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  アトランティスのこころ アトランティスのこころ
  【新潮文庫】
  スティーヴン・キング
  本体(上)781円/(下) 819円
  2002/5
  ISBN-4102193251
  ISBN-410219326X
 

 
  石崎 由里子
  評価:C
   スティーブン・キングだからしょうがないのですが「不思議な力」系の話が苦手だ。
 老人との心のふれあいや、少年と少女の初恋のストーリーは美しく泣かせてくれるシーンもあるのですが、なんというかあれもこれも、とエピソードが多く取り込みすぎている気がする。
 あと、通り過ぎた日々は二度と戻ってくることがない、というテーマも、出尽くしているのでスティーブン・キングだから許されるのかもしれないけれど、むつかしい気がした。

 
  内山 沙貴
  評価:B
   これはすばらしいお話、そうとわかるのになんだか切なすぎて眉をひそめ胸をつかむ。自転車が欲しくてお金を貯めるボビー、ケチと欺瞞に固められたお母さんをもつボビー、そして今まで嘘をついたことのなかった、とっても幼い時代。純粋なボビーはテッドとの出会いによって不思議を世界に散りばめてゆく。もう二度と戻れない時代、テッドは去る、ボビーに傷のような思い出を刻んで。君と出会えてよかったなんて、口が裂けても云えない、だけれど時は非可逆的なモノ、胸に刻まれた言葉や思いを書き換えることはできない。そして、すべては次の時代の下地になる。現実は切ない。切なすぎてやっていられない。この登場人物すべてに対して、そう感じた。本当に切ない物語だった。

 
  大場 義行
  評価:C
   この本は、というかキングは感動させようとしている。と、同時に自分の書きたいものを全部突っ込んでしまった。そんな感じがした。最初の少年を描いた話、大学生の話、変な男の話。そして最後。主人公を据えるというものではなく、前の章に出てきた誰かが登場しているというだけの繋がりで5章分。各章全然違うような話で、それでいてキングが書きたかったネタなんだろうなと思わせるものばかり。恐らく自分の少年時代や青年時代を投影していたり、生きた時代を描いたりとキングの総まとめ的な一冊だったのでは。引退を意識したキングが、まとめにはいってきたな、そんな感じの本だったと思う。関係ないけど映画はよけいな肉がないぶん、かえって泣きそうな気もする。

 
  北山 玲子
  評価:A
   欲しかった自転車、グローブ、ドキドキしながら読んだ『蝿の王』。これらのアイテムだけでもう、涙腺スイッチがONになった。更に老人・テッドの言葉ひとつひとつが追い討ちをかけるようにググッとくる。最初の『黄色いコートの下衆男たち』の中で交わされる『蝿の王』の結末についてのボビーとテッドのやりとりが妙に印象深い。<ハッピーエンドで終わるのか悲しい結末を迎えるのか?><誰が大人を救出するのか?>ボビーと友達のキャロル、サリー・ジョンのその後の人生を読んでいる間ずっとそれらの言葉が頭の中にあった。子供の頃のなんていうことのない風景、それに付随する様々な感情。大人になっても時折ふっと蘇る特別な想い。もう二度と戻らない子供時代に対する切なさや懐かしさ、そんな心情がキングらしいテイストで綴られていく。11歳の夏かぁ…。その頃私が何度も読み返した本は『吉四六さんのとんち話』だったな。『蝿の王』とはえらい違いだ。

 
  佐久間 素子
  評価:A
   大好きな『スタンド・バイ・ミー』より、よかった。びっくりした。これはもしかして・・・と期待して映画まで見てしまったが、さわやかにまとめられてしまっていて、こちらはいまいち。暗さも重さもともに抱える原作のが格段にいい。読むべし。変わった形の連作集で、上巻はまるまる11才のボビーにおこった夏のできごとに費やされる。下巻の半分以上は、ボビーのガールフレンドだったキャロルと大学で出会ったピートの話。そして、ベトナム戦争を経て、大人になったいじめっこの話があり、ボビーの親友の話があり、またボビーにバトンがわたる。未来には無限の可能性があり、希望にみちあふれている。自分なんて卑小な存在でしかないと気づく絶望がある。若さ故の馬鹿さがある。若さ故の気高さがある。光があり、闇がある。愛があり、憎悪がある。これは、そうしたすべてを飲み込みつくす時間についての物語だ。だからこそ、全てが過去になったとき現れる「魔法」の美しさに胸がしめつけられるのだろう。

 
  山田 岳
  評価:B
   先日、図書館の本を返却しなかった男性が警察につかまった記事が新聞に出ていた。アメリカには本当に図書館警察があるのか!?とおもったら、滞納金の不払いが逮捕の理由。アメリカでは公立の図書館で本を借りるのにもお金がいる、という話はこの本にも出てきます。ホラーの『図書館警察』から、胸キュンの『スタンド・バイ・ミー』まで書いてしまうスティーヴン・キングの頭のなかはどうなっているのだろう。本作は少年小説からはいって、とんでもないところまで読者をつれていってくれます。

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