年別
月別
勝手に目利き
単行本班
文庫本班
     
今月のランキングへ
今月の課題図書へ

商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
 
  鉤爪プレイバック 鉤爪プレイバック
  【ヴィレッジブックス】
  エリック・ガルシア
  定価 924円(税込)
  2003/1
  ISBN-4789719804
 

 
  延命 ゆり子
  評価:B
   恐竜が人の皮をかぶっているんである。人の世界に恐竜が紛れて生活しているんである。荒唐無稽な設定で、実は正統派ハードボイルドというのがマニアには堪らないそうです。でも、私はそこはあんまり楽しくなかった。というより、むしろすごく考えさせられた。ビジュアル面。だって、ステゴサウルスがどうやって人の皮をかぶってるの?足の部分とかどうなってんの?なんでこんなに小型化しちゃったの?こういうこと気にするのって野暮なの?むむむー。わからねえ。しかもこうやって真面目に考えること自体がバカバカしい(「バカミスってのはこういうもんじゃ!」←マニアの声)。内容はまあ軽いもので、探偵が巨大カルト教団に潜入、内部の組織と対決するというもの。それよりも作者のこの恐竜ワールドのディテールを楽しむことに重きを置かれている気がした。一作目を読んだ人のためのファンサービスのような。読む順番を間違えたか。

 
  高橋 美里
  評価:AA
   恐竜がもしもこの世に未だ生きていたら、もしも人の皮を被って生活をしていたら・・・。ありきたりだけれど、そんな想像をかきたてられる作品。探偵会社を営むルビオは相棒のアーニーと一緒に恐竜のカルト集団に勧誘され、帰ってこなくなったアーニーの元・妻の弟を救い出すという仕事を請け負った。ミステリテイストのあまり強くない今回の作品は一作目よりハードボイルドに。とにかくかっこいい男(恐竜)たちのお話です。
因みに、私、一作目「さらば愛しき鉤爪」を読んでいなかったのでいきなり「プレイバック」から読んだのですが、一作目を読んでいなくてもなんの不自由もなく世界に浸ることが出来ます。恐竜社会の入り口にもオススメです。

 
  中原 紀生
  評価:AA
   LAの私立探偵「ヴィニー坊や」もしくは「ヴィンセントちゃん」ことヴィンセント・ルビオと相棒のアーニー・ワトソンの絶妙コンビが、謎のカルト教団「祖竜教会」の企みを暴き潰えさせる冒険活劇で、妖艶な魅力をたたえた「悪女」キルケーとヴィンセントの苦い恋の顛末が物語に陰翳をもたらすスラップスティック・ハードボイルドの傑作。でも、あまたの傑作と違うところが一つあって、それは(その昔はやった「奥様は魔女」風に言えば)「探偵は恐竜だったのです」。──この趣向が凄いのは、もちろん恐竜が人間に扮装して人類社会にとけこんでいたり、恐竜にもゲイがいたり、恐竜とのセックスを好む人間がいることのおかしさもあるけれど(笑える)、なによりも過激に個性的な登場人物のその過激さや、ヴィンセントがキルケーの強烈なフェロモンにラリってしまうことを、「まあ、恐竜だったらしかたがないか」と読者に有無を言わせず納得させてしまうことだろう。(それとも、チャンドラーに還るためには、尋常の趣向ではかなわないということか。)

 
  渡邊 智志
  評価:A
   前作も読んだ。でも忘れちゃった。ぼんやりと面白かったけれど忘れてしまうくらいの印象。だからどうせダメでしょ…、ってなめてかかったら、ところが失礼ながらこれが実に面白い! ストーリーテリングがシンプルになったから? 設定を説明する手間が省けたから? 文章がこなれていて読みやすい。「登場恐竜」が少ないのも嬉しい。ご都合主義で話がとんとん拍子に進みすぎるきらいはある。軽妙さも空々しいかも。つまらないジョークを言う軽い主人公を受けつけない、っていう意見もあるでしょう。でも恐竜ならではの乱闘活劇、その滑稽さを楽しむのがメイン。「恐竜なのだ!」という世界観を受け入れてしまえば、香腺や尻尾などの特殊なアイテムがドラマの中で活きている。なんでもない話に「恐竜&軽味」を足して、新しい楽しみ方を提供してくれた。映画化されるのかな? 小説の文字だけの表現を追う方が、逆に自由にその姿を思い浮かべる楽しみがあるよ!

□戻る□