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  ウィーツィ・バット ウィーツィ・バット
  【創元コンテンポラリ】
  フランチェスカ・リア・ブロック
  本体 480円
  2002/7
  ISBN-4488802036
 

 
  石崎 由里子
  評価:A+
   主人公のウィーツィ・バット。ハイスクールに通う彼女には、愛する彼がいて、スタイリッシュな男友達がいる。その男友達にも彼がいる。女の子一人と三人の男の子の物語。短い章ごとにシーンが切り替わっていくテンポのよさ。「どうする?」「いっちゃえ、やっちゃえ」「OK!」といったかなり軽いタッチでお話が転回していくのは、まるで映画を観ているかのよう。
 おしゃれなウィーツィが魅力的。カッコいいもの好き。仲良しの男友達はホモセクシャル。「じゃあ、二人でいい男をゲットしに行きましょう!」。赤ちゃんが欲しいのに恋人に断られると、男友達とその恋人と、三人で作ってしまう。それを知り怒った彼が浮気をして他所にできた子どもも、一緒に育ててしまう。あれもこれもありの中、登場人物たちの、若くて無鉄砲ながらも、それゆえのキラキラした感じが溢れている夢物語だ。

 
  内山 沙貴
  評価:C
   明るい空に太陽と雲と海の光がおどる。カラフルなパラソルをくるくる回すその下で、人や犬や虫がはしゃいでおどる。話の内容はクールな女の子と男の子の、童話みたいにスマートな文体で書かれたお話である。そしてこの話は軽い。放っておいたら引力を超えて宇宙までプカプカと飛んでいきそうなくらい軽い。そして軽いから希望を輝かせることができる。ヘリウム入りの風船みたいに希望をいっぱいに膨らませることができる。はちきれんばかりの生きている喜びをスマートに描いた心地良いお話だった。

 
  大場 義行
  評価:A
   この本は1時間くらいあれば読めるはず。で、なんだこれ? となる人と、いいじゃんとなる人に、二分されるのではなかろうか。ろくでもなし、ちょっとずれている少女ウィーツィ・バット。かっこいいけど、これまたちょっとずれている少年ダーク。このずれを利用して、ある意味現代社会を切り取った(んだと思うが自信無し)ファンタジー作品。この作品の雰囲気は最新コバルト文庫アメリカ版という感じが近い。最初は普通の女の子の生活、かと思えばいきなりランプの精が出てきて、すぐ帰っていく。で、物語はあり得なくもない、幸せなファンタジーに突入していくのだ。恐らくこの話は単純で短いという点、とんでもファンタジーな点、などから好みがはっきりするはず。でも、個人的にはウィーツィの正直なセリフ群にめろめろです。続編が待ち遠しい。

 
  北山 玲子
  評価:C
   『ビバリーヒルズ青春白書』の映像がちらっちらっと頭をよぎり、何故かBGMは『カリフォルニアの青いバカ』だった。なんていうか、由緒正しきLAのヤングアダルト小説だな。主人公・ウィーツィは一見、不思議ちゃんだけど実は、理想の恋人を探しているごくフツウの女の子だったりする。彼女の家庭はもうとっくに崩壊していて、それでもそのことでグジグジ悩んだりせずに自分の道を切り開いていこうとする姿は好感が持てた。突然、ランプの精が出てきて願い事をかなえてくれたり、理想の恋人「マイ・シークレット・エージェント・ラヴァー・マン」(長いよ!)が登場したり、女の子が好きそうな要素が散りばめられているので10代の子には受けそう。…10代の子にはねぇ…。
 シリーズ第1作の本書にはCをつけたけど、今後このシリーズがどんな風に展開していくのか気にはなるのでとりあえず第2作目もぜひ目を通してみたい。

 
  操上 恭子
  評価:B
   読み始めてしばらくは今風の若者の日常生活を描いた話なのだと思っていたら、いきなりランプの精が登場した。あらら、ファンタジーだったのと思ったのだが、それもどうやらちょっと違う。あえて名付けるなら、現代の若者の生態系にとっての理想像を舞台に、様々な現実的な問題が発生するお伽噺といったところか。完全な言文一致の文体に最初は戸惑ったものの、慣れるとこの軽快さが心地よい。若者の生活を描いているのでもともとカタカナ語が多い上に、主要登場人物に異常に長い名前の人がいるので文章の中のカタカナ比率がもの凄く高いのだが、私は人に指摘されるまでそのことに気づかなかった。シリーズ全編を早く読みたい。

 
  佐久間 素子
  評価:A
   くるりの『ワールズエンド・スーパーノヴァ』という曲をご存じだろうか。淡々としたビートにのせて、サビらしきサビもないシンプルなメロディで、まごうことなき今の空気を切り取ってのけた奇跡の名曲である。すっかり醒めて、あきらめきっていて、退屈で、それでも音楽には体が反応して、一緒に踊ればつながるような気がして。ささやかな希望は、幻想かもしれないけれど、今の所そこにちゃんとある。キッチュなおとぎばなしというパッケージの本書は明るくていい加減で、主人公のウィーツィは脳みそ足りてる?ってな感じの女の子である。で、何故くるりなのかというと、ウィーツィもまた、醒めて、あきらめきっていて、退屈しているからなのだ。深刻に悩むわけでもなく、当たり前に絶望していて、でも踊り続ける。その先に希望はある、というか、その先にしか希望をみつけられない、そのささやかさが、とてつもなく今っぽい。脳天気なハッピィがひたすらいとおしい。シリーズ5冊読んでナンボと思っていたけれど、今回再読してちょっと考えを改めた。傑作。

 
  山田 岳
  評価:D
   理想の男と好きな仲間に囲まれて、ちっちゃな家でかわいい子どもを育てる。今のアメリカの10代の理想ってこんなもんですか?この程度で「世界が違ってみえる」(帯コピー)の?うーむ。世の中の誰も信じられない、家族でさえもが憎みあうアメリカ社会だからこそ求められた、ちっちゃな(ちゃちな)ユートピア小説。

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