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ブダペスト
シコ・ブアルキ(著)
【白水社】
定価2100円(税込)
ISBN-4560027404
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
清水 裕美子
評価:★★★
混沌とした味わい。これは大冒険だ。ブダペストの地でハンガリー語を習っている男が主人公として登場する。教えるのは恋人らしき女。そして場面が変わり、その男はブラジルでゴーストライターをしているらしい。妻はテレビでニュースを読むアナウンサー。男は「秘密厳守」で依頼主のあらゆる原稿を代わりに書く。手紙、論文、そして自叙伝。そしてある日、テープに吹き込んだ依頼主の話から独自にイメージを膨らませ小説に仕上げたところ、その本が大ベストセラーとなる。
一人称で軽やかに時間と場所と意識がどんどん変わり、一体どこに立っているのか混乱する。あとがきによれば、テーマは「対比」と、その対比が境界を越えて流れ漂い、自由に行き交って融合するつかみどころのなさ、なのだとか。しかし飛行機に乗り込みブダペストとリオを行ったり来たりする場面転換よりも、男の頭の中で新しい言葉・ハンガリー語が息づいていく様子に圧倒的な迫力がある。言葉の響きが頭の中に侵入し、他の言葉を全く使わないように用心しながらおそるおそる発音していく。この言語習得のイメージにクルクルと巻かれてしまいそうになる。もの凄い迫力だ。
読後感:まじまじと手に持った本を眺めてみる
島田 美里
評価:★★★
ペンネームを使ったことさえないので、ゴーストライターの気持ちはもっとわからない。自分の書いたものに、自分じゃない名前がくっついていたら嫌じゃないんだろうか?
主人公のコスタは、腕のいいゴーストライター。他人の自伝を書いてベストセラーになっても、本当の著者だと名乗り出ることはできない。人のクセを模倣する仕事を通して、自分にしか表現できない自分らしさって存在するのかという疑問を、延々と語られているような物語だった。どうも冷めた目で読んでしまい、自分も人のフリをせず、人にも自分のフリをさせなけりゃいいじゃないか!と、つい短絡的な感想を言いたくなった。
日陰の仕事に魅力は感じなかったが、男と女の関係には、引き寄せられるものがあった。コスタには、リオデジャネイロの妻の他に、ブダペストに恋人のクリスカがいるが、コスタと彼女の間にある言葉の壁が、とても官能的な雰囲気を演出していた。伝えたいのに、伝えきれないもどかしさが、熱いマグマみたいになって溜まっていく感じに、ちょっとドキドキしてしまう。
松本 かおり
評価:★★★
句点、読点が入り乱れ、会話もカギカッコに入っていない変則的な書き方! 慣れるまで少々読みにくい。改行さえも最小限に、著者の心赴くまま(実は巧妙に計算されて)、物語は続くのだ。おまけにクソ真面目に読めば読むほど、わけがわからなくなるのだから、始末が悪い。「えっ?」「おい、ちょっと待て」「ん?」。何度、悩んだことか。やっと最終章「その本を書き終えて」に至ってなお、疑問山積というクセモノだ。
主人公「僕」はハンガリー語習得に奮闘する。ほぼ完璧に使いこなせるようになった後、「僕」は久しぶりに自分の言語を耳にして「未知なる言語」のような錯覚、「何やら人生をリセットできたような」快感まで抱く。ある外国語を体得することは、自分のなかに別の人間を創造することでもあるのだろう。単なる意思疎通の道具にとどまらない、言語というものが持つ力、思考や感情に与える影響を考えさせられる。
佐久間 素子
評価:★★★
著者はブラジルのマルチ文化人。本国では権威ある文学賞を二つも受賞していると、鳴り物入りの紹介である。「越境−対比から融合へ−」という解説も、文学然として敷居が高い感じ。融合してるのかな? どちらかというと、行ったり来たりしたあげく、居場所がなくなってしまったダメ男の話と読めるんだけど。……誤読かしら。
ゴーストライターの主人公は、リオから逃げてブダペストへ行ったり、ブダペストに見捨てられてリオに戻ったりという生活を送っている。それぞれの地には、それぞれの女。肥大したプライドをかかえながらも、時には、あっさりとそれを手放してみたり。唯一、言語に対する執着が、彼の感受性のありかなのだ。まるでむきだしの状態で、知らない言語に対峙する彼の姿勢は、この小説におけるたった一つの誠実。それなのに、ラストは、そんな彼にこそ手ひどく効き目のある、大仕掛けの裏切りで、またもや煙に巻かれてしまう。変化球のメタ手法といえばそれまでなのだけれど、深い混沌にのみこまれるような読後感はちょっと格別かも。
延命 ゆり子
評価:★★
この陰鬱な雰囲気は何なんだ。暗い……、暗すぎる。あらゆるものが混乱していて訳がわからない。この男の混乱と、物語の構造上の混乱が相まって、頭が痛い。
リオとブタペストの二重生活を送るゴーストライターのコスタ。それぞれの国に愛すべき人と家族がいる。しかしコスタは愛する人とやっと心を通わせたかと思うと、すぐに自らそれを破壊してしまう。そして違う国へと逃亡し、豊かな関係を築くことができない。
なにしろ、読み進めるのがホネだ。長い一文の中で主語が変わったり国が変わったり。これはコスタ自身の話なのか、ゴーストライターとして書いている別の男の話なのか、それとも現実のシコ・ブアルキの話なのかわからなくなってくる。これこそ作者の意図したものかもしれないけど、はっきり言って話がまどろっこしい。
この男の闇が引き起こす行動はわからなくもないけれど、その闇はどこから来ているのか、なぜそうなったか、その意図するものがさっぱりわからず、不愉快な気分に。誰かこのハタ迷惑な男を止めてくれ。
言葉や文体が前衛的すぎて、私にはちょっと、わかりませんでした!(逆ギレ)。
新冨 麻衣子
評価:★★★★★
主人公のコスタは天性のゴーストライター。自分の作品をあっさりと手放すのに、でもそれが他人の名で出版されもてはやされると、強烈なまでの嫉妬にかられる。その苦しみから逃れるかのようにブタペストに向かい、そしてまたリオに舞い戻る。作品を渡す自己満足と、賞賛を求める虚栄心。彼の心は揺れ続け、ゆがみはじめる。
この小説全体が、主人公の心の揺れを表現してるのが凄い。リオとブタペスト、ゴーストライターと<著者>、ヴァンダ(コスタの妻)とクリスカ(ブタペストの恋人)、ポルトガル語とハンガリー語、そして現実と妄想。文体までも、その混沌とした世界を表現している。カギカッコは一切なし。すべて同列で書かれたこの物語は、どこが現実かどこが妄想なのか、知る手がかりもない。どこをとっても、緻密に計算された作品だと思う。
そしてそんな著者の計算通りにすっかり酔わされてたら、驚愕のラストが待ってます。パタパタとひっくり返されて、また酔いが回る……。もう一度読みたい作品です。
細野 淳
評価:★★★★
主人公である人物の故郷であるブラジルのリオと、ハンガリーの首都であるブダペスト。一見、ほとんどかかわりあうことも無いように見える二つの都市。ひょんなことから、主人公はこの二つの都市を行き来する生活を送ることとなる。そうしているうちに、二つの都市は、まるで表と裏、裏と表の世界のようになっていき、主人公を惑わす。「自分って一体何者?」読んでいるとそのような主人公の叫びが今にも聞こえてきそうだ。
そのような不思議さは物語の内容だけではない。文体もそうなのだ。「」(カギカッコ)で示されるような会話文は一切無いし、句読点の使い方もかなり独特。文章がどこで終わるのか、まるで分からない。そのような観点からいえば、決して読みやすい本ではないのだろう。でも、そんなことにはイチャモンをつけずに、じっくりと作者の世界に入っていってゆきたい。この本の摩訶不思議な感覚に上手く入り込むことができたのなら、心の底から楽しむことができる一冊。