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├2001年6月
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「夜の公園」
【中央公論新社】
川上弘美(著)
定価1470円(税込)
2006年4月
ISBN-4120037207
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
清水 裕美子
評価:★★★
結婚生活に倦んだら、その先に何があるのか。他の誰かを好きになったら、どうなってしまうのか。『不機嫌な果実』からちょうど10年。川上弘美的恋愛小説は、その瞬間にどこにいて何を思ったのかパノラマのように広く複数の男女をすくい取る。
自分の夫に恋焦がれている様子の親友・春名に対し、リリは心の中で誘惑してくれたらいいのにな、と思う。「もっと不真面目になって、お願い」と願ってみたりする。夫を好きではないと気づいてしまった自分に対して舌打ちしたいような感じを味わう。毎朝、夫のお弁当を詰めながら「箱庭(療法)みたい」とつぶやいたりする。
すぐに怒涛の不倫発覚展開へ続いていくのだが、4人の男女の名前を冠した章でそれぞれの感情が丁寧に描かれていく。小説なのだけれど、あまりにも彼らの生活と心情が細やかに描かれていて、どこからどこまでが浸透してきた感情なのか共感なのか判別が付かなくなる。
読後感:自分的「恋愛枠」が空いている方には危険
島田 美里
評価:★★★★
「古道具 中野商店」は、自分の本当の気持ちに気づいてハッピーになる小説だったが、この物語は、本心を自覚することによってブルーになる気がして怖かった。
夫を愛していないことに突然気がついた35歳のリリは、その冷めた気持ちをごまかさない。こんなとき世間の奥様方はどうするんだろう? 結婚と恋愛は別物とあきらめるか、きっとイケメンの芸能人に現実逃避するんだろうな。でも、彼女は仮想恋愛をするどころか、ずいぶん年下の青年と恋仲になる。おまけに女友達の春名はリリの夫に惹かれていたりして、相関図はぐちゃぐちゃ。ところが、こんなに不倫を描いているのに、ドロドロしていないから不思議だ。
江國香織が描く世界をふと思い出したが、川上弘美が描く女性は、たゆたいながらも、芯にキリリとした強さを抱えているような気がする。印象的だったのは、家庭の崩壊を覚悟したリリが、思い立ったように窓ガラスを拭き始める場面。「ひとり」とか「個」ということへの目覚めを感じた。スッとした佇まいの一輪挿しの花みたいに寂しげだけれど、凛とした美しさのある作品だ。
松本 かおり
評価:★★★
夫は申し分ない。でも、あまり好きではない。夫の何が? どこが? なぜ? 疑問の嵐。毎日顔を合わせていて、この状態は確かにきつそうだ。恋人同士でも関係が快適で熱烈に盛り上がっているときは、いちいち細かいことを考えたりしない。冷静に、客観的に相手を分析できる、ということからして、情熱を失いつつあるいい証拠だろう。
「破綻の前兆は、ある。ただそれを直視するかしないか、というだけのことだ」。直視して決断・選択・行動していくひとと、直視せず置き去りにされるひと。あるいは、直視はしても何もしないひと。だんだんと変質していく男女4人の関係を追うのは、時折ひどく苦しい。4人とも同じように悩み、言葉数が少なく、行間を読むよう強要されているようで疲れてしまう。なかでも主人公・リリはあまりにも真剣で自分に厳しい。カラーの違う極端な登場人物がひとりぐらいいれば、もっと面白く読めたと思う。
佐久間 素子
評価:★★★
幸夫とリリという夫婦、リリの友人と幸夫の恋、リリと若い男の恋。どろどろした設定だが、川上弘美の作品だ。どろどろしているようには決してみせかけない。波風がたっていても、まるで凪いでいるかのような筆致で、話はすすむ。それなのに、暗い穴をのぞいているようなきもちになってしまう。そして、不思議なことに、その暗さはすがすがしくもあったりするのだ。人は一人では生きられず、一人でしか生きられない。どちらも真理。二人でいるのに、ひとりぼっちだから、こんなにさみしい。閉じてしまっているのは自分のくせに、さみしいだなんて身勝手がすぎるよと、ぎゅっと歯をくいしばる。でも、「もう何も、わたし、さみしくないの」とリリはいうから、そんな非難の言葉はのみこまなくては。「どうしてあたしは今、ここにいるの」と問う女子高生みたいに、おぼつかない足どりで、それでも歩いていかなくては。
延命 ゆり子
評価:★★★★
今まで川上弘美といえば少し高尚で、崇高で、ブンガクそのものだった。主人公の女性たちも常人ではないような強さ、というかただものじゃなさを醸し出していたものだ。それが……今回の作品はどうだ? 登場人物たちはみな戸惑い、自信もなく、覚束ない足取りで人生を生きている。弱い……。弱すぎる心をさらけ出していて、いっそすがすがしいほどだ。なんだか下々へ降りてきた感じがする。川上弘美、降臨。
夫を愛していないことに当惑しているリリを取り巻く人々の連作短編集だ。リリの夫である幸夫、リリの恋人の暁、リリの親友でリリの夫と寝ている春名、春名の恋人で暁の兄である悟。この5人が、近づいたり離れたり、愛したり憎んだり。肉体関係が交差していて決して上品とは言えないが、川上弘美の手にかかると、こんなにも品の良い哀しさ。
結局は、リリと春名の愛の物語なのだろうと思う。妬んだり、残酷な思いをぶつけたり、女同士の愛情は複雑で入り組んでいる。けれど春名が最後に求めるのはリリの助けであるように、私たちはどうしても繋がらざるを得ない。決して結ばれることはない。だからこそ、この関係はこんなにも哀しく、せつない。
新冨 麻衣子
評価:★★★★★
主人公リリとその恋人である暁、リリの夫である幸夫とリリの親友である春名。二組のカップルが偶然に出会ったとき……。揺れ動く4人の心がゆったりと描かれる。
人と人の関係を名付けるのは、たやすいようで実は不可能なことなんじゃないかと思わされる。この物語の人物関係はまさに名付けやすいメロドラマのよう。リリと幸夫は「夫婦」で、リリと春名は「友達」で、リリと暁、幸夫と春名は「不倫の関係」で。それは本当のことなんだけど、でも、そうじゃないんじゃないか。川上弘美が深く丁寧に描けば描くほど、いろんなものがあやふやになる。そしてそれこそが、わたしたちが現実に抱えてる感覚と、驚くほど近いのだ。
川上弘美のゆったりとした独特の文体は、今回も冴えている。ひんやりとした夜の公園の空気、執拗に手を洗う暁の背中、幸夫が友人といった居酒屋のあたたかさ、春名が男たちと会うバーの喧噪。とても少ない言葉で、川上弘美はその場の空気までも的確に表現する。この人ほど、巧みに日本語を使う作家はそうはいないのではないかと思った。
細野 淳
評価:★★
自分にとっては苦手な部類に入ってしまう小説だった。題名が表すように、静謐な感じが漂う作品なのだけれども、どことなくついてゆけない部分ができてしまうのだ。
会話の使い方などは、上手くて、魅力をもっている。でも、それだけでは物足りないのも事実。ストーリーの展開が冗長で、いまいち盛り上がりに欠けてしまうのだ。恋愛を巡る、男女の人間模様……。でも何だか、傍から見たらどうだって良いような、内輪の仲間同士での揉め事を覗かされてしまうような気になってしまう。どうせならもっと盛り上がるような展開にして欲しいと、何となく思ってしまった。
もっとも、このような小説に、共感できる人も数多くいるのだろう。合う人と、合わない人とははっきりしているような気がするのだ。自分とは全く別の読み方をしている人の、意見を是非とも聞いてみたい。