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イラクサ
アリス・マンロー(著)
【新潮社】
定価2520円(税込)
ISBN-4105900536
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
清水 裕美子
評価:★★★★★
人生と記憶の物語。9つの短編の中で長い時間を生きた主人公が自分を形作る出来事の記憶を静かに語り出す。それぞれのエピソードはアリス・マンローの筆づかいで、部屋の中に座る人々の間に流れる妙な空気や、ベタベタと汗で体にはり付く洋服や、鮮やかな水仙の花の色といった感覚と結びついている。
姉が1人で留守番をする自宅で自殺したのではないか、そんな予感に駆られたローナは車の後部座席で『マドレーヌ』の絵本の文章を幼い娘と暗誦しながら恐怖で言葉が続かない。「ちょっと待って。口が渇いちゃったの。」ローナは祈ろうと思いつく。結婚生活を維持するために何かを差し出す「取引」を始めた日の記憶。(『ポスト・アンド・ビーム』)
一度の不倫を「すべて記憶」して「宝物のように集めて片づけ、とっておく」。結婚生活は30年以上持ちこたえた後、彼の死の新聞の切り抜きを見て思い出した記憶はそれまで封印されていた別れのシーンだった。(『記憶に残っていること』)彼らの記憶は私達の体にも沁み込んで人生のバランスを取ってくれそうだ。
読後感:丁寧に丁寧に味わいたい。
島田 美里
評価:★★★★★
登場人物とじっくり語り合った気分になって、放心状態になった。彼らが、著者の意志ではなく、それぞれの意志で動いているみたいに感じられるのだ。誰かの人生をそのまま文章にしているようで、とても重厚感がある。
人生の何気ないシーンの数々は、どれもはっきりした印象を読者に残していく。離婚経験のある女性が、幼い頃に好きだった男性と偶然再会し、ともに浴びた雨後の陽の光や、病に冒された中年女性が、見知らぬ少年と浮橋の上から一緒に眺めた景色が、胸の中のスクリーンいっぱいに広がる。
この短編集の主役は女性が中心で、これまで大きく道を踏み外したことがないような誠実な人が多い。誰にも言わずに自分の胸だけにしまっておきたい光景は、どんな人にもあるってことに気づかされた読者は、自分の人生の中にも何か輝きを見つけたくなる。もし、死ぬ前に何か思い出すとしたら、こんな風な場面がいいと思うような作品だった。墓場まで持っていきたいような思い出を持てたなら、本当に幸せだなあと思う。
佐久間 素子
評価:★★★★
「長篇小説を凝縮したかのような」と帯にあるが、激しく納得の短篇集。九編という数は実に良心的だけれど、けっこう閉塞感があるので、一気読みは胃もたれ必至。ハーレクイン的で、短篇集中もっとも軽い『恋占い』でさえ、そのこってりした心理描写で、読みごたえは十分なのだ。濃厚な人生のエッセンスを、ぜひとも時間をかけて堪能してもらいたい。
余命を告げられるほどの病気と闘っている女性が主人公の『浮橋』がいい。彼女は、体調の悪さと、うだるような暑さと、気に障る親切に責められている。医者に知らされた病気の進行状態に混乱し、自分の態度のせいで自己嫌悪に陥っている。そして、そんな一日の終わりに偶然訪れる、ささやかなドライブの時間。突然与えられる、あまりの静けさと美しさに、読者までもが息をのむ。何てことない日常の一こまでありながら、平凡で退屈な人生を輝かせる魔法のような一瞬が、こうして確かに切り取られているのだ。
延命 ゆり子
評価:★★★★★
つまらない日常を丹念に描き、ほんのちょっとした事件が起こることで、退屈な人生の面白い素晴らしい側面があることをチラリと見せてしまう、その手腕。うーん。非の打ち所がありません。もし正しい短編があるとしたら、これだ!というくらい。
病気によって死を宣告された女は周りに人から理解されないこともあったが、会ったばかりの少年と浮橋の上で思いがけず豊潤な時を過ごすことになる(『浮橋』)。昔好きだった人と30年ぶりに再開を果たした女は陳腐な関係に陥る前に男の絶望を知り、身の程をわきまえた愛の甘さを知る(『イラクサ』)。
様々な人生のほろ苦さ、甘さ、ウィットさをここまで多彩に見せてくれる小説と言うのもなかなかお目にかかれない。日常の中にこそ劇的でドラマティックな瞬間が隠されていることを、改めて感じさせてくれるこの作者の存在は貴重である。多くの人にとってのスペシャルな1冊になるだろうことをここに断言します!
新冨 麻衣子
評価:★★★★★
一編一編が濃い。あらすじだけみれば、さしてドラマチックではないのに、どうしてこんなにも深い深い余韻が残るんだろう。
ここに描かれるのは、そうめずらしくはないと思われる人生の中の「ひとコマ」だ。初恋の人との思いがけぬ再会、郷里とそれにまつわるものとの決別、少女たちのいたずらから始まった新たな人生への旅立ち、痴呆症の妻への夫の献身、思いもかけぬ人生たった一度の浮気……でもその「ひとコマ」のあまりの鮮やかさに圧倒される。
そしてここに収められている小説はどれもとても、普遍性がある。主人公たちの人生にこれまでもすれ違ってきたかもしれないし、これから自分が直面するかもしれない。何十年後かに読んでも同じように深く感銘を受けると思う。だからずっと手元に置いておきたい小説だと思った。
細野 淳
評価:★★★★
登場する人物たちの、過去と現在が上手く溶け合っていているような短編集。
人間模様なんて、ただのひと時、一瞬の出来事で大きく変わってしまうことがある。そんなつかの間の出来事と、その人自身が今まで歩んできた人生そのもの、それらの組み合わせ具合が、独特の世界観を作り出している。
表題作の「イラクサ」では、主人公が少女時代に出会った少年の記憶と、その人との偶然の再会、さらに老いて今に到るまで、とその三つの段階を描いたもの。とはいっても、順番にそれらが描かれているのではなくて、これらを上手く織り交ぜながら、独特の物語を生み出しているのだ。他の短編もそう。「記憶に残っていること」は、ただ一度の不倫の体験を、年老いても抱き続けている女性の気持ちを描く。そんな一度の体験と、今を生きる姿の対比が見事。過去の積み重ねの上に今がある、そんな事実を改めて認識させてくれる本だ。