亀が階段から落ちたらどうなった? ~『カメが好き! かめ亀KAME図鑑』

カメが好き! かめ亀KAME図鑑 (P‐Vine BOOKs)
『カメが好き! かめ亀KAME図鑑 (P‐Vine BOOKs)』
みのじ
ブルース・インターアクションズ
1,890円(税込)
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 亀といえば、これまでどこか地味な存在だった。スポットライトが当たるのはウミガメばかりで、他に思い出すのは縁日で売られるミドリガメくらいなもの。亀が爬虫類であることを知っている人が果たしてどれくらいいるだろうか?

 だが、亀をこよなく愛し続ける人たちがいることもまた事実。本書を読めば、そんな彼らが知る亀の素顔が、世間一般のイメージとはまったくの別物であることがよく分かる。
 
 たとえば、都内在住のデザイナーの山下浩平さんは、亀と一緒に暮らし始めて10年。自宅で"同居"するクサガメやミツユビハコガメやモリイシガメを「クサ」「ミツ」「モリー」と名づけるほどの溺愛ぶりで、ついには自室の網戸を改造して亀専用の出入口まで作ってしまった。

 「みんなカメをどこか馬鹿にしてると思うんですよ、金魚と同じくらいにしか思ってない。ちゃんと可愛がればなつくんです。周囲をちゃんと観察しているし、自宅で仕事をしていると、よく視線を感じますもん」(山下さん)
 
 そんな"同居人"たちの素顔は、驚くほど人間らしい。たとえば女の子に目がないのが「ミツ」。女の子といってもメス亀のことだが、異性を前にすると興奮し、みるみると頭部が赤くなっていく。本書にその瞬間を押さえた写真が掲載されているが、確かに見ているこちらが恥ずかしくなるほど「ミツ」の顔は真っ赤(笑)。

 自宅の階段から転げ落ちた経験のある「モリー」に至っては、その翌日から後ろ足を引っ掛けながら慎重に階段を降りるようになったという。甲羅に守られているとはいえ、高所から落っこちれば亀だって痛い。ちゃんと学習もするのだ。

 著者はこうした人間と亀との暮らしを"亀ライフ"と呼ぶ。「亀はペットとして最適の生き物」と話す山下さんも、今や"亀ライフ"の宣教師。周囲の人間に亀の魅力を説いてはペットショップに連れて行き、すでに7~8人の知人にイシガメを飼わせた体験談を明かしている。
 
 現在ではペットショップに専用のエサが置いてあるし、亀は毎日散歩に行く必要もない。意外にも、決まった場所で排便する習性もあるのだという。"亀ライフ"がブームになる日も、そう遠くはないのかもしれない。

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