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  阿修羅ガール 阿修羅ガール
  【新潮社】
  舞城王太郎
  定価 1,470円(税込)
  2003/1
  ISBN-4104580015
 

 
  大場 利子
  評価:B
   もう、ふざけるのもいいかげんにして、と叫びたくなった。はまった証拠か。思う壺か。「阿修羅」とは、梵語の音訳で、争いを主とする悪魔を意味する。悪魔ガール。もっと、強く、きっちり、理解しようと、分解したって、始まらない。単なる悪あがき。
 主人公アイコの心の言葉、もしくは叫び、もしかしたら独り言で、物語は始まる。うざいよ、うざい、と思いながらも、頁をどんどんめくる。思わず頷いたりして。またはまっている。その繰り返し運動で、最後まで一気読み。
 ●この本のつまずき→心の底から同感。「空腹は最高の調味料」

 
  新冨 麻衣子
  評価:AA
   「減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。わたしの自尊心。/返せ。」この冒頭からガツンときませんか。ちょいと喧嘩っ早い女子高生アイコのまわりは、猟奇的連続殺人犯・グルグル魔神にアルマゲドンin調布、自尊心奪ったクラスメイトの佐野は行方不明だし、アイコを呼ぶのは天界か魔界か!?つーか陽治は何で振り向いてくれないの?暴走しているのはアイコかそれともこの世界なのか。もしくは舞城王太郎か?圧倒的スピードから生み出される舞城ワールド。さらに鋭さを増したナイフでぐぐいと集団心理の怖さをえぐり出す。この異色さ、言葉のセンスは群を抜いてますよ、ホント。

 
  鈴木 恵美子
  評価:B
   悪夢のような現実と現実を象徴するような悪夢がないあわされたしたたかなマイジョウワールドを徒手空拳、膝蹴り阿修羅ガールアイコが行く!アイコと言えば現役の女子高生が書いた「アイコ16歳」なんて牧歌的なのが文藝新人賞デビューした昔もあったっけ。それに「このようなハチャメチャアホ女にかけまくも畏き辺りと同じ名を使うなんて不敬だ」なんて時代じゃなくてよかったね。考えなしに行動してから後悔し反省するけど次の行動もやはり結果考えてない。自己憐憫にはまってるよりはましかもしれないけど、勉強しない、知性ない、想像力貧困で体力だけはあるこのタイプがしぶとく復活再生するところが救い。これも一種のサバイバルストーリー、この作者が前作「熊の場所」でもこだわってたテーマだよね。近所の三つ子の赤ちゃんを攫ってバラバラにしちゃう閉じこもり男グルグル魔人、ネットの書き込みでキッチンハンター(厨房=中坊狩り)から死者まで出る暴動アルマゲドンにエスカレートする中、トイレでシメられそうになった逆襲に報復され生死の境にと言った、暴力に満ち満ちた世界、バーチャルなリアル感がコワイ。

 
  松本 かおり
  評価:D
   またこのパターンかよ〜?である。舞城氏、このままずっとこのノリでいくつもりなんだろうか?「新たな才能」「新たな地平」。カバーには書いてあるけれど、単なる「奇をてらったインパクト狙い」とはどこが違うのだろう。 
 エッチするぐらいしか能がない、頭の中身が薄そうなオコチャマ連中の大騒ぎ。汚らしい言葉遣いにいかにも単細胞的な行動がこれでもか、と続く。いいかげん辟易してきたところで、いくらなんでもバカばっかりじゃマズイってんで最後にちょろっとシリアス芝居。しおらしさを演出。阿呆にも少しはイイトコあります?甘い。どんな人間も心の中で怪物を養っている?自明だ。
 ガンガン突っ走る文体に私の頭もグールグル、脳みそを思いっきりこねくり回されたところでヤレヤレ一息。この酔い感はなんだ?!いやはや次作ではどんな仕掛けを見せてくれるのか。良くも悪くも気になるのが舞城作品。

 
  山内 克也
  評価:B
   某週刊誌の書評で、この作品をミステリとして紹介していて、驚いた。恋愛小説ではなかったのか? 
 確かに帯の惹句を読めばミステリともとれるし、一人称でラップ調の文体と、ラブホ、学校、子どもたちが狂乱する街、といった次々に変化する異様な世界に読み手は惑わされ、「ミステリなのか」と納得してしまう。ただ、一貫して主人公の女子高生は、小学校からの同級生に対する片思いを独白し、その恋愛感情がストーリーにアクセントをつけている。スプラッタな場面を数多く展開していても舞城王太郎の物語は単純なのだ。
 それにしても、クラスメートに殴られた主人公の生死さまよう場面はすさまじかった。はっきり言ってしまえば、活字の大きさの違いでその情景を視覚的に表現する作者の大胆さに、脱帽、というより、あきれてしまった。

 
  山崎 雅人
  評価:B
   突然、興味から同級生とやってしまう、愛を求めてさまようアイコ。その相手が誘拐され、ぐるぐる魔人の猟奇殺人に便乗した暴動で、調布の街はめちゃくちゃ。そして、アイコの運命は...何それ? 無責任ですが、わたしにも分かりません。著者の『熊の場所』は、この新しさ、すごさを理解できないのは古い。という絶賛評が多数でしたが、本作は苦しいでしょう。難しい。どこまで深読みするとまじめに批評できるか見当もつかない。
 2時間の熟考の末、こう考えました。殺人は心の奥底で深く葛藤したものの仕業ではない。衝動が引き起こすもの。意味なんてないのだ。という時代の感覚をするどく表現している。死の軽さ、他人に対しての感情の希薄さと、その反動の自己愛の異常な重さのギャップを鮮やかに描く技量はさすがである。
 句読点がなくて、会話のリズムで読ませる独特の語りは、相変わらずの切れ味だ。読んでいて気持ちいい。そうか!気持ちよければいいのだ。著者もきっと意味なんて考えてない。表現の自由を謳歌している、こどもおとなのための童話なのだ。FREEDOM万歳!

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