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  よみがえる鳥の歌 よみがえる鳥の歌
  【扶桑社セレクト】
  セバスティアン・フォークス
  本体 上・下各848円
  2002/6
  (上)ISBN-4594036163
  (下)ISBN-4594036171
 

 
  北山 玲子
  評価:C
   フランスの紡績工場、第一次世界大戦、70年代のイギリス。3つのシーンから成る本書は特に戦場シーンがじっくりと読ませて印象深い。人生に対してたいした希望も持てずにいた青年・スティーブンが戦争体験を通して生きることの喜びを噛み締める、いい話だ。第一次大戦時の気の滅入る戦地でたくさんの死を目の当りにすることで生きるということの意味を見つけ出す。地雷工兵隊大尉・ウィア、地雷工兵・ジャックらの魅力のある男たちとの係わることで、どちらかというとひ弱なスティーブンが少しずつ変化し成長していく姿は素直に感動できる。ただ、脇役に味のある分、スティーブンがちょっとぼやけてしまったかなという感じは否めない。また、戦争前のフランスの紡績工場経営者妻・イザベルとの恋愛話は正直、なくてもよかったかなという気がしないでもない。もちろん、このことが後々彼の人生に係わってくるという意味では必要なのだが…。

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