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  ダークホルムの闇の君 ダークホルムの闇の君
  【創元推理文庫】
  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
  定価 1,029円(税込)
  2002/10
  ISBN-4488572030
 

 
  北山 玲子
  評価:A
   もし自分がRPGの世界に入ったとしたら、その世界の住人たちは私を楽しませるために様々なイベントを用意するだろう。「中ボスは君と君ね、で、ラスボスは僕。このターンでは何人が死んで、何人がケガってことで。じゃ、本番までに間に合うように準備しといて」本書の雰囲気を簡単にいうとこんな感じかな。実業家チェズニー氏が送る巡礼観光団を楽しませるために魔法界ダークホルムの住人たちも準備に入る。観光のクライマックス、闇の君に選ばれた魔法使いダークとその家族の波乱に満ちた数日間を描くファンタジー。惹かれるのは魅力的なキャラクターたち。普通の魔法はニガテでヘンな魔法は得意というダークを筆頭に、進学問題に悩む息子・ブレイド、年老いたドラゴンのウロコなど数え上げたらキリがないほど個性的な面々の宝庫。なんだかお皿の上に色とりどりのケーキがあるような、登場人物の個性だけでおなかいっぱいになりそうだ。あと、空飛ぶ豚、欲しい。

 
  操上 恭子
  評価:A
   異世界ものファンタジー。魔術師にはじまり、竜や魔物や妖精、そして空飛ぶ豚まで、およそファンタジーとして考えられるあらゆる生物が登場する。膨大な数に登る登場人物と生物が、読む者に大きな混乱をおこさせることなく、おさまるべき場所にきっちりとおさまって物語を作り上げている。まさにタペストリーのようだ。異世界と現実(?)世界の干渉を異世界の側から描いているのが面白い。私たちのこの世界にいかにもいそうな、悪徳商人が悪役である。傍若無人でわがままな観光客の描写が、日本の団体旅行客をおちょくっているようで、ちょっと居心地の悪い思いをしたりもする。
異世界物は、その作られた世界の魅力と完成度が作品の出来を左右するものだと思うが、本書のような「なんでもあり」というのも面白い。2部作といわず、たくさん続きを書いて欲しいと思う。青春小説としてんも、家族小説としても、とても優れた作品だと思う。

 
  佐久間 素子
  評価:B
   ある意味、ファンタジーの極北といえるのではないか。観光地化された魔法世界で、闇の君に指名された魔法使いが、義務を果たすために奮闘するという設定が、そもそも、壮大な悪ふざけだ。魔法使いの家族がどんな困難につきあたっても、どこかしら滑稽なのは、目的がそんなだからだ。どんな大騒ぎが起こっても、まるきり安っぽくなってしまうのは、彼ら自身が見せ物だからだ。ああ、それでも面白いのよね。家族の中にはヒーローもヒロインもいないのに、てんでばらばら思うことをして事態を更にとっちらかしているのに、何故か奇跡が起こる。紛い物が美しく見える瞬間がある。紛い物でも構わないのだ。安くても関係ない。宝物の真贋は本人だけが知っている。

 
  山田 岳
  評価:B-
   アメリカ経済のグローバリズムはおとぎの国まで侵食をはじめたようだ。魔法世界ダークホルムは観光客の受け入れで「蛍光灯をつけるな、古めかしくしろ」とすったもんだの連続。魔法の手違いで呼び出されてしまった魔物にも「近頃は小物ばかりになった」とあきれられる始末。財政的にもひっぱくしているダークホルムを救うのは・・・って展開だったはずが、はちゃめちゃどたばたの連続で何がなんだか(^-^;)。読み終わった瞬間にストーリーも、魔法のように、評者の頭の中から消えてしまった。

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