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  跳べ、ジョー!B・Bの魂が見てるぞ  跳べ、ジョー!B・Bの魂が見てるぞ
  【集英社文庫】
  川上健一
  本体 552円
  2002/6
  ISBN-4087474585
 

 
  内山 沙貴
  評価:D
   人は空を飛ぶ夢を見るかもしれない。だけれど一人じゃ空には舞えない・・・そんな、切なくて、自然に逆らえない悔しい想いを抱きながら、人はそれでも夢を見る。たくさんの、かなったら素敵で命懸けで胸に想い溢れる夢。そんな夢見る男たちの物語は、しかしとても清々しいとは云えなくて、汗臭く、人間臭くて、語るには恥ずかしくて赤面しそうなものばかりだ。でも夢見ることは素敵だと思う。だって空を飛べたらどんなに素晴らしいだろう、と思うから。一つ一つの話はそんなに意外性がなく、結末が読めてしまうものも少なくないが、汗臭さを素直に描くこれらの作品は構わず最後まで読ませてくれる。読んでいる間はのめり込めた。だが少しだけ、私には臭くて苦手な小説だった。

 
  大場 義行
  評価:C
   やっぱり長編が読みたいぞ川上健一。たしかにうまいし、熱い物語がこの本にはたんまり詰まっている。「熱いトライ」ではラストの主人公の言葉に、泣かされ、「打ってみやがれ!」ではふざけたピッチャーの言動ににやにやし、「タイトルマッチ」で熱くなる。と、いいのだが、だったら長編が読みたくなるではないか。面白い事は面白いのだが、スポーツものではない「オレンジ色のロリポップ」なんかが入っているのが悪いんだ、たぶん。こういう短編では短すぎて爆発的に泣いたり、笑ったり、熱くなる事はできない。中途半端に熱くさせられた感が拭えない。面白いからこそ、こちらは不完全燃焼なのだ。

 
  北山 玲子
  評価:E
   自転車に乗っている時、小学生に抜かれただけで「こんちくしょう!抜き返してやる」と思う負けず嫌いの私なので、『マッケンローのように』の少年のくやしさはわかります。シュートボクシングを観戦した時に試合前の選手の張り詰めた緊張感に圧倒されたことがあるので『タイトルマッチ』のシーンは、きっとこうなんだろうなと思わせるものがありました。しかし、『オレンジ色のロリポップ』は罰ゲームを受けているのかと思うくらい読んでいて背中のあたりがむずむずしてきました。だってそんなオチのつけかたはないでしょう。「で、それからどうしたの?」といいたくなるような短編もあって、全体的にはいまいち。こういう泥臭さもありなんだろうけど、もっと物凄い葛藤とか駆引きとか何かもうひと味足りないという気がしてならないのです。「幻の傑作」と書かれていますが、私にはどう傑作なのかわかりません。「読解力の限界!」を感じました。

 
  操上 恭子
  評価:D
   格闘技系スポーツやシーンが嫌いなので、ほとんどの作品が苦手の部類だったが、中では2作目の「マッケンローのように」が好きだ。13歳ってそんなに幼いかなとも思うが、まあ幼いのかも知れない。「純真な子供が大人の狡さに傷つく」という紋切り型のイメージなのだが、正直に言ってしまおう。私はこの少年に対して、ザマアミロと思ったのだ。「スポーツマンシップなんて綺麗ごとさ。反則は審判に見つからないようにやればいいんだ。泣くくらいなら挑戦するんじゃないよ」だ。我ながら。すっごい意地悪。だけど、馬鹿な子供に言ってあげられる言葉は「ハヤク大人ニナレ」以外にないでしょう。

 
  佐久間 素子
  評価:C
   ほぼスポーツ短編集。表題作はバスケ。その他、テニス、野球、ボクシング、ラグビー、アイスホッケーと、なかなか多彩なラインナップである。各作品ごとに雰囲気も文体も変えていて、感動モノ、ラブコメ、青春系と、これまた多彩な読後感。惜しむべきは、肝心のプレー場面が共通して読みづらいことで、一体、このびっくりマークの多用は何事だ。テレビ解説者の興奮ぶりがうるさくて醒めちゃう感じに似てるかも。個人的には流血の肉弾戦(野球なんだけどね)が、ばかばかしくも大まじめな『スーパー・クロス・プレー』が気にいった。と、これってW杯より『少林サッカー』という選択だったりするのだろうか。まあいいや。

 
  山田 岳
  評価:D
   喫茶店のなかでの高校生の妄想、純情な中学生と小ずるい大人とのテニス・マッチ等々話の展開としてはまずまずのBクラスなのだが、ちょっとくどい文体がどうにも肌が合わなくて、この評価。

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