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  地球礁 地球礁
  【河出書房新社】
  R・A・ラファティ
  本体 1,800円
  2002/10
  ISBN-4309203647
 

 
  大場 利子
  評価:B
   バガーハッハ詩とイーラッハ話の2種類のことばをあやつる芸術様式を持つプーカ人。2人兄弟が2人姉妹と各々結婚し、もうけた子供は6人だか7人だか8人だか。そのデュランティ一家。任務は、金儲けと地球に対して手立ての講究!
 「バガーハッハ詩」と出てくるたび、頭の中で復唱する。素晴らしき響き。よくこういう言葉が作れると、感心。想像なのか呪いなのか希望なのか魔法なのか、プーカ人の詠むバガーハッハ詩の深さ、可笑しさ、くだらなさ。それにつきる。きっとこんな節でプーカ人は奏でているだろうと、頭の中でうたう。
 帯にはSFという文字が。ジャンルを示す記号だけで、身構えることなんてない。

 この本のつまずき→柳下毅一郎=訳。これだけで、十分おかしい。

 
  鈴木 恵美子
  評価:A
   最初はナンセンスストーリーかと思っていたらおっとどっこいスーパーリアリズム小説だった。地球人から見れば、不気味で妙にしたたかなプーカ人の存在を暴力的に排斥しようとする。これってアメリカ社会でのマイノリティ迫害の構図と同じ。大人のプーカ達が「地球病」を病み、自滅していく中、9歳から6歳までの幽霊を含むプーカの子供たちは踏みつけられてますますたくましさを増す雑草のよう。「あの子らと会った後はいつも向こうこそが本当の人間でわしらはちょっとそうじゃないような気にさせられる。」とは言えている。彼らの作るバカーハッハ詩は一見イカレタ戯言のようだが、今ではヒトに使い捨てられる非力な道具に成り下がり果てた言葉にはない、太古の言霊的パワーを持っている。それこそが彼らの精神を自由に飛翔させ、したたかに生き延びさせる最強の武器でもある。プーカをいわれ無き憎悪で狩り、残虐に追いつめて抹殺することに快感さえ感じているクロッカーや検事マーシャルは今日のアメリカ的グローバリズムのカリカチュアだ。地球という暗礁にのりあげたのはプーカではなく、自分達の価値観を絶対視し、相対的な視野を脱落させたまま突っ走る人間の側だ。その暗礁を巧みに避けて航海に乗り出すゴブリンの子供たちの「闇の中で光る緑の目」よ。もっとブキミに輝け!

 
  松本 かおり
  評価:B
   地球巡礼中のプーカ人・デュランティ一家。彼らの不幸は地球が「全宇宙でもっともさもしい世界」であったこと。この一家、父親の地球人との戦いぶりも見物だが、子供らの憎たらしいほどのしっかりちゃっかりぶりがひときわ強烈。大人がいなけりゃこの世は天国、殺ってまえ!思い立ったら即行動なのだ。
 常に誰かが動いて何かが起こる。見せ場連続のシンプル展開がプーカ流。理詰めの納得よりもお楽しみ優先。長ったらしい前置きや詳細な背景描写がなくたって、オモロイものはオモロイという好見本。「なんじゃこれ、ヘンなの〜」と期待もせずに、しれっと読み始めたこの私、そのヘンさに見事にハマった。
 ホラはホラでも上沼恵美子のお笑いホラとは大違い(当然か)。このホラの世界は奥深い。読みようによっては、悲哀に満ちた少数民族の物語であり、子供の成長物語でもある。そもそも目次からして並じゃない。バガーハッハ詩にそっくり。洒落てるじゃないの。こんな目次、見たことない!

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