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WEB本の雑誌今月の新刊採点ランキング課題図書

ホステ−ジ

ホステ−ジ (上下)
【講談社文庫】
ロバ−ト・クレイ
定価 各700円(税込)
2005/5
ISBN-4062751178
ISBN-4062751186

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  北嶋 美由紀
  評価:A
   主人公タリーはSWAT交渉係時代に人質の少年を殺してしまったトラウマから立ち直れずにいた。お決まりコースで、妻娘とも別居、今は田舎町の警察署長だ。そこに人質立てこもり事件が起こる。タリーは経験を生かして犯人と交渉を始めざるを得ない立場となる。強盗殺人犯3人組相手に辛抱強い交渉の連続かと思いきや、立てこもった家は犯罪組織とつながりがあって、タリーに二重の難題が押し寄せる。
 前半は手に汗握るというほどのスリルではないが、テンポのよい展開でひきこまれてゆく。そして後半、テンポはアップし、ページもどんどんめくられて……読み手の関心が立てこもり事件からタリーの家族の事件へと移りかけると、また新たな問題が起こり事態は二転三転、最後まで飽きさせない。
 機敏で統率のとれた犯罪組織の動き、デブのわりには小回りのきく人質の少年、漫然と署長の席をあたためていたタリーが有能機敏さをとりもどしてゆく様子など、描写は明確で読みやすい。
 刻々と進む時間に即した登場人物たちの動きは映像的でよいのだが、表紙のブルース・ウィルスの顔はちょっと邪魔かも。

  久保田 泉
  評価:C
   評価Cは、ちょっと辛いかなとも思うが。主人公の田舎街の警察署長ジェフ・タリーが、元はロス市警の凄腕危機交渉担当係だったまではいいとして。主人公が心に傷を持っている、温かい家族を求め、待つ家族もいながら一人苦闘する。このパターンは正直もう勘弁してくれ〜という感じデス。そして凶悪強盗犯が立て籠もったのは、難攻不落の要塞だった。しかもその家には、危ない秘密もあって、そのせいでタリーは絶体絶命のピンチに追い込まれる。強盗犯人も、もちろん生育過程から思いっきり病んでいる。アメリカ人はそんなにみんな病んでるのか?少しはまともな人間はいないのかい。なにもここまでてんこ盛りにしなくても、優れたミステリーは書けると思う。勇気ある少年の活躍には多少救いがあるけど、普段の少年はなんだかな〜だし。派手な展開は、確かに映画にはうってつけ。最後にタリー、あなたはここまでの事件に巻き込まれないと家族の大切さに気付けないの?もっとしっかりしてちょうだい! 

  林 あゆ美
  評価:BB
   世の中にはいろいろな職業があるもので、自分ひとりの人生では計り知れない仕事をのぞけるのも本の世界ならでは。『ホステージ』での主役は、元ロス市警危機交渉係の仕事を6年間すごした。なんともストレスのたまりそうな仕事の響き。プロローグでかつての仕事現場が再現されその重みを想像してページを繰っていると、もうすっかりストーリーの展開に目が離せなくなり、上下巻、一気読みだった。
 どっちを向いても敵がいる状態なんて、胃がよじれそう。それなのに、大人ばかりでなく、少年までもが危ない橋をわたりだすので、もっと早く読め!自分!と叱咤激励して続きを知りたくて、終わりまできた時、あぁ全部わかったと安堵した。物語の展開をこれほど早く知りたいと思って読み進んだ本は久しぶり。いやな事や日常から目を離したい時にはおすすめの1冊! ページターナーの腕をじっくり堪能できます。

  山田 絵理
  評価:A
   海外ミステリーにしてはわかりやすく、はらはらさせられっぱなしだった。お昼休みにクライマックスを読んでいたら、犯罪者と彼らを追い詰める主人公の緊迫な駆け引きにのめりこみ、仕事が始まってからもしばし平常心に戻れなかった。
 主人公タリーは田舎町の警察署長。ロサンゼルス市警の危機交渉担当係を勤めた過去を持つ。何の因果か、凶悪事件とは無縁の穏やかな町で人質事件が起きてしまう。
 犯人と交渉するタリーの腕の見せ所が話の中心、という単純な話じゃない。立てこもった家にはとんでもない物が隠されているわ、悪玉の親分が出てくるわ、タリーは過去のトラウマに苦しめられるうえに、もう一つの切羽詰った問題を抱えてしまうわ、で大変。二・三の事件が同時並行していく。なのに全ての成否をタリーが握らざるを得ず、交渉はいやがうえに緊張感が増す。
 登場人物達にランダムに語らせるという文章スタイルは、事件を当事者のいろんな視点から眺めることができていい。映画を見たくなった。

  吉田 崇
  評価:C
   うーん、これ、面白いですか? と逆に聞きたい。僕は、どっちかっていうと嫌いです。
 映画を見ていないもんで、結構いい加減な事を書きますが、この本まるでノベライズの様な読み心地、すっかりエロじじいな雰囲気のブルース・ウィリスが目に浮かぶようです。
原作ではかなりオタッキーな少年トーマスは、表紙を見る限りでは理知的に変更されているようですが、それ以外は多分、まんまいけるはずです。それほどこの本、ハリウッドな香りがします。という事は、上手だしつまんなくはないけれど、どこかシステマティックなストーリーに鼻白むと、そんな感じです。大体、冒頭の失敗を気にネゴシエーターをやめたジェフ・タリーという設定、余りに陳腐じゃありませんか? ていうか、おそらくそんな精神構造の人は端からそんな職業で芽が出る訳がないと思うのですけど、いかがでしょ? 
 あれもこれも詰め込んで、それでも破綻なくまとまっているのはプロの技。けど、これなら読むより、観た方が良いと思うのは、僕だけでしょうか?

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