●担当者●あおい書店可児店 前川琴美

2015年4月2日更新

『白』原研哉

 美しい本を紹介する。題名は『白』。あなたが知っているどの本と比べても、これほど白い本はないだろう。白は表紙に触れる瞬間からあなたの意識に入り込み、感覚の目盛りが細かくなりはじめる。美しい本は美しい言... 記事を見る »
2015年3月5日更新

『夜の写本師』乾石智子

 写経をしたことがある。一字でも上手くいかないと、がっかりするアレだ。何回も自分の集中力と対決したが、一回も納得出来るものは書けなかった。印刷技術がない時代は毎回こんな思いをしていたのだな、と『夜の写... 記事を見る »
2015年2月5日更新

『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』ジェーン・スー

 この題名と相対してはや半年。読むのか、読まないのか、それは背後霊のように私につきまとい続けた。思えば書店で「40代女子、万歳」というコピーと共に創刊した雑誌「GLOW」を並べた女子ショックから早4年... 記事を見る »
2015年1月8日更新

『死の島』福永武彦

 この先何冊並べようと、福永武彦の『死の島』をこの手で並べることはないんだな、といつも思っていた。これ以上人間の喪失感をすくいとった小説はないのに! これほど高次な孤独を描いた人間の所業はないのに! ... 記事を見る »
2014年12月4日更新

『ラチとらいおん』マレーク・ベロニカ

 絵本を贈りたいという気持ち。それこそが神がくれたプレゼントかしら、と思うくらい、絵本を贈る行為は幸福だ。絵本売り場は幸せに満ち満ちている。その尊い場所で児童書担当だった私は次から次へと数多くの新刊を... 記事を見る »
2014年11月6日更新

『皮膚感覚と人間のこころ』傳田 光洋

「紙の本を買いなよ」アニメの登場人物が言った。「電子書籍は味気ない。本はね、ただ文字を読むんじゃない、自分の感覚を調整するためのツールでもある。(略)精神的な調律、チューニングみたいなものかな。調律す... 記事を見る »
2014年10月2日更新

『物語ること、生きること』上橋菜穂子

「どうしたらお話が書けますか」。小さな読者からの真っ直ぐな問いが著者の中でずっと息づいていた。「登山者が、この岩に手をかけたら上手く登れると気付いて、後からやってきた人に『この岩大丈夫ですよ!』と声を... 記事を見る »
2014年9月4日更新

『This is the Life』アレックス・シアラー

 これはペンです、みたいに、人生を「This is the Life」と語れるのか、否か。一人の人間として、そして作家として。『青空の向こう』『チョコレートアンダーグラウンド』の著者アレックス・シアラ... 記事を見る »
2014年8月7日更新

『昆虫交尾図鑑』長谷川笙子

 書店で勤めていると、週刊誌やコミックの表紙で沢山のエロを目にする。エロがどれだけ経済を回しているかを痛感させられる。人間の発情期がのべつまくなし年中無休であることに感謝する毎日。もし発情期が例えば春... 記事を見る »
2014年7月3日更新

『カタツムリが食べる音』エリザベス・トーヴァ・ベイリー

「この本の主役はとても小さい。」そう、カタツムリだ。カタツムリを「あの子」と呼び、対等なパートナーとして敬愛しているこの著者は34歳の時謎の病気に罹ってしまう。寝たきりの入院生活の中で薬害にも遭う。「... 記事を見る »
2014年6月5日更新

『鐘の渡り』古井由吉

 あちらとこちらの境。自分と他者の境。過去、現在、未来。いつの間に混ざり合い、溶けたのだろう。暮らした女を亡くした朝倉と、これから女と暮らす心づもりの篠原が並んで歩く、その道行きは終着点まで交わらない... 記事を見る »
2014年5月1日更新

『惡の華』押見修造

 薄々は気付いていたが、気付かないフリをしてた。本が好きってことがカッコわるく、ダサいってことを。クラスメイトにも隠さねば学校という場所を生き延びるすべはない。みんなと同じ「普通」ってヤツを上手く装え... 記事を見る »
あおい書店可児店 前川琴美
あおい書店可児店 前川琴美
毎日ママチャリで絶唱しながら通勤。たまに虫が口に入り、吐き出す間もなく飲 み下す。テヘ。それはカルシウム、アンチエイジングのサプリ。グロスに付いた虫はワンポイントチャームですが、開店までに一応チェック! 身・だ・し・な・み。 文芸本を返品するのが辛くて児童書担当に変えてもらって5年。