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  今ふたたびの海 今ふたたびの海
  【講談社文庫】
  ロバート・ゴダード
  定価 (各)880円(税込)
  2002/9
  ISBN-4062735385
  ISBN-4062735768
 

 
  北山 玲子
  評価:A
   時は18世紀初頭。借金を抱えた地図製作者・スパンドレルは返済が出来ず、その代りとして密使の仕事を命ぜられる。裏帳簿<グリーンブック>をめぐって欧州全土を舞台に繰り広げられるさまざまな陰謀に巻き込まれるスパンドレルの大冒険。陰謀と裏切りが蠢く中、いったい誰を信じたらいいのかまったくわからないところが面白い。とにかく登場人物が多く魅力的なキャラも多い。中でもエステルという女性は、ソフトな峰不二子という感じでなかなか抜け目無いところに惹かれるものがある。正直、ゴダードの描く話は面白いけど、主人公の女々しさが少し鼻についていた。本書の主人公もダメ男だけれど、そんなのどーでもよくなる。やっぱ男は海を渡らにゃあかん!とわけのわからないことを口走りそうになるほど、今までのゴダード作品のなかでいちばんエキサイティングできるぞ。

 
  佐久間 素子
  評価:C
   たった2作読んだくらいで、決めつけるのは何だが、私はどうやらこの作者が苦手なようである。原因はわかっている。著者のもつロマンチシズムがあわないのだ。女性への幻想に対して醒めてしまうのだ。なまじ、筆力がある分、鼻につく。本作の場合、女に翻弄される主人公が間抜けに見えてしまっては、かなりの部分が台無しなのである。そうした要素を除けば、政界をゆるがす裏帳簿をめぐっての、追いつ追われつの冒険ものであり、史実をちりばめた歴史ものである。二転三転する状況に胸が躍る。裏も表もある男たちはこんなにリアルなのに、なぜ女だけがこんなにうすっぺら?

 
  山田 岳
  評価:B
   イギリスの時代劇だが、事件がバブル崩壊に起因している点では今日的。でも、当時の貴族・政府高官の権力闘争に前王朝の亡命(自称)王がからんで、ややこしくなる。主人公はただの地図技術者。借金のカタ(?)に<運び屋>を命ぜられたことから事件に巻き込まれる。お人よしはとことこんコケにされる、その見本のような人物。いや、技術者だけに、ノーベル賞受賞の某氏のように、まわりの空気が読めない。じぶんが危険にさらされていることがまるでわかっていなくて何回もひどい目にあう。主人公に寄り添って読んでいるとだんだん腹が立ってくるかも。

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