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  最悪 最悪
  【講談社文庫】
  奥田英朗
  定価 920円(税込)
  2002/9
  ISBN-4062735342
 

 
  大場 義行
  評価:AAA
   最高。問答無用のイチオシ作品。小さな鉄工所社長。銀行員。ちょっとヤクザ。この三人にひたすら降り積もる最悪の出来事。読んでいる方もイライラしたりふさぎ気味になってしまうというのは、凄い事なのではないかな。大体にして500ページにも及ぶ意地悪の連続というのはちょっと他にはないのでは。で、もう身動きができないという状況にまでいってから炸裂するラストは素晴らしいの一言。思わず泣いてしまいました。まあ感動の涙というよりも、開放されたという安堵の涙に近いかも。普通の人がどうして犯罪を犯してしまうのか、そんなものが巧く描かれているのでは。とにかく、これは名作と断言してもいいと思う。

 
  北山 玲子
  評価:A
   3年前に読んだ時もそうだったのだが、今回再読して結末もわかっているのにやはりどっと、疲れた。それはたぶん川谷、藤崎、野村の登場人物たちのその場その場の心情に入れ込みすぎてしまって、自分の中で様々な感情がいちいちムクムクと湧き上がってしまうからだろう。怒りやイライラやウジウジした、どちかというとマイナスの感情ばかりが総動員させられる。だったら読むなと思うのだが、雪だるま式にアクシデントが重なりどんどん破滅に向かっていく3人の姿は、ヒドイ人と言われようとも読む側としてはこの上なく楽しい。昨日までまったくの他人だった悩みを抱える3人が出会った時に超新星爆発のように一気に弾ける。幸福か不幸かなんて問題じゃない。ただその弾けっぷりが潔ぎいいのだ。
 野村が中年の川谷の情けなさに思わず説教するシーンは笑える半面、涙ものだ。

 
  佐久間 素子
  評価:A
   ちょっとしたきっかけで、人生が転がるように破滅に向かう人間の話である。一体、何が楽しくて人はこんな話を読みたがるのであろう。と、前回の採点で書いた。いやそれは、こんな小説に出会えるからなのだよ。後味はいい方が・・・と思っているそこのあなた。いいから読みましょう。これはすごい。鉄工所社長の中年男、銀行員の娘、チンピラの青年、三人三様に追いつめられていく様子がまずじっくりえがかれていく。そのリアルに、比喩ではなく、息がつまる。そして、もうあかん、これ以上は読んでおれんという臨界点で、三人の人生は交差する。絶妙のタイミング、そして、そのまま加速度的に混乱の渦へ。ラストもこれしかないでしょう。大満足。

 
  山田 岳
  評価:A
   タイトルをつけるセンスは最悪だが、日常のなんでもない話をつみあげて読ませてしまう力量はかなりのもの。欧米のノワール小説は邪悪なものがどこからともなく現れるが、日本のものは日常が破綻することからノワールが生まれる。町工場の経営者、女子銀行員、パチプロ少年、3者3様の日常が破綻しての<最悪>となるが、どこか映画「踊る走査線」を思わせる話の展開、オチのつけかた。日本人って、徹底的に邪悪にはなれないものなのね(^-^;)

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