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勝手に目利き
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暗い国境線
暗い国境線
【講談社】
逢坂剛
定価2,310円(税込)
2005/12
ISBN-4062131781
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清水 裕美子
  評価:★★★
 イベリア・シリーズ第4弾!と謳われているがシリーズ初読です。そしてこれまでは日本人作家の書くカタカナ名の登場人物がイヤだったのです。しかし誰がどのジョンだかトマスだか分からない翻訳ものよりキャラが分かりやすいと発見。
 これはスリリングな諜報戦。「ゴルゴ13」「パタリロ」ファンならば、潜在意識に刷り込まれたMI6や5に心躍らぬはずがない。敵同士のホクト(北都)とヴァジニア(連合国側)。何をしているのか探り合わねばならない。この葛藤は愛を燃え上がらせている?火を噴く飛行機や国境警備隊、ルート選び。まがまがしいがドキドキしてしまう。死体から発見された“機密文書”の真偽が上陸作戦を攻防する。筋を書けないのだが、テーブルについての会談やカーテンの後ろに震えながら隠れる手に汗握り度はかなりのものです。
読後感:本棚からスナイパーものを出してきて再読

  島田 美里
  評価:★★★★

 途中下車できない乗り物に乗せられたみたいに、一気に読んだ。この吸引力はすごい。
 この物語の主な舞台は、第二次世界大戦中のマドリードと、ロンドン。イギリスは、ドイツ軍に伝わる連合軍の作戦情報を攪乱させるために、イギリス海兵隊少佐の航空機事故をでっちあげる。話のキーポイントは、少佐が携帯していた機密文書入りのブリーフケース。これが、最後まで読者の集中力を途切れさせることなく、興味を持たせ続けるのだ。
 そして、さらに引きつけられたのが北都とヴァジニアの恋。それぞれ日本とイギリスの情報員という立場上、頻繁には会えない。だけど、お互いを求める気持ちが、こっちが照れるくらいに伝わってくる。機密文書の件で、ゲシュタポの脅威にさらされる二人だが、そんな危機も、愛を確かめる枷に過ぎないのか?なんて思ってしまう。国家も愛も裏切れないジレンマでさえ、まるで火に注がれる油のようだ。板挟み状態の中、ふたりの情熱がどこまでメラメラ燃え上がるのか、この先がとても気になる。

  細野 淳
  評価:★★★

 第二次世界大戦中のイベリア半島での諜報員の暗躍を巡るシリーズの第四弾であるとのこと。もちろん、この作品だけでも十分読み応えはあるのだが、他の作品に目を通したことが無いのが、残念。
 諜報員という、歴史を影で動かす暗躍者たちの物語であるので、どこか個人個人の細々とした動きの中に、壮大な後ろ盾がそびえている雰囲気が味わえる。その、細々とした動きの中には個人個人の恋愛感情があり、嫉妬心があったりする。でも、そんな感情が、ひょっとしたら歴史の大きな動きに関与していたのかも知れない、そんなことを思うと、思わずワクワクとしてしまう。
オビの文句には、「愛と諜報の壮大なドラマ」とある。そう、この作品では、およそ似つかわしくない二つの要素が、巧みに交じり合っているのだ。そんな作品だから、描かれている世界観も、自ずと独特なものになる。
 本書自体でも、かなりの膨大な量にのぼる作品なのだけど、物語はこの先まだまだ続くらしい。一体いつになったら完結するのでしょうか?できれば、好きなコミックを第一巻から目を通していくように、最初の作品からじっくりと読み進めていきたいと思った。