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  ミスターX ミスターX
  【創元推理文庫】
  ピーター・ストラウブ
  (上)本体 960円
  (下)本体 940円
  2002/5
  ISBN-4488593011
  ISBN-448859302X
 

 
  内山 沙貴
  評価:C
   なんだか消化不良に陥りそうな前半部分で「ラヴクラフト」…それはまずいでしょう。と、一見無秩序で読解困難なこの本を選んだことを後悔した。ラヴクラフトなんてよくない、三島由紀夫を読む8歳児ぐらい非健康的である。(笑)しかし上巻の3分の2あたりから、吸い込まれるように先が気になりだした。役者が揃って物語が進み出すと、突然話がきれいなカラスのように整合されてゆき、ヘドロの心が糾弾されていく。あとは滑るように主人公たちと駆け抜ければよかった。幻想文学賞をとるだけある、存在意義喪失気味で、話がぴょんぴょん跳ねるようなおもしろい作品であった。

 
  大場 義行
  評価:C
   ミステリなのか、それとも怪奇小説になるのか? どう進んでいくのか全く見えないという手探り状態で始まるこの本、正直途中ギブアップの人もいるのではないだろうか。この本はミスターX側の視点と、主人公ぼくの二つの視点から構成されている。しかし、このミスターX側がくせもの。とびきりと言って良いほどイカレている文章なのだ。「嗚呼、旧支配者よ」なんて書き出しなのだから。これクトゥルー神話系の属する物語を知らないと、いきなりここでつまずく恐れあり。知っていてもついていくのに一苦労という怪作だった。この本、正直怪奇小説好きにはオススメしても、普通の人には決してお勧めする事ができません。

 
  北山 玲子
  評価:C
   自分探しの旅。ってこうして今その言葉を書いているだけでジンマシンが出そうになるくらい大嫌いな言葉だけど、結局、この物語はそういう話です。でも、ピーター・ストラウブの語る自分探しの旅は、仕掛けと謎が入り組んで一筋縄ではいかないぞ。母の危篤で帰郷したネッドの前に現れた自分そっくりのロバートという男、誕生日ごとに見る悪夢に現れる謎の男・ミスターX。自分の出生の秘密を探るネッドの周りにはびこる怪しげな影。先へ進むほどに謎が増えて、迷い込んでしまう。要チェックはダンスタン家の3人の叔母さんたち。キュートで怪しくて俗っぽいところがいい。で、話はラブクラフトの作品世界がベースにある物語だからちょっと自分にはとっつきにくかった。ラブクラフトといったら諸星大二郎描くクトゥルーちゃんとかその程度の知識だもの(←どんな知識だよ)。それにしても登場人物表に40人って圧巻だな。くれぐれもそれだけでうんざりしないように。

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