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  破壊天使 破壊天使
  【講談社文庫】
  ロバート・クレイス
  本体 (各)990円
  2002/8
  ISBN-4062734737
  ISBN-4062734745
 

 
  大場 義行
  評価:B
   なんなんだろう、この高揚感。読み終わってからしばし呆然としてしまう程。ああ、やはり爆弾魔が出てくる話は個人的にひじょうに好きなのだ、としばらくたって気が付くわけである。爆弾魔ものが面白いわけ。1・大抵主人公が爆弾を解除しなければならなくなるのが、どうしてもスリリング。2・爆弾魔が大抵どこにいるのか判らなくて、そこはかとなくスリリング。3・同僚の誰かが大抵死んでしまう所がまたまたスリリング。と、どれも同じようなストーリーになりがちなのだが、この3つのスリリングさが麻薬のような力を発揮してきて、ごりごりと読んでしまうのである。この本もそのパターンを踏襲していて(同僚は最初に死んでしまうのが残念)、しかも、主人公にトラウマがあるという最近のミステリーのパターンも持っている為、個人的には楽しめましたが、普通の人はどうなんでしょうか。

 
  北山 玲子
  評価:B
   爆発物処理員が作業中に爆死した。事件の真相を追うのは元処理員で自らも爆弾で瀕死の重傷を負った過去を持つ刑事・スターキー。過去に傷を持つヒロイン、彼女がペアを組む特別捜査官に抱く恋愛感情という設定はよくあるパターンだ。しかし二転、三転するストーリーは息つく暇もないほどの面白さ。爆弾魔たちのカリスマ的存在のミスター・レッドがいい。爆弾作りも天才的だがある事件に関しては刑事たちよりも行動が素早かったりするスゴイ奴。そしてもう一人、爆弾マニアのダラス・テナントが今月のマイベストキャラ。登場時間は短いがその存在は強烈。刑務所にいながら爆弾に関する記事をスクラップしている真の爆弾オタクだ。このキャラクターだけでこの本読んで良かったと満足できるほど印象深かった。
次は?次は?と先が気になって本を閉じる決心がなかなかつかないかもしれないので、秋の夜長に徹夜覚悟でぜひ。

 
  操上 恭子
  評価:B+
   主人公の豪快さがいい。型破りでマイペースに突っ走る刑事というのは最近珍しくないが、これを魅力的な女性にしたのが効果的だ。女同士の確執があったり、男社会の警察の中でまだまだ少数派の女刑事が少しづつ地盤を築いていくエピソードが織り込まれていたりというディテールもリアリティがある。深刻なトラウマとアルコール依存、そしてそこからの再生の物語というサイドストーリーはややありきたりだが、連続爆弾魔を追うメインストーリーの方はかなり衝撃的だ。爆発物処理という仕事の面白さと恐さが伝わってくる。
ただ、主人公キャロルと捜査官ペル、それに爆弾魔の3視点をとっているのだが、この爆弾魔の視点は本当に必要だったのだろうか。前半では特に、最近の流行りだから犯人の視点も入れてみただけなのかと思った。後半に入ってその意味もわかったが、別になくても何の問題もないような気がする。犯人の視点が、物語に深みを出しているようには感じられなかった。

 
  山田 岳
  評価:B
   爆弾事件がこんなにも日常的な犯罪なのか、アメリカでは。爆発物処理班としての作業中に暴発で同僚でもある恋人を失ったヒロイン、スターキー。彼女のトラウマとあたらしい爆発物事件との葛藤の中で物語りは進むのだが、謎のFBI捜査官ペル、爆弾魔ミスター・レッドと<心に問題あり>の人たちが次々と登場して、アメリカ社会の別の深刻さも見せつけられる。物理的な爆弾と心の中の爆弾に立ち向かっていくヒロイン、その姿にアメリカの読者はめろめろになったのかもね。

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