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  大正時代の身の上相談  大正時代の身の上相談
  【ちくま文庫】
  カタログハウス編
  本体 680円
  2002/2
  ISBN-4480037101
 

 
  石崎 由里子
  評価:C
   これを読むと、男女の間の溝は大正も平成もたいして変わっていないような気がする。変わったのは、貞操観念の軟化でしょうか。
 悩むという行為は、内容如何によってははたから見ると結構滑稽。悶えている人々の声が延延と続くなか感心したのは、どつぼにはまっている人ならではの、複雑な心理感情から生み出される言葉。毎度出てくる絵も悶えている感じでいい。
 その相談に対する回答を、頭の冷静な記者様が、ときには先生のように、ときには母のように、時にはいかにも人事のように言い放つのが面白い。

 
  大場 義行
  評価:B
   たぶん、昔の人はこんなんで悩んでますぜ、くくくという本なんだろうけれど、この大正時代の悩みは今のものと全然変わらない。それよりも一番熱いのは記者様のコメント。この本はこの記者様達のコメントを読むだけでも価値がある。小説を読んだ為に異性への憧憬が生まれ、大変な中学生です。うむ、古今英雄の伝記を読みなさい。素晴らしき一刀両断ぶり。相談者をぶった斬っていたり、優しいふりをして馬鹿にしていたり、案外呆れたりしていてほんと楽しいのだ。結局の所、編者のコメントや、みょうちくりんな大正時代の広告も邪魔にしか見えない。

 
  北山 玲子
  評価:B
   基本的に人はあまり成長しないものだということがよーくわかりました。太りすぎて困る、もっと金持ちの男と結婚したい、自分が何に向いているのかわからないなど…、現代人の考えていることと何ら変わりがないのだから。最後まで充分楽しめたけど、回答の後についているコメントは邪魔。悩みの内容は同じとはいえ時代が違うのだからわかりきったツッコミはないほうがよかった。冷水で頭を洗え!…って言われてもねえ…。そんなことくらいですっきりするんだったらたいした悩みじゃないじゃない。でも、ここに登場する回答者は「冷水頭髪友の会」でも設立していたんじゃないか?!というくらいそれを勧めている。あと、身の上相談の歴史みたいなものがちょっとでも書かれていたら面白かったのでは?蛇足だけど。

 
  操上 恭子
  評価:C
   理屈は抜きにして、単純に面白い。昔の人はこんなことを考えていたのだなあとか、あのころはこういう時代だったからなどといろいろ分析をするのもいいのだけれど、まあそういうことは抜きにして、何も考えずにただ面白がって読むのもいいんじゃないかと思う。もともとこういう公共の場に相談を持ちかける人というのは、答を得ることよりも自分の悩みを人に知ってもらうことが目的だと思うのだが、それに生真面目に答える当時の記者の回答と、わざと斜に構えている現在の編集者のコメントの対比が可笑しい。このコメントをつけた人の名前が載っていないのが残念だ。

 
  佐久間 素子
  評価:C
   大正時代の読売新聞から抜粋された身の上相談と、記者による回答に、現代の「案内人」による一言がつく。案内人の一言はうすっぺらくて、あるだけ無駄。いや、むしろ軽薄な印象で無駄よりひどいというべきか。回答者の姿勢が真剣勝負なだけに、その差は歴然。完全に位負けである。何でこんなものくっつけたのか。一次資料の記事自体は、どういう読み方をしても、それなりに面白いのに。社会的に読んでも、文学的に読んでもよし。現代との違いに注目しても、違わなさに注目してもよし。笑いを求めても、怒りを求めてもよし。そして、興味本位で読みはじめても、興味本位以上のものが得られるあたり、意外にも硬派な一冊なのだ。

 
  山田 岳
  評価:B
   東京のラジオは毎日「身の上相談」や「人生相談」を40年前からタイムスリップしてきたかのような音質で放送している。関西もんの評者には驚きであり、謎である。新聞の「身の上相談」ともなるとラジオのうえをいく。大正時代からの歴史があるとは! 「清ク正シキ乙女ノ困惑」など現代では考えられない相談もあるが、「結婚シナイカモシレナイ女ノ問題」など、昔も今もかわらぬ<悩み>がある。難問奇問にびしばしと答える回答者にも興味がわいてくるが、女性記者としかわからないのが惜しまれる。回答に現代の視点からツッコミをいれてくる編者のコメントもたのしい。大正は、明治・昭和にくらべていまいちキャラのはっきりしない時代だが、意外と現代に近いのかもしれない。

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