い」と著者の三浦展氏が語るように、東京が1位となった理由は頷けるものですが、同じく大都市圏である大阪府はどうなのでしょうか。大阪府は、意外なことにも、全国平均をわずかに上回る11位です。

東京都と大阪府の大卒以上の割合を市区町村別にみても、上位を占めるのは武蔵野市(38.1%)、千代田区(36.7%)、杉並区(36.2%)、小金井市(35.8%)、文京区(35.6%)など、有名大学を立地する東京の市区です。大阪府の市区であがっているのは、ようやく15位の箕面市。21位に吹田市、27位に茨木市が入りますが、29位に天王寺区が登場するまで、大阪市内の区は登場しません。

三浦氏は大阪市の橋下徹市長が、大阪府知事時代から、子供の学力が低いことを問題視していたことに言及しつつ、このように語っています。

「これから見るように、子供の学力が低いことは、給料の高い職業に就けないことにつながりがちだし、生活保護世帯の多さにもつながりやすい。そのことは大阪の財政の負担を増やし、大阪の経済成長を損ねることになります。そこを橋下さんは問題視しているのでしょう」

「大阪の産業は製造業が主体です。しかし製造業の製造拠点は、1990年代以降、円高のために、海外に移転してしまった。だから、大阪の経済はずっと沈滞したままなのです。大阪が、これからの成長が見込まれる金融、サービス、情報、環境、福祉医療などの新しい産業にもっとシフトしていくには、東京のように、新しいビジネスをクリエイトするすぐれた人材がたくさん集まっていることが必要です。橋下さんはおそらく大阪を少しでもそういう方向に持っていきたいのでしょう。橋下さんには批判も多いですが、だからといって大阪のような大都市が沈滞することは、日本全体にもよい影響は与えません」

ますます高齢化し、働き手である若い世代が激減する過渡期にある日本は、「大阪にも、その他の地方にも、いろいろな形で発展してもらわないといけない時代」にあると語った三浦氏。大都市圏だけでなく、日本全体のためにも、教育の重要性を訴えていました。

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