年別
月別
勝手に目利き
単行本班
文庫本班
龍時03-04
龍時03-04
野沢尚 (著)
【文春文庫】
定価600円(税込)
2006年5月
ISBN-4167687038
商品を購入するボタン
 >> Amazon.co.jp
 >> 本やタウン

  久々湊 恵美
  評価:★★★★★

龍時という主人公のサッカー小説。すでにこのシリーズは高校生時代を描いた01−02、プロになったばかりの時代を描いた02−03の2冊が出されている。 のけぞるくらい面白い。サッカー自体ルールもよくわからず興味が全くなかったのですが、あまりにも面白くて驚いてしまいました。 サッカーの試合をいくつも取り上げているのだから、そこには様々な国様々な人物達がこれでもかってくらい出てくるのだけれど不思議と混乱はしない。 むしろ、誰が今どのポジションにいるのか。まるで映像を観る様な気持ちになってしまったのです。 この本を読んでから、今まで興味があまりなかったワールドカップが一気に面白くなって。 龍時がこれからどんな活躍をみせてくれるのか。もっともっと読みたいと思えてきます。 作者はすでに亡くなってしまっているのが。とても残念。本当に残念。

  松井 ゆかり
  評価:★★★

 必要以上に作家を意識して作品を読むのはもしかしたら正しい読み方ではないのかもしれないが、それでもこの小説が野沢尚の遺作であることが、しかも自ら選んでの死による結果だということがどうしても頭を離れなかった。
 ひとつひとつのプレーについて丹念過ぎるくらいに描写されているのに、少しも過剰さを感じさせないことに驚く。スピード感も損なわれてはいない。ほんとうにいいものを書きたかったんだなと作者の情熱が感じられる。これほど打ち込んで書かれているということが、ほとんど予備知識なく読んだ私にも強く伝わってくるほどなのに、野沢さんはこのシリーズを真に完成させることなく逝かれた。もし続編が生まれていたら、リュウジはこのワールドカップをどう戦ったのだろうか。

対ブラジル戦敗戦の夜に


  島村 真理
  評価:★★★

 リュウジが召集された日本の代表チームが、熱戦をくり広げるアテネ五輪は手に汗握る攻防。まさにタイミングよく課題図書となったこの本は、ドイツワールドカップ出場した日本代表チームのようで楽しめた。現実は仮想の世界のようにはいかずに苦い結果となってしまいましたけれど。
 しかし、なにより驚いたのは、サッカーが小説で楽しめるということ。目の前に状況が浮かび上がってくるだけでなく、ピッチで駆け回る選手目線というのも面白い。野沢尚氏の力量と熱意が熱く染み出ている。もちろん、Jリーグ引退直後の中西哲生氏の的確なアドバイスが作品の出来に大きく影響をおよぼしているとは思われる。けれども、野沢氏の作家として、脚本家として、まさに本量発揮されているといえるだろう。
 シリーズ三作目で初めてリュウジに出会えたことを喜びながら、野沢氏の死で今後の彼の活躍がもう手に届かないところにいってしまったことが残念でならない。W杯の興奮冷めぬ間に、少なくとも前の二冊は読んでみたいと思う。

  荒木 一人
  評価:★★★

 ワールド・カップ真っ最中、試合描写が絶妙な、今が旬のサッカー物語。もちろんフィクションなのだが、実在の人物も多数登場。急逝した著者の遺作になってしまった。龍時01-02から続く「龍時」シリーズ第三作目。
スペインでサッカー生活を送っていた志野リュウジ。リーグ最終戦を終え帰国の途へつく。突然、アテネ五輪本大会前の合宿へ追加召集された。ところが、呼び寄せた平義監督の目的は、硬直したチームへの「当て馬」。
俄サッカーファンの私もリュウジとピッチに立っているようにワクワクした。で、今回も遣ってしまいました。03-04を半分ほど読んだ所で、シリーズ第一作の「01-02」を買いに走ってしまった。(シリーズ物は、一作目から課題にして頂けると非常に嬉しいのだが(笑))
著者は、このシリーズをライフワークに位置づけ。リュウジが引退するときと、その後の人生まで書くつもりだった様だが、非常に残念である…合掌。
日本に本物のリュウジ登場する日も、そう遠く無いのだろう。

  水野 裕明
  評価:★★★★

 架空のサッカーチームやプレイヤーを描いたまったくのフィクションでもなく、山際淳司の「江夏の21球」の様なノンフィクションでもないので、面白いのだろうか?という先入観もあったが、ワールドカップドイツ大会を見るのと並行して読んでいると、日本チームの不甲斐なさもあって、夢中になって読んでしまった。ついつい日本チームにリュウジがいればと思ってしまったが、それでもやっぱり予選リーグ突破は無理だったろうな……(無念)。舞台は2004年のアテネオリンピック。サッカーは現実には1勝2敗で予選リーグも突破できなかったのだが、この作品では主役であるリュウジの活躍でブラジルには破れるものの、ギリシャ・韓国を破って銀メダルを獲得。対戦相手も出場選手も実際のオリンピックとは違うが、選手はすべて実名で、試合中選手が何を考え、どのようにゲームを組み立てプレーしているのかがわかりやすく描かれていて、サッカーというゲームが良く分かった。でもリアルに徹した分、これまでにない戦略と戦術そして独創的な選手で世界を制するという夢物語にはならなかったのが、ちょっと残念だ。