年別
月別
勝手に目利き
単行本班
文庫本班
     
今月のランキングへ
今月の課題図書へ

商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
 
  私が彼を殺した 私が彼を殺した
  【講談社文庫】
  東野圭吾
  本体 695円
  2002/3
  ISBN-4062733854
 

 
  石崎 由里子
  評価:C
   犯人はラストでも明かされない。だからもう一度、一文一文を読み返して、犯人を推理してから、後ろの袋閉じにされた手引きを読むと、一応そのとおりだったのですが・・・。
 「作者に完敗だ〜っ」とねじ伏せられるような心地よさが感じられなかったのは、濃密な時間が流れる重々しい雰囲気の前半部に比べて、殺人に至る決定打となった要素が、あまりに一瞬で、地味な出来事なので、なんとなく物足りなく思ってしまったからでしょうか。
 本のつくりは面白いです。巻末でヒントを書いてくれているのですが、ついでに本に挟まっているしおりを書店に持っていくと、その後、犯人が逮捕されて掲載された新聞記事の切り抜きをもらえる、なんていうところまで遊んで頂けるとより楽しめたと思います。

 
  内山 沙貴
  評価:D
   誰かが誰かを憎みこの世からいなくなればいいとさえ感じているのに、どの登場人物もクールだった。と思ったら、3人の1人称を繰り返すうちに人間の本性のようなどろりと濁った感情が他の2人により対比されてくっきりと浮いてきた。同じものを見て違うものを網膜に焼き、てんでばらばらな感情を抱く。あとからあとから沸き出てくる印象が、どんどん全体像を変えてゆき、なかなかスリリングであった。私は結局最後まで犯人を突き止めることができなかったがそんなことは構わないと思えるほど話に夢中になれる本だった。

 
  大場 義行
  評価:B
   推理小説は、作家から読者への挑戦状とも受け取れる。でも、だからってここまで完全に挑戦してくるなんて。噂には聞いていたけれど、正直驚きました。探偵役の視点ではなく、複数の視点から事件を眺め、しかもきちんとみな自分がやったみたいな事まで言っている。通常、一カ所くらいは登場人物がウソをついているという事があってもよさそうなのに、作者はそれすらせずに正々堂々と挑戦してきているのがこの本。皆さん、帯にあるとおりペンとメモを持って挑戦受けてたつべし。一応、書いておきますが、自分はこの人が彼を殺したんだと確信しています。

 
  北山 玲子
  評価:C
   前回の『どちらかが彼女を殺した』はけっこう真剣に考えたけど、結局自分の答えが正解なのかどうかもわからず現在に至っている。そして、またも懲りずに本作の犯人捜しに頭を捻る。容疑者は3人。それぞれの章で容疑者たちは一人称で語る。…ってことは、語っていない他の2人の見解を知ることはできないのか。それっていいのか?などとわかったようないないような気分のまま最後まで読んだ。たぶん○○が犯人?袋とじの推理の手引きを読んで「?」となり、最終的には誰が犯人でもいいじゃん。と投げやりな気分になってしまいました。本書は物語に積極的に参加できるのが面白いし、あれこれ想像を巡らせることができて楽しい。けど誰が犯人でも、ものすごく後味の悪いストーリーだ。著者の作品の中でも特に『名探偵の掟』のばかばかしさが大好きな自分としてはこの手のドロドロ感は最もニガテなので、登場人物たちのその後まで考えると気が重い。

 
  操上 恭子
  評価:C+
   この小説の「究極の犯人当て」をするにあたって、絶対に踏まえておかなくてはならない大切な「お約束」を見落とした。しかも、一番重要な最初のキーワードが出てくる一文を、何故かそこだけ読み飛ばしてしまっていた。会話の間に挟まれた、ちょっと冗長な感じの地の文だからだろうか。おかげで、犯人が誰なのか散々悩ませられた。「お約束」の方は何のことはない、帯にも表4解説にもちゃんと書いてある。本を裸にして読む癖があるため気づかなかっただけだ。つまり、容疑者は3人だけ、犯人はこの3人の中にいるということ。この「お約束」を踏まえて、きちんと注意深く読みさえすれば、犯人当てはさほど難しくはないだろう。
探偵役が作中で犯人を明かさず、謎解きを読者(と解説者)というのは、実に斬新で画期的なアイデアだとは思う。だが、せっかく加賀刑事という魅力的な探偵キャラを作ったのだから、最後まで加賀刑事に解決してもらいたかったと思う。袋綴じの中でもいいから。

 
  佐久間 素子
  評価:C
   「読者への挑戦」をしたっきりで、犯人が明かされない推理小説だという予備知識がなかったら、怒り狂っていたに違いない。知っていてもやっぱりラストの一文「犯人はあなたです」に、心中大暴れだ。クライマックスは、被害者の婚約者と、刑事、そして3人の容疑者で繰り広げられる古典的な謎解き。犯行の可能性が順々に並べられ、否定され、じゃあ犯人は誰なんよ!ともりあがってきたときに、刑事から提示される最後の証拠と、件の一言。パズルとしてもドラマとしてもうまいと思うが。パズルのためのドラマだって百歩譲って認めるが。それでも、こんなスタイル、絶対認めたくない。ちなみに、懇切丁寧な袋とじ解説のおかげで、真相にはたどりつけるので、ご安心を。

 
  山田 岳
  評価:B
   むむむ。ひさびさに謎ときに挑戦して読んだが、わからん。これの答えは!? 謎ときはどうしてくれるんだぁぁぁ。書評家がどんなに事細かにあらすじを紹介してもネタバレにならない斬新なスタイル。なのに解説が袋とじとは。謎が謎を呼ぶ、この本自体がミステリー。読んでいて、俳優、宅間伸の顔がちらついてしかたがないのだけど、これってテレビ化されました?

戻る