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第61回:折原 みとさん (オリハラ・ミト)

折原 みとさん 写真

少女漫画家として、恋愛小説家として、10代の少女から絶大な人気を誇る折原みとさん。エッセイや絵本、詩集も手がけ、さらに今年は大人の女性向けの恋愛小説も上梓。幅広く活動する彼女の読書道は? 海を見下ろす小高い丘にある瀟洒なおうちは、そこだけ別時間が流れているかのよう。暖炉のある広いリビングで、じっくりとお話をうかがいました。

(プロフィール)
1985年、少女マンガ家デビュー。1987年、小説家デビュー。
1990年に講談社より刊行した『時の輝き』が110万部のベストセラーとなる。
マンガ、小説にとどまらず、エッセイ、絵本、詩集、フォトエッセイ、料理レシピ本、CDなど幅広く活躍中。
2006年12月下旬 講談社より『制服のころ、君に恋した』を刊行。

【2歳で切ない話に目覚める!】

泣いた赤おに
『泣いた赤おに』
浜田廣介 (著)
梶山 俊夫(著)
偕成社
2100円(税込)
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ごんぎつね
『ごんぎつね』
新美 南吉(著)
黒井 健(著)
偕成社
1470円(税込)
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ゲンのいた谷
『ゲンのいた谷』
長崎源之助(著)
実業之日本社
※絶版
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ふたりのイーダ
『ふたりのイーダ』
松谷みよ子(著)
講談社
1470円(税込)
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愛と死をみつめて
『愛と死をみつめて』
大島みち子(著)
大和書房
580円(税込)
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――幼い頃の読書に記憶って、いつくらいになりますか。

折原 みと(以下折原) : 2歳くらいですね。

――はやい!

折原 : もちろん、自分で読んだのではなく、読み聞かせてもらっていたんです。でも覚えていますね。印象に残っているのは浜田廣介『泣いた赤おに』新美南吉『ごんぎつね』

――超ロングセラーの2冊。どちらも、切ない話ですよね。

折原 : そうなんです! 今でも切ない話がすごく好きなんですが、この2冊でそうなったのかも…。まあ、もともとの性格が違ったら、これらの本でなく、お姫様のお話などを好きになっていたはず。切ない話が好きという性格的な傾向があった上に、こうした本に出会ってしまったから、もう思想が固まっちゃった(笑)。読書傾向どころか、人間性まで決まってしまいました。

――どんな少女だったんでしょう。

折原 : ごく普通なんですけれど、でも何か、問題意識を持ちやすい子だったんです。差別は嫌だなと思ったり、人間の本質って何だろうと考えたり。それで、小学校3年生くらいの頃に、戦争ものを読んでしまって。もう、今度は戦争一色ですよ(笑)。いいお話があるんです。長崎源之助『ゲンのいた谷』という児童小説。

――どういうお話なんですか。

折原 : 小学生の男の子が、お父さんと田舎のお寺にやって来るんです。そこは、昔お父さんが疎開していた場所でもあって。お父さんが住職さんと話している間、男の子がうろついていると、壁に描かれた怪獣が話しかけてくるんです。どうやら、ゲンというその怪獣は、男の子を別の少年と勘違いしているみたい。戦争の頃、いじめられっ子だった少年が、壁に怪獣を描いて唯一の友達になった。少年は嫌なことや涙をその怪獣に食べさせて、うさをはらしていた。でも東京大空襲でお母さんが心配になって脱走し、そのまま帰ってこなかったんです。ゲンはずっとその少年が帰ってくるのを待っていたんです。そして月日が経ち、少年に似ている男の子がやって来たので、話しかけたんですよね。実は、ゲンを描いた少年は、男の子のお父さん。お父さんがやってきて、彼もゲンだと分かる。「お前だったんだ」と言って、怪獣は崩れていくんです。そうしたら、男の子が、「僕は嫌なことや涙を食べさせない。僕なら未来の希望や夢の話をするよ」って言うんです。もう、本当にいい話なんです。

――…いい話ですねえ…。

折原 : というのを読んでしまったので、戦争に興味を持ったんですよね。あとは松谷みよ子『ふたりのイーダ』もいい話。原爆の話だということを前面に出さず、ファンタジーの謎解きとして、昔何か大変なことがあったんだと思わせる。小学生の男の子は読者と一緒で、原爆のことを知らないんですよね。そして、昔こんなことがあったんだと気づいていく…。

――きちんと読書をしている印象を受けます。聡明な子供だったんですね。

折原 : というか、暗い子だったんです(笑)。暗い感受性を持った子だった。

――本はどうやって選んでいたんですか。

折原 : 兄と姉がいるので、上の年頃向けの本は家にあったんです。ですから、自分の年齢よりちょっと上の世代の本を読んでいましたね。それと、親がわりと本を買ってくれて、家に結構あったんです。本好きになってからは、学校の図書館で借りていました。小学校低学年は戦争もの、そして、5年生くらいで、今年ドラマにもなった『愛と死をみつめて』を読んで…。

――ミコとマコですね。ある青年と難病の少女が、実際に交わした往復書簡。

折原 : そうそう! それが家にあったんですよね。昔の大ベストセラーなんですが、親がドンピシャでその世代だったので、持っていたんです。それを5年生で読んで、目覚めちゃったんです。…なんて分かりやすいんだろう、私って(笑)。愛って何、死って何、人生って何って、すごく考えました。そこから始まって、難病の人や自殺した人の手記を読むようになりました。あの頃が一番、人生を真面目に考えていましたね。

――将来の夢は何だったんですか。

折原 : 小学校の頃から漫画も好きで描いていたので、漫画家や小説家になりたい気持ちはありました。だけどそれほど真面目に考えていたわけじゃないんです。その時に読むものに影響されて、看護士になりたいと思ったり、宇宙飛行士になりたいと思ったり。

――漫画は何を読まれていたんですか。

ベルサイユのばら(5冊セット)
『ベルサイユのばら』
(全5冊セット)
池田 理代子(著)
集英社
3050円(税込)
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はいからさんが通る 全4巻セット
『はいからさんが通る』
(全4巻セット)
大和 和紀(著)
講談社
2732円(税込)
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折原 : 小学校1年生くらいの頃『マーガレット』で『ベルサイユのばら』が連載していて、リアルタイムで読みました。『はいからさんが通る』などの名作がありましたね。あとは萩尾望都のような、ちょっとマニアックなものを読みました。

――まわりの友達と情報交換したり。

折原 : してました。自分の要らなくなった本を売りつけたり(笑)。

――漫画だけでなく、小説も書かれていました?

折原 : 描いていましたね。切ない話を。子供のくせにヤなガキです。

【読書傾向で、人生観も変わった?】

にぎやかな未来
『にぎやかな未来』
筒井康隆(著)
角川書店
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夏への扉
『夏への扉』
ロバート・A・ハインライン(著)
早川書房
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――その後の読書は。

折原 : 小学校5年生の時は、多感で反抗期で人生真面目に考えていたのに、中学でSFが好きになり筒井康隆にハマったら、芯の考え方は変わらないけれど、まあ、どうでもいいや、人生楽しければいい、と楽天的に考えるようになりました。筒井さんは『にぎやかな未来』など、短編集をよく読みましたね。他に、小松左京平井和正など、SFばかり読みました。

――その頃は、少女小説やヤングアダルトは全盛期ではなかった?

折原 : なかったですね。コバルト文庫はありましたけれど、読まなかった。筒井さんの流れから、海外のSFを読むようになって。ロバート・A・ハインライン『夏への扉』もすごく楽天的でしょう。

――何度もタイムスリップを試みるんですよね。

折原 : その諦めなさ加減が、すごくよかった。ボロボロになってもどこか楽天的な主人公がすごく好きになって。

――飼い猫のピートも、猫好きにはたまらない存在です。

折原 : 最後に「彼(※ピート)はいつまでたっても、ドアというドアを試せば、必ずそのひとつは夏に通じるという確信を棄てようとはしないのだ。そしてもちろん、僕はピートの肩を持つ」といった言葉がすごく好きで。どんな時でも絶対に諦めないってことを、この本から学びました。

――ちゃんと本からいろんなものを吸収しているんですね。

折原 : 本って、先生ですよね。学校の先生や親からもいろいろ教えてもらったけれど、本から教えてもらったこともたくさんある。

――あと、ストーリーや台詞をよく覚えていらっしゃるなと思うのですが、何度も繰り返して読んでいるんですか?

折原 : 好きな本はもう、何回も読みます。

【納得できないラストが、原動力に】

――その後、読書傾向はどうなりましたか。

折原 : 中学生と高校時代はSFとファンタジーと歴史小説ですね。SFはレイ・ブラッドベリダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』とか。

――SFの要素がありつつ、人間の本質を見るような作品。

折原 : そしてちょっと切ない系(笑)。

アルジャーノンに花束を
『アルジャーノンに花束を』
ダニエル・キイス(著)
早川書房
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風神の門(上)
『風神の門(上)』
司馬 遼太郎(著)
新潮文庫
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梟の城
『梟の城』
司馬 遼太郎(著)
新潮社
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『ナルニア国ものがたり』
(全7冊セット)
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岩波書店
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――『ごんぎつね』から変わらない。ファンタジーや歴史小説は何を?

折原 : 歴史小説は司馬遼太郎さんが好きだったんです。最初『風神の門』という、霧隠才蔵という忍者の話にハマって。『梟の城』も好きですね。ファンタジーは、ミヒャエル・エンデとか、『ナルニア国物語』とか。『ナルニア国物語』は本当にハマりました。すっごく好きなんですけれど、最後だけ気にくわないんです。もう、頭にきてしまって。気に入らなさ加減が影響を受けています。

――どういうところが…。

折原 : あれは子供の兄弟が別の世界に行く話ですけれど、成長すると、ナルニア国に行けなくなる。兄弟でも下の子たちばかりが行くようになるんですが、最後の戦いにはみんなで行けることになって。平和を取り戻し、彼らがナルニアに来るのも最後だなと思ったら…(以下、これから読む方たちのために省略)。

――うーん。

折原 : 衝撃だったんですよ、そのラストが。それってどうよ、と。今までのことは何だったの、と思ってしまう。宗教観が違うからなんでしょうけど。私は許せないよって思ってしまう。この兄弟って結構嫌な子供なんですけれど、ナルニアで強さや勇気や優しさを身につけて、どんどん成長していく。それを大人になってから活かすべきだと思うんですけれど、なのに…! すごくショックだったんです。本を読むというのは、本の中で自由に遊んでいろんな体験ができること。でも架空の世界だけにいてはダメだと思う。自分が獲得したものを、戻ってきた現実の世界で活かしていくべき。自分も小説を書く時、嫌なことがあっても安らいでほしい、と思って書きます。勇気や元気を感じてほしい。そして現実の世界で頑張ろうという気持ちになって、生きていってほしいなって思うんです。だから『ナルニア国物語』は許せなかった。

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『金の砂漠王(バーディア)―アナトゥール星伝』
折原みと(著)
講談社X文庫
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ミヒャエル・エンデ (著)
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――反発のあまり、それが原動力になった。

折原 : ああいうラストは書かないぞと思いますね。ファンタジーとしてはすごい作品なんですよ。でも、私も異世界に行く話は書きますけれど、ラストはああはしたくない。そうですね、『ナルニア国物語』を読んだから作家になったのかも。こんなものは書きたくない、って(笑)。

――『アナトゥール星伝』のシリーズは、『はてしない物語』の影響があると思っていましたが。

折原 : あります、あります。でも『ナルニア国物語』も反面教師としてあるんですよ。

【実は少女漫画は嫌いだった!】

――高校では、漫画はどんなものを?

折原 : 同人誌をやっていましたね。ちょっとオタクですね。コミケとか、行ってました。なんかヘンなファンタジーを描いていましたね。『コンバットマガジン』とかを買って戦争漫画なんて描いてみたり(笑)。

――どんな作品を描いていたんですか。

折原 : その頃はマニアックな感じ。絵も少年漫画でした。今と全然違います。その頃、少女漫画のことをバカにしていましたから。

――えっ。

折原 : 恋愛小説や、恋愛を描いた少女漫画は読みませんでした。少年漫画とか、あとはマニアな感じのもの。山岸涼子とか。

――意外ですね。で、その後、漫画家を目指されたのですか。

折原 : 高校を卒業する頃は、映画監督になりたかったんです。親が許してくれず、バイトして自活するしかないと思って、お金をためてさっさと東京に出て。映画業界にコネクションを作る方法も知らないので、まずはエキストラのバイトをして、それだけでは生活が苦しいので雑誌のカットの仕事をしていたんです。映画は大変なのでさっぱり諦めましたが、イラストの流れで、漫画家になったんです。

――映画はお好きだったんですか。触発された作品は。

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折原 : 小さい頃から好きだったんです。ただ、高校の時に『蒲田行進曲』を観たんですよね。あれも撮影現場の話ですから、ああ、こういう世界もいいかも、って思ったんです。

――てっきりファンタジーの大作とかかと思ったら、つかこうへいとは(笑)。さて、漫画家としてデビューしますが、その時はすでに少女漫画なわけですよね。

折原 : デビューしたのが少女漫画雑誌だったので絵柄もガラッと変えたんです。描きたいわけでもなく、こういうものかなと思って描いていましたね。私の中での少女漫画のイメージは、男と女が出会ってなんだかんだいってキスして終わり(笑)。そうしたものを、面白いわけでもなく描いていました。そんな根性だったのでロクでもないものばかり。型どおりの漫画でした。でも、途中で、好きなことを描き始めて。当時はバンドが好きだったので、バンド漫画を描いてみたら反響もよかったんです。ああ、こういうものだ、って決めつけず、好きなものを描けばいいんだと気づいて、そこからは楽しくなりました。

――小説をお書きになったのは。

折原 : 最初、ポプラ社で他の方の本のイラストを描いていたんです。それで児童小説をいただいて読んでみたら、面白くて。それで、自分でも書いてみたいですと言って、デビューしたんです。その後、講談社のティーンズハートのシリーズで花井愛子さんの本のイラストを描いた時に、こういう小説もありなんだ、これなら書けそう、と思って書いたのが、少女小説。これも最初は天使が出てくるようなフワフワした話を書いていたんですが、だんだん変わってきましたね。

【作家の読書生活】

明日の記憶
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荻原 浩(著)
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――デビューしてから、読書は変わりました?

折原 : 変わりました。ヒマがなくなって、ほとんど読まなくなりました(笑)。家にいる時は仕事をしているので、読めるのは旅行の移動の時。飛行機の中では小難しいものは読みたくないので(笑)、スティーブン・キングディーン・クーンツなんかを読みますね。

――本は必ず携えていくんですか。

折原 : 本がないと落ち着かない。寝る時も絶対に本を読みながら寝ますね。あと、美容院に行く時も欠かせない。書店で買うことが多いですね。旅行で本を忘れた時は慌ててキオスクで買います。

――普段の読書で、好きな作家さんは。

折原 : 昔から変わらないです。司馬遼太郎さんは今でもやっぱり好き。塩野七生さんも好きですね。歴史ものが好きなのかも。最近になっていろんな人を読むようになったんですが、その中では荻原浩さんの『明日の記憶』がよかったですね。結構有名どころの本でも、えー、面白くないじゃん! というのがありますが、これは面白かった。

――心に響くもの、響かないものの違いはなんでしょうね。

折原 : ああ、この人はすごいな、と思う人っていますよね。ちゃんと人間を見ている人。本って人間性が出る。文章ひとつとっても、例えば司馬さんは、歯切れがよくて暗くなくて、潔くて、人への優しさがある。暗いことが書かれてあっても、その中に希望があってほしいんです。そうでないものを読むと、なんじゃこりゃー、金返せー! となる(笑)。

【逗子生活】

――逗子に越されて何年目ですか。生活は変わりましたか。

折原 : 9年目です。生活は変わりましたよ。東京では昼に起きて夜仕事する、ちゃんと漫画家らしい不健康な生活だったんですが(笑)、こっちだと朝が早い。人生観も変わって、それまでは仕事だけの生活だったんですが、そうはしたくないと思うようになり、今は習い事が多いですね。お茶、お花、踊り、お琴、書道…。

――和モノがお好きなんですよね。

折原 : あとはアウトドアもするようになりました。海に行ったり、山にも行くし。…なので、普段の生活では全然仕事をしなくなりました(笑)。

――でも、今年でも相当数刊行されていますよね。

折原 : 刊行ペースはそれほど変わらないですね。今は集中してやる時はやる、やらない時はやらない、とメリハリがあるんです。昔、連載を抱えた頃は少しずつ描いていたものを、今はまとめて描いてしまうので。

【大人の女性たちへの新刊】

制服のころ、君に恋した。
『制服のころ、君に恋した。』
折原みと(著)
講談社
1365円(税込)
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――新刊『制服のころ、君に恋した。』が刊行になりますが。

折原 : 20代後半の女性向けの恋愛小説です。

――あら。大人向けなんですね。

折原 : 今まで10代の読者向けのシリーズを書いてきましたが、当初の読者の方たちが20代後半から30代になっている。ティーンズハートをドキドキしながら読んで育った世代が、大人になった今読むものが少ないんじゃないのかな、と思って。

――やっぱり、切ない話ですか。

折原 : そうですね。切ない系好きなんで(笑)。

――でも、ラストは希望がある?

折原 : そうじゃないと嫌なので。たとえ泣いても、気持ちいい涙がいいですよね。泣いているというより、浄化されている気分になれるもの。そして、元気が出るものが好きですから。

(2006年11月24日更新)

取材・文:瀧井朝世

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