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  死の教訓 死の教訓
  【講談社文庫】
  ジェフリー・ディーヴァー
  本体 各667円
  2002/3
  ISBN-4062734001
  ISBN-4062734206
 

 
  大場 義行
  評価:C
   ディーヴァーの初期の頃だそうだが、確かに仕掛けがいまいちぱっとしないし、犯人もそれほど魅力的ではない。犯人なんて上巻ではほとんど脅迫しているだけだし、後半になって暴れはするが、そんなに凄味が無い。主人公も地味目の保安官で、特殊技能もない。ただ、この本は苦い。犯人に脅されているにしては主人公の奥さんの主観が多く、これは関係ないだろという場面も多々ある。と思わせておいてあのラスト。うーんこちらに仕掛けがあったのか。やるなあ。とラストで苦い思いをして下さい。おお、ディーヴァーの最初の頃のものなのか。ふむふむ、なんかあれと同じっぽいなあ、じゃあ犯人はやはりこいつか! なんて穿った読み方はいけません。

 
  北山 玲子
  評価:C
   のどかな田舎町で起きた女子大生殺人事件。殺された学生はとても魅力的だった。彼女にかかわるいかにも怪しげな教授や助手が登場し、保安官事務所はなかなか捜査の糸口を見つけることができずにいらいらするばかり。そして次の犠牲者が。町は更なる恐怖に包まれる!はずなのに…なんだか町全体の緊張感とか住民たちの恐怖感が伝わってこないのは何故?もちろんいつものディーヴァー作品らしく最後まで読ませるんです。だからこっちもグワーっと一気に読んだけど、冷静に考えるとやはり主人公・ビルの家庭に焦点を当てているとしか思えない。事件よりも、がんばれお父さん!とでも言いたくなるような話だ。仕事と家庭の狭間でもがくおやじのツライ気持ちがひしひしと伝わってくる。こんな読み方は間違っているのかもしれないけど犯人の存在感は薄いし、ビルの家庭に犯人が興味を抱くその理由づけがいまいち弱い。サスペンスというよりは、壊れかけている家族をぎりぎりのところで支えようとしている男の苦い気持ちに目線がいってしまう。

 
  佐久間 素子
  評価:C
   リンカーン・ライムシリーズが好きなので、いささか期待しすぎてしまった。ライムシリーズ以前に書かれた本書は、やはりちょっと若書きかな、という感じ。殺人の動機、被害者の人物像が弱く消化不良気味だし、主人公と警察官希望の警備員のからみだとか、いじったらもっと面白くなりそうな所も多い。うーん、贅沢かなあ。確かにじっくりと明らかにされていく人間関係は謎に満ち、読むのを止められないし、学習障害児の娘セアラにしのびよる不気味な魔法使いも、特定された犯人が本当は誰なのかという謎もぞくぞくする怖さなのだから。ディーヴァーお得意のどんでん返しも、小さいながらしかけてあるので、期待してほしい。

 
  山田 岳
  評価:B
   捜査に命をかける保安官助手のかかえる家族(とりわけ息子)との葛藤、とくれば茶木さんの涙にむせる解説・・・かと思ったら、香山さんでした(笑)テンポのよい話はこび、容疑者が次々と消されていくとんでもない展開。なのに上巻の途中まで読んだ翌日、つづきを読むつもりでまちがえて下巻の途中から読み出したら、話がなんの違和感もなくつながってしまった。気がついたのは50ページも読んでしまってから(汗)。なんで?

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