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謎のギャラリー
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  【新潮文庫】
  北村薫
  2002/2-3
本体
1.
-438円
 
2.3.
-629円
 
4.
-667円
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1.名作博本館
2.謎の部屋
3.こわい部屋
4.愛の部屋


 
  石崎 由里子
  評価:B
  「こわい部屋」「愛の部屋」の2冊を読んでの評価です。
〜こわい部屋
 全体的に、オチがはっきりしていたり、余韻を残す終わり方をしていても、そこに明確な意味が感じられる終わり方をしている作品集で、読んでいて消化不良になることがない。すっきりした気持ちになる。
「やさしいおねがい」「四つの文字」のラストがいい。そして、作品集のトリである「夏と花火と私の死体」が秀逸。
 4日間とその後が、まるで紙芝居のようにドキドキしながら展開する。暑い夏に起きた事件。子どもたちの優しい笑みを湛えながら、邪気と残酷さをそなえた行動が、暑い中、背中に冷たい汗が一筋流れるような、温度差を体感させてくれる。そしてラストの歌が、耳の奥からエコーがかかって流れてくるような気がした。寒い。
〜愛の部屋
 愛の定義は人それぞれだけど、読んでいて「これ、愛じゃなくて孤独じゃない?」と思う作品が多々あった。そう、きっと愛とは一時的なもの、が、ゆえに永遠ではない、が、ゆえに、幸せなもの、ではないのかもしれません。
 どちらかという孤独感のある作品の方が印象に残ってしまい、読んだらますます寂しくなった。 「愛情の反対は憎悪ではなく無関心」というマザーテレサの言葉があるように、愛の反対は、存在を意識してもらえない孤独感。対極であるということは、同じということでもあるのだろうから、、本題からズレてはいないでしょうけれど、タイトルに『愛の部屋』と謳っていたので、読んで幸せになれるかな?と期待していたので、ちょっと残念。

 
  大場 義行
  評価:C
   北村薫が自分自身の為に作り上げた名作全集。趣味に合う合わないが出るが、なるべくそのままの挿し絵を使ったり、文庫で、しかも個人的な全集にしては凝っている部類になるのでは。個人的には愛の部屋は良い物が多かった気がする。数が多く、どう書いたらいいのか判らないけれど、特筆すべき点はただ一つ。編集者と北村薫の会話という形で構成されている本館(解説編)で使用されているマーク。ここからネタ晴らしなので読むのを止めなさい、ここからいいですよという手のマークなのだが、これは良い。なるべくならばミステリの解説者はこれを標準装備して欲しいものである。

 
  北山 玲子
  評価:C
   確かに選者の幅広い読書量は感嘆に値するし、物語の面白さを伝えるためにはとてもいい本だと思う。しかし、アンソロジーって、選者と読み手の趣味やらセンスがぴたっとはまるかはまらないかで評価は違ってくるものじゃないだろうか。北村薫の描く小説世界にいまいち馴染めない自分には、やはり物足りないアンソロジーだった。特に『愛の部屋』は元教師らしいといえばらしい優等生的な作品ばかりで自分には面白味がなかった。でも、昔読んでとても印象深かった『遊びの時間は終わらない』を再読できたことは嬉しかったなあ。つまるところアンソロジーは自分が知らなかった新しい作者や作品を知ることのできる出会いの場であり、もう一度読みたかった作品に再会できる場所でもあるのだ。そういう意味では、アンソロジーを編むことはとても意義のあることだ。

 
  佐久間 素子
  評価:A
   いいなあいいなあ。人がうみだす物語を愛する者はすべて、このギャラリーのとりこになるに違いない。物語との出会いは偶然だ。だから、自分にとっての「名作」に会えたときの読書体験は本当に幸せなものだ。ここにあるのは、その幸せを伝える試み。同好の士への惜しみない耳打ち。そして、何よりも物語への敬意。稀代の読書家のおめがねにかなった数々の名作を語る『本館』と、それを受ける形で編まれた3つのアンソロジイの『部屋』が、『謎のギャラリー』だ。『部屋』にもれた作品も、親切な形で入手方法が書かれており、ギャラリーの外への案内も万全である。文庫化にあたって、新たに25作品が追加されているうえ、テーマにそった『部屋』へと編集変えがされている。そして、北村氏の解説に変えて、北村氏×宮部みゆき氏の対談が収録されているという、単行本も文庫も双方たてたサービスぶり。愛だなあ。

 
  山田 岳
  評価:B-
  <名作博本館>はミステリー文学史(お勉強の時間)。
<謎の部屋>は防犯訓練がおもわぬ事件に発展する「遊びの時間は終わらない」が腹を抱えるほどおかしい。翻訳ものでは「埃だらけの抽斗」。でも、大半が?(よくわからん)。
<こわい部屋>は「四つの文字」。「政治と文学との間には宿命的な背反がある」というならば、いまの東京都知事って何者?<愛の部屋>は「狐になった夫人」。むかしの日本なら<狐に化かされた>話だが、まじめで善良な人が<はまっていく>過程はむしろこわいくらい。各巻末の北村薫と宮部みゆきの対談がおもしろく、ガイドの役割も果たしている。

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