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  ジャックと離婚  ジャックと離婚
  【創元コンテンポラリ】
  コリン・ベイトマン
  本体 900円
  2002/7
  ISBN-448880201X
 

 
  大場 義行
  評価:C
   文体や主人公の資質によって、ほんとに物語は変わるのだと実感しました。普通これだけ死屍累々となれば、どこぞのパルプ・ノワールシリーズに入ってもおかしくないのでは。どんどんと主人公が追いつめられたりする所なんか読むと、どう考えてもそう。でも、ぜんぜん軽く読めるのがこの本。まず「ジャックと離婚」ってダイングメッセージがふざけてる。わけがわからない。それと、主人公がふざけすぎ。いつでも真面目に話しているのか、悪態をついているのか、冗談をいっているのかわからない。この、ふざけている設定群がこの本を明るい死屍累々本にしているのでは。いやあ、結局はありがちなパターンの本ではあったが、軽く読むには最適な本だったのではなかろうか。

 
  北山 玲子
  評価:B
   それで結局、なにがどうなったんだっけ?あ、そうそう新聞記者・ダンが浮気してその相手の女子大生が殺されて「ジャックと離婚…」という言葉を残して息絶えるんだよね。で、その最後の言葉の意味なんだけど、途中からそんなのどうでもよくなっちゃうほど出てくる人たちみんなおかしくて、ただただそこだけに没頭して読んでしまいました。舞台はベルファストの街。もっと緊張感のある街というイメージがあったのだが、意外と能天気さんばかり。ダンの妻・パトリシア、謎の修道女・リーと特に女性キャラが魅力的。中でも気風がいいタクシードライバーの「ベルファストの花」は気になるおばちゃんだ。今度はぜひ、彼女主役の話を読んでみたい。

 
  操上 恭子
  評価:B
   タイトルから予想したとおりのドタバタお笑い系ミステリ。期待を裏切らない面白さだった。登場人物が誰も彼も一風変わっていて、味があって魅力的。夫の浮気相手に復讐するのにこんなことするか?ふつう。ただ、30歳を目前にしながら、毎週べろべろに酔っぱらってパンクで踊っているというのはちょっと理解できない。そういうお国柄なのだろうか。お国柄といえば、町中にテロリストがあふれ、日常的にテロで人が殺されていくというのは、どんななんだろう。当然、一般市民も巻き込まれて犠牲になるわけで、隣に住んでいる人がテロリストかも知れないわけだ。本当のことなんだろうか。そんな所には住みたくないなぁ。そういう所で起こる殺人事件って、例えば東京で起こるものとはちょっと違うのかも知れない、なんてことを考えてしまった。それにしても、このタイトル。作者は思いついた時嬉しかっただろうな。

 
  佐久間 素子
  評価:A
   舞台はテロで名高いベルファスト。主人公は、飲んだくれの新聞記者ダン。出来心で浮気した女子大生が殺されたせいで、何故か警察にも東西テロ組織にも軍隊にもねらわれる羽目になるという、まきこまれ型のクライムサスペンス、あるいはクライムコメディ、である。強くもなく、タフでもなく、頼みの頭脳は酒でよれよれ、めっぽう元気なのはきつい皮肉ばかりで、敵の反感を買いまくりというダンは、ほれぼれするようなまきこまれっぷりを披露してくれる。コスプレ尼僧のナースをはじめとして、介入してくる人物も一々ユニークで、これがまた好き放題に手を出してくるのが楽しい。むろん最後は、とっちらかった事態が、宇宙の真理をみつけたみたいにぴたりとおさまるわけで、まさに快感なのだ。ちなみにタイトルは女子大生のダイイング・メッセージ。ちと苦しいのだが、そういうオチかよって、つっこんで楽しむのもまた一興である。

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