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(上)
(下)
晴子情歌
【新潮社】
高村薫
本体(各)1,800円
2002/5
ISBN-4103784024(上)
ISBN-4103784032(下)
石井 英和
評価:C
むしろ「薫情歌」と題すべきだろう。目につくのが、大量に挿入される作中人物の母親が書いたという設定の「手紙」である。それは詳細を極めた書き込みの、長大な、もう一本の小説とでも呼びたいもの。こんな手紙がありうるとは思えず。にもかかわらずそれを「手紙」であると押し切ってしまうあたりで、すでに現実離れをした小説だ。ここで著者は、これまでに出会った、自身の「思い入れ」の対象となる事物を総動員し、力業でそれらを一本の小説にまとめあげるという作業を行った。結果、たとえ北の海の漁場を描いてもそれは著者の思い入れ一色に染められたジオラマのようであり、登場人物は皆、著者の顔をしている、そんな小説が出来上がった。突出する著者の濃厚なエゴに、書き上げられるべき小説そのものが押し潰されてしまった、そんな感じだ。
今井 義男
評価:AAA
晴子の歩んだ時代、人は波間に漂う小舟のように行き着く当てもなく、ただ身を任せていたかのように思える。が、個を歯牙にもかけなかった往時の趨勢から少し視線を下げれば、懸命に流れをかいくぐる石くれや、澱みで息を潜める枯れ枝が垣間見える。晴子が息子の彰之に一切の過去を包み隠さず語るとき、私がふと思うのは、彰之を許せない姉・美奈子には彼女に見合った晴子の人生がおそらくあったであろうということだ。人と人の繋がりはややもすれば紙縒りのように心細くはかなげだが、共に生きた証は残る。請われて初めて《青い庭》に晴子を描き加えた夫・淳三と、息子に手紙を書き続ける晴子の間にも微かながらそれはある。家を捨て自己の痕跡を含めたそれらすべてを嫌悪せずにおれない彰之の孤影はひときわ痛切だ。今度こそほんとうに行き場のなくなった平成の世に相応しい必読の母子文学。
阪本 直子
評価:AAA
高村薫と北村薫は似ている。名前が、という話ではない。作者の性別が作品世界に過剰な影響を及ぼしていないこと。この作者にとって自分の読者は紛れもなく「読者」であり、「ユーザー」などでは決してないということ。そして、一つの殺人も起こらない物語を書いてさえ、それは確かにミステリなのだということも。
大正2年の東京から昭和50年の青森まで、市井の暮らしと社会の変化を克明に描き出す、端整で精緻で重厚な長編。読みながら私は何度も向田邦子や早坂暁のドラマを思い出したりしたけれど、この本の頁を先へ繰らせる興趣は、それらの物語が持っていた「古い日本への郷愁」などとは決定的に違う。何十年という家族の歴史の中のあれやこれやの事件や秘密だ。それが薄紙を剥ぐように一つずつ現れてくるのを固唾を飲んで見守る緊張感だ。
北村薫の『六の宮の姫君』がミステリであるように、この小説もまたミステリである。それも、優れたミステリだ。
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