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  人生におけるいくつかの過ちと選択  人生におけるいくつかの過ちと選択
  【講談社】
  ウォーリー・ラム
  本体 1324円
  2002/1
  ISBN-406273348X
 

 
  大場 義行
  評価:C
   自分自身にウソをつきながら生きるというのは、誰しもある事だと思う。この小説の凄い所は、主人公が自分にウソをついているという事を見事に表現されている点ではないだろうか。切ない時は現実から目を背け、さらりと流したり、強がったりしているが、たまに本音が漏れてくる。しかもそれが一行くらいというのが漏れ出てくる感情のようで、とにかく印象的だった。しかし、内容でいうと、両親の離婚や学校から学生寮に至るまでのいじめ、レイプ、と今ではもう当たり前な事件しかおきずに残念。鯨という印象的なものを取り上げている点も少し陳腐な感じもしたりして、内容だけでいえば、正直Dを付けざるを得ない。でも、最初に説明した印象的な文章が余りにも良かったのでCとしておきました。

 
  北山 玲子
  評価:D
   「現代人のための癒しの書」という惹句には疑問を抱いた。癒しという言葉を出せば売れると思っているのだろうか。私ははっきり言って読んでいる間始終ヒヤヒヤ、イライラしちゃったので癒しどころか逆にストレスさえ感じたぞ。「ああ!だめじゃないの、ドロレス。そういう時はもっと素直にならなきゃ」なんてまるで主人公に対して、親になったような気持ちだった。それにしても、もう正直いってトラウマを抱えて生きる人の話は結構です。このぶ厚い1冊全てが可哀想な私の話を聞いて!のオンパレードでうんざり。まったく見当違いのものを引き合いに出して申し訳ないが、林芙美子の「放浪記」の爪の垢でも飲ませてやりたいと本気で思った。もうちょっと逞しく賢く生きろドロレス!評価はEでもよかったのだが、海岸に打ち上げられたクジラの姿を自分と重ねるシーンと、ドロレスに対して真摯に向き合ってくれたミスター・プーチの人柄にほろりとさせられちゃったのでD。

 
  山田 岳
  評価:A
   すっごくよくできている。大学の作家養成コースでのお手本と言っていいほど。読者の心をつかんではなさいプロット。
「もしかしたらわたしは、わたし以外の誰の目にも明白な、とんでもないまちがいを犯したのではないだろうか」というヒロイン、ドロレスは、肥大化したみずからの<自我>に押しつぶされていく。が、そう思うのは評者の深読みで、一般の読者には「悪いのはいつでも男」と読めてしまうかもしれない(汗)

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