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  東京アンダーワールド 東京アンダーワールド
  【角川文庫】
  ロバート・ホワイティング
  本体 838円
  2002/4
  ISBN-404247103X
 

 
  石崎 由里子
  評価:A
   歴史上のあの事件、あのとき裏で何が起きていたのか。
 第二次大戦後、闇市で荒稼ぎをして得た財を元手にある男がオープンしたピザレストラン<ニコラス>。この店に美味しいピザを求めて集まってくる諜報員や政治家、やくざに芸能人、プロレスラーなど、政界の人から業界の人までがどこからともなく集まってくる。
 六本木なんて1度しか行ったことがないし、行きたいとも思わない。裏社会に興味のない私ですが、そういう人でも面白く読むことができるのは、その店に集まってきた人たちが、実際に裏や表を出入りしながら、歴史的瞬間に関わっていたからであろう。
 まだ、書いていないことがありそうな、もっと知りたいような余韻がある作品だ。

 
  大場 義行
  評価:A
   巻末の120ページにも渡る謝辞、ノート、解説、参考文献に圧倒されよ。スゴイ本としか言いようがない。元々ニコラさんという不良外国人のインタビューだったのかもしれないが、それが戦後の東京の裏を描いているというとんでもないノンフィクション。政治からヤクザからプロレスから幅広すぎ。角栄、浜幸、力道山なんでもござれだ、もうこうなったら。東京の歴史でもあり、復興の記録でもあり、暗闘の傷跡でもあるこの本、読み出したら止まらないし、興味深い話も出てくる。自分のような若造で、なにも東京の歴史を知らないものにとって、この歴史の授業で教えてくれない話はたまらないものがある。

 
  北山 玲子
  評価:A
   イタリア系アメリカ人ニコラ・ザペッティの目を通して描かれるのは、戦後どんどん変貌していった日本の闇の世界で怪しげに蠢く人々。日本人が自分達の力で築き上げていった社会は当然の事ながら失うものもたくさんあったのだと実感。何よりも印象的なのは任侠の世界から、経済紙などを読み漁る世界へと変貌していくヤクザの風貌と精神の変化だ。彼らと多少なりとも係わりのあったニコラは昔のような任侠の精神がなくなった事に失望し、豊かになった日本に居心地の悪さを感じる。その居心地の悪さの理由が本書を読むとよくわかる。晩年のニコラが札幌駅のホームで日本人のじいさんと取っ組み合いの喧嘩をしたというエピソードが出てくるが大笑いした後で妙に物悲しい気持ちになった。とても学校の教科書には書けないことばかりではあるが、ある意味教科書よりずっと日本の戦後の姿が浮き彫りにされている。巻末の参考文献を全て読みたくなるくらいはまった。また、アカデミー賞のスピーチ並みの長い謝辞も読み応えあるぞ。

 
  山田 岳
  評価:A
   待望の文庫化。採点員をやっていてよかった(笑)
焼け跡の六本木で本格ピザ店をひらいたアメリカ人から見た戦後日本史。プロレスの力道山がやくざそのもので晩年はほとんど<壊れていた>ことから、田中角栄を失脚させたロッキード事件の舞台裏まで、日本人ジャーナリストのだれも書きえなかったスキャンダルが次々と暴露されている。著者がいまも生きていられるのは関係者のほとんどが死んでしまったからだろう。これを読んだあとも、<六本木はインターナショナルでオシャレな街>と無邪気に言えますか?

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