年別
月別
勝手に目利き
単行本班
文庫本班
     
今月のランキングへ
今月の課題図書へ

商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
 
  イリーガル・エイリアン イリーガル・エイリアン
  【ハヤカワ文庫SF】
  ロバート・J・ソウヤー
  定価 987円(税込)
  2002/10
  ISBN-4150114188
 

 
  北山 玲子
  評価:C
   地球にやって来たエイリアン・トソク族を迎え入れようとする人間たち。友好的に始まった交流だったが、彼らと行動を共にしていた天文学者が惨殺される。しかも現場にはトソク族の一人が犯人であることを指し示すものばかりが残されていた。エイリアン相手に本気で裁判をしようとする検察側。必死で無実を証明しようとする弁護側。皆マジメなのだ。誰一人としてふざけている者などいない。けど、笑える。陪審員を選ぶ条件について「SFマニアやスタートレックのファンは除く」とかマジメに話し合っているし、チャイニーズシアターでの歓迎会にはスピルバーグが招待されるし、ちょっとしたところが可笑しい。いかにもSFという装丁だが内容はエイリアン・リーガルサスペンスなので、あの恐竜ハードボイルド『さらば愛しき鉤爪』とおなじような心構えで読むといいかもしれません。ただ、ラストのある部分の能天気さにはついていけませんでした。

 
  操上 恭子
  評価:B+
   「ここ30年の間に書かれた、あるいは撮られたすべての宇宙SF(スペース・ファンタジー)はスター・トレックへのオマージュである」(SWはチャンバラであってSFではないから別ね)、というのが私の持論なんだけれども、本書はまぎれもなくその一冊。といっても、本書は宇宙物ではなくて宇宙からの訪問者物だけれど。全編にST的精神に溢れていて、エンディングなんてまさにスター・トレックそのものだ。作者はパロディを意図していたのかも知れないが。中盤の殺人事件とその公判過程はミステリとしても充分に楽しめる。それにしても、地球を訪問中のエイリアンを裁判にかけてしまうという発想はすごい。ロバート・ソウヤーは、まさに「おバカ系SF」の第一人者である。

 
  山田 岳
  評価:A
   「不法入国者(イリーガル・エイリアン)」という法律用語を言葉本来の「法を犯した異星人」として、裁判はどのように展開されるか検証したところからこの小説は生まれたようだ。舞台は近未来というより、ほとんど現代。エイリアンの姿は表紙に描かれているから、SFが苦手な人でもすらすら読めてしまう。O.J.シンプソン裁判の結果に著者は不満をおぼえているようで、やたら皮肉っぽく引用されているのも興味深い。そして裁判は思わぬ結末を迎える!最後に別のエイリアンが飛来するのは、苦笑をさそうオマケ。

□戻る□