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イン・ザ・プール
【文藝春秋】
奥田英朗
本体 1,238円
2002/5
ISBN-416320900X
石井 英和
評価:A
わははははははははははははとこのまま終わってしまったら、書評としてはやはりまずいだろうな。とにかく我等がカルト・ヒ-ロ-、伊良部医師の誕生を祝したい。いや、実に痛快な作品が現れたものだ。「今という時を軽々と飛翔している」筈の連中の実は病んだ魂のジャングルを黒い哄笑をまき散らしつつぶった切るこの作品、著者の現代社会への情け容赦もない風刺、というよりは無差別の嘲弄の嵐が読者に何故か爽快なカタルシスをもたらしてくれる。なにより主演の精神科医、伊良部のキャラが素晴らしい。歪んだ本能の命ずるままにやりたい放題、自分勝手に無責任に物語を闊歩する不細工なオタク系マザコン中年。彼には今日、ブザマなものとして嘲り捨てられている者たちの怨念の集積が実体化して動きだしたかのような趣もあり、この作品、ある種の復讐譚とも捉えうるかも。
今井 義男
評価:AA
いかれた病院長が看護人と患者を入れ代える、ポーの『タール博士とフェザー教授の療法』は笑えなかったが着想は買える。ドリフのコントに<もしも●●な●●があったら>というシリーズがある。こちらは毎回腹を抱えて笑った。そのコンセプトを精神科医に当てはめたのがこの『イン・ザ・プール』である。他人事でない病状も多々あり、面白がってる場合ではないが、面白いんだから仕方がない。春日武彦の著書によると、正常と異常の境界はくっきりした線ではなくて、幅の広いグラデーション状態らしい。誰がいつ横滑りしてもなんの不思議もないのだ。隠さず目をそらさず普通に病気の話ができる世の中のほうがいいに決まっているのだから、タブーは笑い飛ばすに限る。少々口に苦くても、である。
唐木 幸子
評価:A
奥田英朗という作家の技術と才能が光輝くような1冊である。昨年の新刊本『邪魔』で出会ってAをつけた私だが、本書も、一体この人、何者だ、というくらい独創的な面白本だった。水泳や携帯電話や勃起(!)など、何かに取り憑かれた患者たちが伊良部一郎というどう見てもヤブ医者の神経科医を訪れる。しかし伊良部はあくまでも助演で主人公は患者たちだ。これが著者の実体験ではないかと思うくらいリアル。勃起はともかく、ケータイ中毒の男子高校生の描かれようは、そのせつなく卑屈な心中が思いやられて涙しそうになるくらい可哀想だ。私ももう少しで電子メールでこういう状態になりかけたことがあるからよくわかるのである。5分おきに繋いだりしたことのある人は結構、多いんではないだろうか。今思うとあれは病気だった。案外、神経を半分くらい病んだ状態の人間、自分が病み始めたことを自覚して病院を訪れるような患者には、親身に話を聞こうとするお定まりの医師よりも、伊良部みたいに鼻くそほじりながら、いいじゃん別に実害ないんだから、僕もやりたい、教えて、と言ってくれる方が効くのかもなあ。
阪本 直子
評価:B
変で面白い奴が出てくる小説は面白い。が、滅多に読むことができない。変で面白い奴というのは、実は結構難しいのだ。変で面白い、だけで止めておけばいいものを、自由な魂を持たせようとか社会を映す鏡にしようとか、作者が余計な色気を出したばっかりに、鼻持ちならない自意識過剰に堕してしまう。そんな例が多過ぎる。
で、この小説。帯を見ると「トンデモ精神科医」とか書いてある。ちょっと心配しながら読み始めたんですが……おお、この医者はほんとに変だ。しかも面白い。いかにも現代の都会ならではの悩みを抱える患者達は、彼に振り回され呆れ果て、しかし気がついたらちょっぴり自由な魂を感じちゃったりもしてるのだが、それはあくまで患者達の側のこと。このデブ医者当人は、多分なーんにも考えてない。だから嫌味も臭味もないのだ。
青年誌コミックの面白い奴みたいな読後感です。『ギャラリー・フェイク』とかね。
谷家 幸子
評価:A
ほんとに懐の深い人だ、奥田英朗って。前作「邪魔」の面影はどこにも見当たらないこの作品、肩の力の抜け具合がめちゃくちゃ心地良い。装丁もやたらとカッコ良いが、スカシ過ぎの嫌味さはなく、センスのよさを窺わせる。
変わり者の精神科医伊良部と、そこに訪れる様々な症状に悩まされる患者たちを描いた連作短編集。誰の心の中にもある不安を、絶妙な按配ですくいあげて描き出した個々の症状の描写が見事だ。どの症状にも、ものすこく感情移入してしまう。特に、ケータイ中毒の男子高校生・雄太を描いた「フレンズ」。現象として表面にあるのは「ケータイ中毒」かもしれないが、核になっているのは、普遍的な感情だ。人との関係性でしか自分を確認できない、若気の至りの焦燥感。そのいたたまれないような感覚は、大人になっても完全に無縁ではいられないだけに、非常に身につまされる。
とはいえ、重くなりすぎることはなく、伊良部の底抜けの変人ぶりに笑えること請け合いだ。シリーズ化を切に希望。
中川 大一
評価:A
本書は、自我が流出しいまだ個の確立をみない母性社会日本の病理((C)河合隼雄)を、エンターテインメントの糖衣にくるんで鋭く衝く類い希な傑作である……はずは、ないか。やっぱね。ちょっとそんな感じもあるけどね。正しくはやはり純ギャグ系でしょう。作中人物は、主人公であるトンデモ精神科医の伊良部に対して、「馬鹿と変人は癒し効果でもあるのだろうか」とつぶやく。癒されるかどうかは知らないが、笑えることは確か。私は、2001年5月の課題図書『邪魔』の評文で、奥田英朗の技術には舌を巻きつつ「それにしても、この作者が前向きの話しを書いてくれたら」と嘆いておいた。今回はその希望が満たされた格好で、満足満足。こんなビョーキ小説にAをつけるなんて、ちょっと恥ずかしいけど。
仲田 卓央
評価:C
本当は、「本作に登場する患者たちの風変わりなことといったら、それはもう尋常ではない」とかなんとか書きたいところである。しかしここに描かれている患者、そんなに「変わっている」とはどうしても思えないのだ。それは主人公の精神科医(マザコンで注射フェチ)にしても、看護婦(露出狂)にしてもそう。「ああ、こういう人いるだろうな」ぐらいの感じ。こういう人、自分の周りにもいっぱいいるし。ではこの作家は変わったもの、そしてその実、あんまり変わっていないものを羅列することでなにを示そうとしたのか、ということが問題になる。危険はあなたのすぐ傍に、とでも言いたいのか。それとも、自分は「マトモ」でよかったとでも思えというのか。まあ、この作品はちょっとした笑い話で、そこに意味を求めるのも野暮なのだが、それにしてもなんとなく腹立たしい。
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