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  開港ゲーム 開港ゲーム
  【小学館文庫】
  三宅孝太郎
  本体 800円
  2002/5
  ISBN-4094100105
 

 
  内山 沙貴
  評価:D
   見知らぬ大国に囲まれて、我を失う愚か者。明治初期の横浜、外来が小川のように流れ込む異郷の地で、外国との息も詰まるような際どい接触が繰り広げられる。その最前線の中にいる人々のお話である。いくつかの大きな事件が筋のある一つのものとなり、最後に種明かしがある。だだっ広い大海原のようにただどこまでも続く平坦な視界。構成は壮大で勇ましいライオンのようなのに、話の起伏が少なくてスリルが足りない。登場人物も個性的なのに、描かれた人物は個性を感じさせない。構成だけが走れ走れの掛け声でひっぱって、でもその構成が素敵でなかなか目が離せなかった。話の先がどうしても気になる物語だった。

 
  大場 義行
  評価:C
   実際に横浜で起きたマリア・ルス事件。それを力業で読み物へもっていたった作品だった気がする。横浜県令大江卓、陸奥宗光、岩倉具視、ヘボン式のヘボン先生なども登場。しかし、ちょっと事実への寄りつきが強引すぎて、薄く広くだった気がしてならない。明治五年に横浜で発生した人権や日本の主権問題などは判りやすかったが、肝心の物語がさっぱり頭に残らない。元々そちらを主眼としたものだろうから、いいのかな。

 
  北山 玲子
  評価:D
   私は本書を、新時代到来に向けて様々な希望を抱く青年大江卓の青春物語として読んだ。マリア・ルス号事件で、裁判慣れした西洋人に真っ向から立ち向かう神奈川県令としての大江の姿はかっこいいのだ。自分の信じる事に対し決して曖昧な態度をとらず妥協しないところがいい。一方、大江に比べて主人公の新聞記者・安藤章一郎は、いまいち魅力的ではなかったな。ハーフで女性にもてるというのはどうなんだろう。パターン過ぎやしないだろうか。登場する重要な西洋人の印象も弱かったのも残念。開国直後の日本と西洋の混沌とした雰囲気を、史実とフィクションを融合させた構成で面白く読ませようとする作者の心意気はものすごく感じられる。けど、その時代のシステムなど資料的な説明部分に比べて、会話文が軽くて現代調だからなのかなんだか明治時代という感じがしない。別に時代がかった文章がいいというわけではないがそこらへんが妙に気になったのも事実だ。

 
  山田 岳
  評価:B
   明治維新直後の横浜。中国人苦力(クーリー)を載せたペルー船の入港からはじまる英米の確執とそれにまきこまれる日本人たち。緊迫感のある素材の割には、なんだか間の抜けたテンポで、読者としてはどこへむかってテンションを高めていったらいいのか戸惑う。サスペンスと言うよりは<読み物>なのだろう。だらだらと読みつづけるのには適切な1冊。人物描写はすばらしい

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