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  古本屋おやじ 古本屋おやじ
  【ちくま文庫】
  中山信如
  本体 780円
  2002/2
  ISBN-4480037136
 

 
  石崎 由里子
  評価:C
   作者の印象は照れ屋、皮肉屋、言葉巧みな人。素敵な人なのでしょうけれど、この古本屋さんに本を持ち込むのはちょっとこわいです。
 本を見ぬうちに、お客さんの顔を見ただけで断り、その理由が「顔はその人の身につけた文化の反映だ。バカヅラしてるやつは、バカな本しか読んでいない」という一文を読むとどうも・・・。興味があるのは映画関連のソフトの部分であって、本はあくまでもツールと考えているのでしょうか。
 古本屋さんならせめて「バカヅラしているけれど、いい本読んでるじゃないか」という視点で、人と本を見て欲しいのですが・・・。

 
  大場 義行
  評価:B
   こだわりの映画書専門古本屋稲垣書店。ここのご主人は出久根さんと違って、商売の事をごりごり書いている所が新鮮。口調は伝法で、ある意味客に啖呵切っている、そんな本だった。古本屋系のものは、たいてい蘊蓄を楽しむ事が多いのだけれども、通販用の記事でえらく疲れたやら、入札失敗で愚痴ったり、目録つくってどのくらい売れたとか、ある意味古本屋を疑似体験!という感じなのが楽しい。でもやっぱり古本屋の頑固オヤジって感じが異様に出ているという点が、一番この本の魅力かもしれない。

 
  北山 玲子
  評価:A
   店頭には日に焼けてしまった均一本がダンボールに無造作に積んである。店に入ると一癖ありそうなおやじが上目遣いでちらっとこちらを見る。埃をかぶった棚にしーんと収まっている本たち。そんな町に一軒はありそうな小さな古本屋の匂いがこのエッセイに凝縮されている。何よりも著者が見栄を張ることなく正直に日常を書いているのがいい。小さな店を経営していくことの厳しさが語られる反面、お店にくる不思議な常連さんや店番をするなんともかわいいおばさんの笑える話もある。ハーレクインばかりを売りに来た奥さんを店番していたおばさんがたしなめるという話が出てくるけど、実は私も以前古本屋でバイトしたことがあって、紙袋2つにぎっしりハーレクインを定期的に売りに来ていたおばさんがいた。彼女は売ったお金でまたハーレクインを買っていった。頭から足先までロマンスでいっぱいになってるんじゃないかとちょっと心配したけど、大きなお世話か。

 
  操上 恭子
  評価:B
   古本屋店主のエッセイというと、どうしても出久根達郎を最初に思い浮かべてしまうのだが、この『古本屋おやじ』は大分趣が違う。出久根作品では、古本は単なる道具立てに過ぎず、書かれている内容はあくまでも人間ドラマだ。だが、中山信如は、ほとんどの作品で古本屋稼業そのものを描いている。人間が嫌いで、「自分の嫌いな人間が買いに来るような本を置かない」店づくりをしている(「私はなぜ、エロ本を置かないか」より)というのだから、それも当然かも知れない。
特に面白いのが第4部の古本屋日記シリーズで、古書店のしくみや仕事の内容、売上金額まで詳しく書いてあり、なるほどこうなっていたのかと興味深い。日付が新しくなるほど、文章が読みやすく、それでいて味わいのあるものになっているのが嬉しい。

 
  佐久間 素子
  評価:E
   何だ、おやじの作文じゃん。で、終わらせちゃいたいところだな。とにかく気に障る文章で参った。客に対するこだわりは傲慢にしか見えないし、偽悪ならぬ偽ダメっぷりもわざとらしい。家族は戯画化し、俗なる人には吠え、妙齢の若い女性には鼻をのばす・・・っていつの時代だよ、もう頼むよ、トホホなユーモアセンスにも閉口。肝心の中身にもう少し興味がもてればよかったのだけれど、それもかなわなかったし。金銭問題や怒りやぼやきだけではなくて、やはり聞きたい、本への愛、本と人が出会う喜び。比べるのも無理があるけれど、ちょうど同じ時期に読んでいた安藤哲也氏の『本屋はサイコー!』は夢がある分、ずっと楽しかったのである。

 
  山田 岳
  評価:B
   坪内祐三、目黒考二にも通じるほのぼの日記がいい。ちらりと毒をまぶしてみせるところなど、本の雑誌愛読者にはたまらんだろう。
「インテリたちは金儲けがヘタ、だから思うように本も買えない」まったくもって仰せのとおり。
「カミさんもらうなら、美人よりも稼ぎのいい人」肝に銘じておきます。

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