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  囁く谺 囁く谺
  【創元推理文庫】
  ミネット・ウォルターズ
  本体 1100円
  2002/4
  ISBN-4488187056
 

 
  大場 義行
  評価:D
   回りくどい。他人の家のガレージで餓死した浮浪者を調べる記者マイケル・ディーコン。謎の失踪をとげた二人の男の記事を挟みながら、謎を追うわけなのだが、とにかく回りくどい。餓死した男の仲の良かった浮浪少年、写真のエキスパートで童貞の同僚、おしゃべりな老弁護士。餓死した浮浪者を含めてみんな人生哲学をぶつ。謎に関係するものから、あまり関係のないものまで様々な回り道をし続けるこの本。回りくどいので読んでいて疲れてしまった。よけいなものが多すぎると思うのだが。

 
  北山 玲子
  評価:A
   ある家のガレージで餓死していたホームレス。彼の死の謎と正体を巡って展開するストーリーはずしりと読み応えがある。そしてストーリーも然ることながら本書の魅力はなんといっても登場人物にある。個性的な面々が、どちらかというと地味なストーリーに彩りを与える。それぞれ様々な事情と孤独な気持ちを抱えた人々が事件解決のために主人公マイケルのもとに集う。ホームレスの少年・テリー。老いた弁護士ローレンス、マイケルの同僚バリー。一時でも彼らが家族のような関係に見えてくる。とくにテリー少年の存在は重要だ。したたかで物事をはっきり言う彼の性格は窓のような存在。重いテーマに一瞬でもさわやかな風を送ってくれる。ただしアップテンポでサクサク読めるタイプの作品ではない。特に事件に関係のある人物相関図は頭の中できちんと整理したほうがいいかも。

 
  操上 恭子
  評価:B-
   「高級住宅街のガレージでホームレスが餓死」という発端はとてもキャッチーで興味をひかれる。だが話は複雑だ。言及される過去のいくつかの失踪事件のうち、誰がどこに関係しているのか。時間の流れはどう繋がっているのか。ちょっと油断すると訳がわからなくなる。複雑なパズルのようだ。主人公マイケルを始め、彼をとりまくバリー、テリー、ローレンスといった登場人物たちは皆弱くて、それぞれに問題を抱えている。そんな彼らが関係性を作り上げていく過程は興味深く、それがいかにもイギリス的な、ロンドン的な混沌の中へ収斂していく様は、それだけで充分物語になる。そんな生きている登場人物たちと、過去の謎の中のパズルのピースでしかなくなった登場人物たちの対比が鮮やかで面白い。

 
  佐久間 素子
  評価:B
   食料のある家のガレージで餓死した浮浪者「ビリー」。浮浪者は誰なのか、何故この家を選んだのか、何故餓死なのか。過去に起こった失踪事件との関わりが浮上するも、さらに謎はもつれてしまう。実に読みごたえがある。正直、筋を追うのに必死だったが、脇役にいたるまで人物がくっきりしているため、物語が複雑な割には読みづらくはない。とりわけ、ホームレスの少年テリーの存在がうまく利いている。混沌とした世界にずかずかはいりこんでくる、饒舌で賢い少年はかわいいったらない。テリーが導いてくれなかったら、最後まで読みきれたかどうか。テリーといつも共に在るのに、ビリーのことは皆目わからない。ラスト、その真実は想像を越える。

 
  山田 岳
  評価:C
   主人公である雑誌ライターの傍若無人な取材ぶりに同業者として絶句。その主人公が母親や死んだ父親との間に葛藤を抱えていて、ホームレスの少年に父親のような暖かさを見せる。となれば、これは茶木さんの出番だ(自分でも飽きてきたVSOP(^-^;))読んでも読んでも話は横道にそれるばかりで、謎ときにつながる手がかりが見えてこない、って状況に耐えられる方におすすめします。

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