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├2001年7月
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古道具 中野商店
【新潮社】
川上弘美
定価 1,470円(税込)
2005/4
ISBN-410441204X
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
朝山 実
評価:A
舞台となるのは、家庭の不用品などを引き取る中野さんの店だ。そこでバイトする「私」は店に集う奇妙な人たちのペースに流されながら静かな日々を過ごしている。
「男が上に乗っかってくる時って、文鎮に押さえられてる紙に、自分がなったような気分にならない?」と中野さんの姉のマサヨさんに訊かれ、お店の文鎮に見入ってしまったり、松田聖子がCMをやっていた等身大の看板が、微妙に等身大ではないと「縮小聖子」呼ばわりする中野さんに笑ったり、雨に濡れて借りたワンピースを社員割引(300円)で買わされたり。しょぼいエピソードにホレタハレタが絡んで、ほのぼのもったり。店というか小説全体の雰囲気を壊す人物が一人として登場しないのはご都合主義のように思えないでもない。でも、「私」が数年後、化粧をして会社勤めをはじめてからの最終章で、ほのぼのの意味が掴めてくる。ととりたてて何もない、安心マークのお話の集積。だけど、読後は通い慣れた道のように中野商店のことが頭のなかをしめている。
安藤 梢
評価:A
何がいいって、登場人物のキャラクターが素晴らしい。ふらふらと女にだらしない中野さん、不器用で無口な(そして頑固な)タケオ、なぜかお客の購買意欲を掻き立てるゲイジュツカのマサヨさん、きっぱりとした美しさを放つサキ子さん。一歩離れたところから、丹念に観察している私の存在も絶妙である。中野商店を訪れる一風変わったお客たちも、いい味を出している。これと言って何が起こる訳でもないが、それでも小さい波風を立てながら、日々の暮らしが営まれていく。誰かを好きになったり、付き合ったり別れたり、という恋愛模様も登場人物の個性のままに、それぞれ淡々と描かれている。
中野さんの「だからさあ」という口癖や、タケオの「〜す」という話し方(「〜っす」ではないところがポイント)など、細かいところにまで行き届いたこだわりを感じる。読み出した途端、すっぽりと世界にはまってしまう。
磯部 智子
評価:AA
終わらなければ良い、ずっとずっと読み続けていたいような心地よい世界。登場人物たちは奇妙で年季の入った不思議ちゃんたち、横にいたらついちょっかいをかけたくなるような面々。所々とても古風な言葉選びで、尻尾をくっつけたままの化け狸のような可笑しな怪しさがある。中野商店の品物は「古道具」であって「骨董品」ではない。年月を経るほど価値を増すのではなくどこかのCFにあったように「古いばかりで役立たず」なものも多いはずである。でもそこに何かを探しに来る人がいて自分だけの大切なものを見つけていく。「私」(ヒトミちゃん)、タケオ、中野さん、マサヨさんたちもそれに似て、どこか欠けていたり色褪せていたりして保証書も鑑定証も付いていない。そんな不器用で世渡り下手な人々の人間模様、恋愛模様が緩やかな時の流れとともに描かれる。無数に付いた傷のひとつひとつと一緒に人を受け入れること、そして受け入れられること、いつかそれが本当に出来たなら、人生はどんな深みをみせることやらとふと考えてしまう作品だった。
小嶋 新一
評価:A
古道具屋を街で目にすると、そこだけ独特の「時間の停まった感」を僕は感じてしまうが、「中野商店」も同じくである。そこに集う人々は、昨今の世相のせわしなさが嘘のような、ゆったりとした時間の中に住む、一風かわった人ばかり。
アルバイトで店番をするヒトミと、引き取り担当のタケオ。主人の中野さんと、そのお姉さんで売れない芸術家のマサヨさん。何を考えているのかとらえどころのない、ひょうひょうとした中野さんや、自らのことを「生きていくのが苦手」と語る朴訥としたタケオなど、個性際立つメンバーばかり。
そして、みんながそれぞれ濃〜い男女関係を抱えているのが面白い。ヒトミとタケオの不器用な恋愛ぷりは、ある種ほほえましささえ感じるし、中野さんもマサヨさんも、いい年して知らん顔して、結構血気盛んだったりする。ちょっとうらやましいぞ。
古道具屋さんという知られざる世界を垣間見る興味深さに加え、個性豊かな登場人物おりなす人生模様が、とつとつとした絶妙な語り口でで描き出される。あと味も心地よく、ほのぼのしみじみ、あったかい気持ちになれます。
三枝 貴代
評価:B+
骨董店ではなく古道具屋。そういった店である中野商店に勤めるヒトミとタケオ、店主の中野さん、その姉のマサヨさん、店のお客たちの、恋愛にまつわる話の連作短編集。
現在大量に出版されている恋愛小説はだいたい二種類に分かれていて、一つは二人はくっつくのかどうかということが興味の中心となる物語、もう一つは二人の関係はかぎりなく強いのだが病気などで引き裂かれるという悲劇で、いずれにせよかなりドラマティックなものです。しかしこの連作集はどちらのパターンとも微妙に違います。つきあいだした二人の関係が年月にともなってどう移り変わってゆくのかを主に描いたもので、かなり地味。しかし実際の恋愛はこの作品集で描かれたように進行するものなので、この本の方が実施の際に参考になるものと思われます。なによりもものすごく巧いので、読んで損はありません。強力におすすめします。
ただ、こういう普通の小説は川上弘美でなくても書けるのだから、川上弘美には川上弘美にしか書けない小説を書いて欲しいなあと思うのは、わたしのわがままでしょうか。
寺岡 理帆
評価:A
しみじみと、ほんわりと。 川上弘美を読める幸せ。
特別大きな事件は起こらないんだけれど、いろいろなことが少しずつ、池に小石が投げ込まれていくように起こっては、小さな波紋がふわふわと広がって静まる。流れていく時間はいつも同じようでいて、少しずつ登場人物に変化をもたらしていく。ほんの些細なことがひとつ。ほんの些細なことがふたつ。
でてくる登場人物がみんないい。なんというか、くっきりと輪郭が見える。質量を感じる。お店に来るお客さんひとりひとりにさえ。
中野商店の埃のにおいを嗅いだような気がする。その埃が光の中をきらきら光るのが見える気がする。裏からトラックのエンジンがかかる音が聞こえてくる気がする。
ユーモラスで、あったかくて、切ない。この本を気に入ってくれる人が、わたしは好きだ。
福山 亜希
評価:A+
主人公のヒトミは、中野古道具商店でバイトをしている。そこはこぢんまりとした個人商店で、扱う商品は文字通りの古道具、決して高価な骨董品ではない。儲けがあるか分からないようなこの店で彼女が働き続ける理由は、中野古道具商店の居心地が良いからだ。主人の中野さんに、手伝いに来る中野さんの姉のマサヨさん、そしてバイト仲間のタケオと、彼らが醸し出す雰囲気は、身体に馴染んだ古道具と同じ様に、妙に落ち着くのだ。
ヒトミはタケオのことを本気で好きになって、しまいにはタケオのことばかり考えて、頭にきたりしてしまう。だけどタケオには冷たく距離を置かれてしまい、タケオを心の中で責めはじめたヒトミに、マサヨさんはこう言うのだ。「歳をとってから人を責めることはむずかしい。」と。「責めた相手が明日にでも死んでしまう可能性もあるから」と。これは名言だと私は思う。人は確かに死んでしまうものだから、人との接し方にこういう考えをもって、いつも真摯な気持ちで人と接することが必要だと、そう思った。
古道具という、歳をとった物ばかりを集めた店を舞台にしているからか、物語の中でさりげなく描かれる人の死が、ごく自然なものとして感じられる。物語は常に登場人物の身近にさりげなく描かれる。日常の素敵さがいっぱいにつまった一冊だった。